藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

複雑なほど面白い。

あるプロが公開レッスンの場で「ピアノは特に他楽器に比べても精密機器だから」と演奏の難しさを表現されていた。

常々感じていた。
そういえば。

カラオケで歌詞とメロディーをなぞり、そこには自分なりの情感も込め、さらにはちょっとしたアドリブだって加える余裕がある。

それが「モノ(楽器)」を手にした途端に難易度が跳ね上がる。
学校で習う縦笛でも習熟するのは簡単ではない。
サックスとかトランペットとか。
ヴァイオリンとかヴィオラとかチェロとかコントラバスとか。
打楽器。
指揮。
ピアノ。

一体人は「自ら歌う歌」以外の何を表現したくて「楽器」という魔物を生み出したのか。

多分、「複雑さ」だ。

ソロでの歌もいいけれど、多唱なら表現はずっと多彩になる。
まして打音や弦楽器や管楽器まで入れば、それは表現の幅は何万倍にも広がるだろう。

人ってそういう「面倒だけれども奥深いもの」を本能的に追及する性質があるようだ。
たった五分のピアノ曲の小品に、演奏解釈は無限にある。
そして演奏家の表現も無限に近い。

いわゆる「めんどくさ」そうな世界だけれど、一度はそういう世界も覗いておいてはどうだろうか。
(つづく)