藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

"長期間視野"の時代に

池上さんのブログより。

一流大を出た、ということがそれだけでは意味を失い、
一流大も出た、という「現実の補強的な意味」になっているのは今の社会人は誰しも感じていることだと思う。

受験生が減った分は、過去の大学受験生(つまり団塊の世代の高齢者)を集めるなどの工夫ができなかったのか。他人事(ひとごと)とはいえ、一抹の寂しさを感じます。

代ゼミが考えるべきだったのは(今でも全然その気かもしれないけれど)、既存の父兄や受験生世代を「学歴ありき」の価値観に洗脳し続けることではなく、例えば「大学生の進路相談」とか「就職とか資格と社会人の今後」などの「大学以降の支援」を長い目で売り出すことだったのではないかと思う。(これからでも出来ると思うが)

そのためになら、団塊の世代の人は「リアルなこれまでの社会」を語るのには最高の講師になりえるだろうし、またそれ以上の世代の人も社会参加の機会が多く出てくるに違いない。

「義務教育〜大学、という二十年余の教育システムが、これからの日本ではどんな方向に行くべきか」という設問は、そのまま「どんな社会になるべきか」という問いに直結する。

そしてその問いに対する答えは、国としてはまだ出ていない。
まだまだキョロキョロしているのである。
若者は「そんな中での進路選択」なのである。
気の毒ながら。

けれど戦争でもしていない限り、社会は「常に新しい問題に直面」し、混沌としているのが常である。外敵がいれば方向性は見えやすいが、そうでない時代は選択肢が無限にある。
だからこそ、短期的に大学、とか就職、とかいう区切りで視野を持つのではなく、十年、二十年、三十年先を想像しながら"今"を進まねばならない。
混沌の時代というのは逆に「無限の可能性の時代」でもあると思う。
"当落"はいちいち付かないが、人生そのものがずーっと受験しているようなものなのである。
しんどいことだが。

代ゼミの教室閉鎖に思うこと〜人口減少社会の衝撃

2014/9/1 3:30
日本経済新聞 電子版

 大手予備校「代々木ゼミナール」が、全国に27ある校舎のうち20校を閉鎖する方針であることが、先月、明らかになりました。そんな時代が来たのかと、いささか感傷に浸ってしまいました。

■有名講師売り出し活躍

 私の高校時代、代々木駅前には、「代々木学院」という小さいながらも老舗の予備校がありました。その予備校より代々木駅に近い場所にあったのが、代々木ゼミナール。代々木学院に入学手続きに来たはずが、うっかり代ゼミに入ってしまったという人の話を聞いたものです。

 その後、代ゼミは大きく成長。代々木学院はいつしか消えていきました。ビジネスとは、こうやるものか。感心したのを覚えています。

 当時、東京での代ゼミのライバルは駿台予備学校。そこに、名古屋から河合塾が進出し、三大予備校は、競って全国進出を目指しました。よきライバルがいると、企業は成長する。経済学の教材になるような経営努力でした。

 当時、代ゼミの経営方針をNHKが特番で放送しました。各教室に監視カメラがあり、講師の授業風景を収録。教え方が上手なら翌年度も契約を更新するし、報酬もアップするが、評判が悪ければ、打ち切り。その厳しさに驚いたものです。これだけ厳しければ講師の先生たちも必死。教え方に磨きがかかります。公立学校の先生では歯が立ちません。

 予備校の有名講師を売り出す点でも、代ゼミは進んでいました。

 小田実吉川勇一など「べ平連」(ベトナムに平和を!市民連合)の有名な指導者が英語の講師としても活躍しました。

 私は通ったことはありませんでしたが、代ゼミの有名講師が書いた参考書や問題集にはお世話になりました。

 1980年代から90年代にかけて、校舎の全国展開をしていた頃、校舎の特徴について、「いずれ少子化の時代になったら、受験生の数も減るから、そのときには別の用途に使える構造にしているそうだ」という話を聞いたことがあります。都市伝説だったのかもしれませんが、遂(つい)にそんな時代が来たのですね。

■「過去の受験生」集める工夫できなかったか

 受験生の数が減ることは、前からわかっていたこと。ライバルの予備校は、浪人生より現役高校生対象に重点化したり、授業の様子をインターネット配信したり、数々の対応を取っていました。


 少子化が進めば、受験生の総数も減ります。総数が減れば、浪人までしなくても入学できるようになり、まず浪人生が減ることは明らか。現役高校生に絞れば、生徒減をある程度カバーできるでしょう。そんな経営戦略を持たなかったのでしょうか。

 代ゼミは私立文系を得意としてきましたが、理系志望が増えたことも誤算だったようです。「代ゼミは受験生が多い私立文系のコースを複数開き、100人以上を収容する大型教室で授業することが多い。一定の受講生が確保できなければコスト負担が重くのしかかり、経営を圧迫する」と、日本経済新聞(8月24日付)は解説しています。

 ベビーブーム時代には有効だった戦略が、時代が変わったことで負担になる。他の業界でもよく聞かれるような話です。

 受験生や講師には厳しい競争を強いてきた予備校が、他との競争で苦境に陥る。なんとも皮肉な事態です。

 受験生が減った分は、過去の大学受験生(つまり団塊の世代の高齢者)を集めるなどの工夫ができなかったのか。他人事(ひとごと)とはいえ、一抹の寂しさを感じます。(敬称略)

いけがみ・あきら ジャーナリスト。東京工業大学リベラルアーツセンター教授。1950年(昭25年)生まれ。73年にNHKに記者として入局。94年から11年間「週刊こどもニュース」担当。2005年に独立。主な著書に「池上彰のやさしい教養講座」「池上彰のやさしい経済学」(日本経済新聞出版社)。長野県出身。64歳。