藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

選択をさせて。

二十歳になると「国民年金納付のお知らせ」というのが送られてくる。
学生の身に、年間15万円とか驚く額の納付で「老後の人の年金」がこれで成り立っていることを肌感で知った。
その年金も今は25万円ほどになっているという。

さらに二十年ほど経ち、40歳になると「介護保険料の徴収」という項目が、知らずに給与明細に追加されてくる。
またしても「なんじゃ?」と思いつつ、これが高齢者の介護保険の四分の1程度の財源であり、いずれは自分も「給付される側になるかもしれない」代物だと気づく。
つまり「人生で最大の保険二つ」に我われは強制加入せねばならないのだ。

海外の、特にアメリカ系の来客に聞くと「国民皆保険を実現しているのは素晴らしい」と一様に仰るけれど、
現実には「介護保険は掛け捨て状態」にあり、8割の人が保険料の支払いだけをしているという。

さらに、足りない社会保障費を埋めるために、
今後は「介護保険の加入者を一気に二十歳に下げ」て保険料を集める、という大胆な案もあるようだけれど、「過剰診療、過剰薬剤」も含めて「どこまでを介護とするか」というそもそもの問題にそろそろ言及しなければならないと思う。

日本人の苦手な「自己選択」とか「自己責任」の話にもなるけれど、ともかく介護、延命治療ありきで、しかもそれを「本人が事前から希望していない」というあたりに最大の問題があると思う。

日本人は遺言とか相続の話が苦手だというけれど、後世のためにはそう言った「話題にしにくい話」を進んでリードする役割が年寄りにはあるのではないだろうか。

死生観にもつながるけれど、自分の最期は自分で考えたいものだ。

わがまちの介護保険料、どうなる? 制度の産婆役に聞く

聞き手・水戸部六美

2016年8月23日19時16分

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【動画】厚生労働省介護保険の制度作りを担った堤修三さんに聞く=瀬戸口翼撮影

厚労省老健局長の堤修三さん

 年金から天引きされる介護保険料は、よそと比べて高いのか、低いのか……。疑問に思ったことはありませんか? 朝日新聞デジタルでは、市町村の介護保険料の違いが一目でわかるページをオープンしました。「比べてみよう わがまちの介護保険料」です。介護が必要な人が増えるので、保険料は引き上げが続いています。介護保険は、今後どうなっていくのでしょうか?

 介護保険がスタートした2000年前後に、厚生労働省で実際の制度づくりを担った「産婆役」の堤修三さん(67)に話を聞きました。堤さんは、保険料などで賄う費用を抑制しようと、サービスの対象者の範囲を狭めようとする国の動きは「禁じ手」で、この路線が続けば「逃げ水介護保険」になってしまうと危惧しています。それは、どういう意味なのでしょうか?

 ――制度創設時、介護保険料は全国平均で2911円でしたが、現在は5514円です。高くなりすぎることを心配していなかったのですか?

 高齢化は当然、予想していましたが、要介護認定率がどうなるかは正確な予測ができませんでした。

 むしろ制度をつくる時に心配したのは、「ちゃんとサービスを用意できるか?」でした。保険料を負担してもらっているのに、使えるサービスがないという状況になるのを、おそれたのです。

 でも、なぜ保険料が上がることが問題なのでしょうか。介護が必要な人がサービスを受けるために上がっているのです。1―2割の自己負担でサービスを受けられている人たちは、保険料を払うのに納得していると思います。

 保険料のほか、公費や現役世代の負担も加えて制度が支えられていることを、しっかり説明して納得してもらう努力を、もっとすべきだと思います。

 ――しかし、実際にサービスを受けている人は65歳以上でも2割弱しかいません。納得してもらうのは難しいのでは?

 確かに、そこは介護保険の弱点です。

 医療なら、若い人でも風邪をひくとか年に1回くらいは病院にいくので保険の恩恵が実感しやすい。しかし、介護保険で要介護認定を受けている人は2割程度で、8割以上の人は「掛け捨て」になっています。私はいま67歳ですが、65〜69歳の要介護認定率にいたっては3%台(厚生労働省推計)です。介護を受けている人はほとんどいません。

 それでも納得して保険料を払うとすれば、「いま要介護の人たちが受けているサービスを将来自分が要介護になったときにも受けられる」と思うからです。そこには、長期的な約束が内包されているんです。

■国の動きは「禁じ手」

 ――もっと要介護度が高い人だけに絞って、介護サービスを重点化すべきだという意見もありますし、国もその方向で制度を見直しているように見えます。

 それは「禁じ手」です。「掛け捨て」の人を増やしてしまうからです。

 前回の改正で、たとえば特別養護老人ホームに入れる人が原則要介護3以上に限定されました。将来受けられると思っていたサービスが、いつのまにか受けられなくなる。そうなったら国家的詐欺と言われても仕方がない。

 私は介護保険のサービスが受けられる人の範囲を縮め、その結果、掛け捨ての人が増えることを「逃げ水介護保険」と称しています。年金における支給開始年齢の引き上げと同じことをこっそりとやっているのです。こういうことを繰りかえしていては、保険料を払いたくなくなってしまうでしょう。

 ――いま、介護保険のサービス給付の一部(介護予防サービスのうち、訪問介護とデイサービス)を、市町村の事業に移す「介護予防・日常生活支援総合事業」が全国で始まっています。これも保険料と関係しているのですか?

 本音は、国の負担や住民の保険料が上がるので介護費用を減らしたい、ということでしょう。

 給付なら、保険料を払った対価としてサービスを受ける権利が保障されます。しかし、事業となると予算がなくなればサービスは打ち切りになるかもしれません。権利としては保障されないのです。せめて外すサービスはこれだと国が一方的に決めるのではなく、市町村ごとに住民が参加して決めるべきでしょう。

■住民に負担納得してもらう努力を

 ――努力の方向性に、ズレがあるということでしょうか?

 まずはサービスの対象範囲の安易な縮小に走るのではなく、保険を運営している市町村が、住民に保険料の負担を納得してもらう努力をもっとすべきです。

 最近は制度の周辺部ばかり複雑になっていますが、本来は市町村の介護保険における住民参加が機能しているか、という制度の中核的な部分にこそ、国は関心を持つべきです。

 自治体が3年に一度、介護保険の計画を立てるときの会議では、住民が参加していても、役所の案を通すだけというケースも多いと聞きます。これでは、いつまで経っても住民は「保険料を取られる」という意識から抜け出せません。「取られるのではなく、保険料を払った対価として、サービスを受けるんだ」という感覚をつくり出す必要があります。

 ――でも、保険料を上げ続けるのは難しいでしょう。

 保険料をどこまで上げるのかは、最終的には住民が決めるべきです。具体的な提案をしましょう。自己負担を1割、2割、3割のどれにするか、住民代表に話し合って決めてもらうのです。

 自己負担が低ければ保険料は高く、自己負担が高ければ保険料は安くなります。1割負担なら保険料は8千円、2割負担なら7千円、がんばって3割負担にすると5千円など、「松竹梅」のどれを選ぶか、住民にとっては究極の大変に辛い選択です。

■2つの立場で議論すれば

 ――誰がその会議に参加して、どう議論するのでしょうか?

 2つの立場の住民代表に参加してもらいます。

 65歳以上で1号保険料を払っている人のうち、すでに介護サービスを受けている人、まだサービスを受けていない人で2グループにわけます。実際に介護サービスを使っているかどうか、親など家族が介護を受けているかどうか、介護保険を身近に感じている度合いによって意見が分かれるでしょう。しかし、意見を戦わせつつも、互いの立場を思いやる気持ちで議論して決める。この過程を経ることで、保険料に納得感が生まれるのだと思います。

 ――所得の低い人の保険料は、国がお金を出して下げるべきでは?

 介護保険の枠内に国がお金をだすのは問題です。もし、低所得者の対策をするなら、介護保険の外部で「保険料手当」を出すような形にして、はっきりと分けるべきです。

 ――なぜですか?

 介護保険の財源構成は歴史的経緯を踏まえた微妙なバランスの上に成り立っています。介護保険の枠内に追加的な国費投入をすると、そのバランスが崩れ、財務省の給付費抑制圧力はさらに強まることになるでしょう。介護給付費の25%の国庫負担は義務ですから、これを減らすために、給付費全体に枠をはめて絞ろうとするのです。

 一方で、政治家に言われると、一時的に増やして予算のPRに使ったりしますが、それは麻薬や覚醒剤と同じで、いつか必ず切れます。必ず給付に回る保険料でなく、財務省がコントロールする税金に頼ってしまうと、介護保険ガリガリにやせ、みすぼらしくなってしまうでしょう。

■負担増、受け入れる必要

 ――今後、介護保険はどうなっていくと思いますか?

 サービス縮小をしないためには、負担増は受け入れる必要があると思います。2号被保険者の対象を40歳からではなく20歳からにすることも一つの案です。また、「掛け捨て」という介護保険の弱点を考慮すると、医療保険介護保険をセットにして、保険料を一本化することも将来的には考える必要があると思います。

 〈堤修三 つつみ・しゅうぞう〉 1948年、長崎市生まれ。71年、厚生省に入る。98年、省内の介護保険制度実施推進本部事務局長に就任。厚生労働省老健局長などを歴任。退職後、大阪大学教授を経て、現在は長崎県立大学特任教授。著書に「介護保険の意味論」(中央法規)など。(聞き手・水戸部六美)