藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

本物の価値。

バイオリン。
ピアノや他の楽器に比し、「高級器」の突出が著しい。
ストラディバリウス、アマティ、ガルネリ。
イタリアで造られた「究極の楽器」の代名詞でもある。
これらを手にするために、家財を投げ売ったり、練習に血道をあげたりといった逸話は後を絶たない。

自分はバイオリンは初心者だが、それにしても「楽器の持つ個体差」についてバイオリンほど周囲の注目が集まる楽器も珍しいと思う。
そんな伝説の名器たちに、フランスのパリ大が発表をしたという。

楽器がよく見えないよう眼鏡をかけたうえで、18世紀に作られたストラディバリウスや、現代の最高級バイオリンなど計6丁を演奏してもらった。どれが一番いい音か尋ねたところ、安い現代のバイオリンの方が評価が高く、ストラディバリウスなどはむしろ評価が低かった。

これは、演奏者の問題が大きかったのではないだろうか? という疑問が拭えない。
多分、バイオリン初心者の自分がストラディバリウスを弾く機会を得たとて、おそらく「ギーギー」としか鳴らないのではないかと想像する。

あれほどの楽器であれば、相応のプロの中の「一握りの演奏家」を選ぶのではないだろうか。
知り合いのバイオリニストは、自分の持つ高級器をパートナーとして扱い、その様子は決して「バイオリンという道具」というレベルではない。
まるで夫婦のようである。

バイオリンとは、名器であればあるほど、その使い手を限定し、乗りこなすのには容易ならざる楽器なのではないかと推察する。
米チームの21人のバイオリニストがヘタだった、とは思わないが、品質試験のようにバイオリンを並べ、順番に弾き比べる、という方法と、"「その号と心中するも厭わず」と思っている執念の演奏家"との奏でる音の間には全く違う差があるのではないだろうか。

芸術というのはそのくらい、恐ろしいほどの細やかさや繊細さの組み上げるものではないかと思っている。
まだ真実への探求は続くのではないだろうか。

バイオリン名器の音色、現代モノと大差なし?
【ワシントン=山田哲朗】何億円もすることで有名なバイオリンの名器「ストラディバリウス」や「ガルネリ」は、現代のバイオリンと大差ないとする意外な実験結果を仏パリ大学の研究者らが3日、米科学アカデミー紀要で発表した。

 研究チームは、2010年、米インディアナ州で開かれた国際コンテストに集まった21人のバイオリニストに協力してもらい、楽器がよく見えないよう眼鏡をかけたうえで、18世紀に作られたストラディバリウスや、現代の最高級バイオリンなど計6丁を演奏してもらった。どれが一番いい音か尋ねたところ、安い現代のバイオリンの方が評価が高く、ストラディバリウスなどはむしろ評価が低かった。

 研究チームは「今後は、演奏者が楽器をどう評価しているかの研究に集中した方が得策」と、名器の歴史や値段が影響している可能性を指摘している。

(2012年1月4日10時56分 読売新聞)