藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

真似できないことはあるか。

料理人の友人は「AIにも料理だけは真似できないよ」という。
確かに「本当に美味しいと感じる料理」はそうそうあるものではない。
50点以下の味
50-80点の味
80点以上の味
くらいに分かれていると思う。
昨今はファストフード店のクオリティもかなり上がっているから「50-80点の料理」のバンドでは熾烈な競争になるのではないかと思う。
50点以下のところは淘汰されるだろう。

問題はオーバー80点のクラスだと思う。
おそらく100点を越すような料理人の店というのは、これからも自動化されるのは難しいという気がする。
(それにしたって今の一万倍を超えるようなセンサーが出て来れば変わってくるだろう)

それよりも80点の料理を1点、2点、3点と少しづつでも加点していくために、膨大なデーターを分析して研究すれば、「相当なレベル」までは料理も自動化できると思っている。
ほとんどの仕事が何らかの形で「自動化」の恩恵(あるいは脅威)に浴するだろうここ10年。

本当に自分がしたいこと、を峻別する絶好の機会になるのではないだろうか。

焼き鳥店「全品280円均一」でももうかるワケ

フードコンサルタント 白根智彦

 全国各地の飲み屋街では、「食べ物・飲み物が280円均一」「飲み放題2時間1500円」といった低価格を売りにする飲食店が増え、財布のヒモが固い消費者の獲得競争が激化している。中には「こんなに安くて赤字にならないの?」と客が心配になるほどの激安店もある。フードコンサルタントの白根智彦氏が、激安価格でも利益を出す飲食業界のカラクリについて解説する。

「原価率30%」が基本ライン

  • 飲食業界では低価格競争が激化している(写真はイメージ)

 私はこれまで、レストランや居酒屋、回転すし店など、30業態を超える飲食店のメニュー開発などを手掛け、店舗経営の“裏側”を見てきました。近年は、すべてのメニューが「280円均一」という焼き鳥チェーン「鳥貴族」や、1本100円から串カツを楽しめる居酒屋チェーン「串カツ田中」などの激安店が人気を集め、店舗数を拡大し続けています。これらの店はなぜ、驚くほどの低価格にもかかわらず、利益を上げられるのか。商品の「原価率」に焦点を当てて、そのカラクリを解き明かしたいと思います。

 飲食店が利益を確保できるかどうかを測る指標に「FLRコスト比率」があります。「F」は「Food(フード)」で商品の原材料費、すなわち原価を指します。「L」は「Labor(レイバー)」で人件費、「R」は「Rent(レント)」で「家賃」を指しています。店の売上高に対して、原価と人件費、家賃の合計がどれくらいの割合なのかを示すのが「FLRコスト比率」です。

 飲食業界では、どんな業態であろうと、FLRを70%以内に収めることを目指すのが一般的です。FLRが70%であれば、残りの30%から水道・光熱費などを差し引いた額が利益になります。

 FLRの内訳は「原価30%、人件費30%、家賃10%」が基本ラインです。会社の方針などによって多少の違いはあるにせよ、飲食店の経営者は、食べ物・飲み物の原価率が25〜30%になるよう、知恵を絞ることになります。

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2017年05月19日 16時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
ページ: 2
フードコンサルタント 白根智彦

原価率の高い商品、低い商品バランスよく

 上の図は、都内のあるダイニングバーの主な商品の原価率を表したものです。ソーセージやワインのように原価率が40%を超える商品もあれば、ポテトフライや焼酎など10%台のものもあります。これらをバランス良く販売し、商品全体の原価率を30%以内に収めることが求められるのです。

 低価格が売りの鳥貴族も「原価率30%」の原則は変わらないと思います。ただ、国産鶏肉を使用しているため、30%を上回る商品も少なくないはずです。同社も、メニューの中にポテトフライや漬物といった原価率の低い商品も含めて販売し、適正な原価率を維持するよう努めていると見られます。

鳥貴族のように、原価率の異なる商品を均一価格で提供することは、経営的に決して容易ではありません。例えば、同店では、ビール系飲料(第3のビール)の大ジョッキも均一価格の280円で提供しています。この価格なら本来は原価率が40%を超えるはずですが、それでも280円を維持できるのは、大手ビールメーカー1社と独占的な販売契約を締結しているからでしょう。

近年は、鳥貴族に限らず、大手外食チェーンがビールメーカーや飲料メーカーと独占契約を結ぶケースが増えています。特定のメーカーの商品を独占的に取り扱う代わりに、メーカー側がその商品の納入価格を引き下げたり、販売奨励金などの名目でお金を還元したりします。そのお陰もあって外食チェーンは、安い値段でドリンクを顧客に提供できるというわけです。

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2017年05月19日 16時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
ページ: 3
フードコンサルタント 白根智彦

店舗で串打ち、コスト下げる

  • 鳥貴族はボリュームのある焼き鳥を「一皿280円」で食べられるのが人気だ

 鳥貴族の低価格の秘訣(ひけつ)は他にもあります。居酒屋チェーンの多くは、焼き鳥用の鶏肉は工場で「串打ち(身に串が通っている状態)」されたものを仕入れます。これに対し、鳥貴族では、各店舗で1本1本、焼く前に串打ちしています。これは鳥貴族の焼き鳥が新鮮でおいしい理由とも評されていますが、実は、焼き鳥の原価率を下げるポイントにもなっています。

 串打ちされた状態で仕入れた鶏肉には、工場で串打ち作業をした従業員のレイバーコスト(加工賃)が仕入れ価格に反映されています。一方、鳥貴族が仕入れる鶏肉には、こうしたコストを自社内で吸収するので、結果としてより安く仕入れることができ、焼き鳥を低価格で提供できるのです。

 また、鳥貴族は、店舗の立地にも特徴があります。ここ数年、出店ラッシュを展開していますが、その店の多くは、駅から少し離れたいわゆる「二等立地」や、商業ビルの地下や空中階(2階以上)に店を構えています。なぜなら、駅前の好立地や、ビルの路面(1階)に入居するよりも、家賃を安く抑えられるからです。店が評判になり知名度が上がれば、店舗が多少不便な所にあっても、顧客は足を運んでくれます。家賃が安い分、原価率を上げたり、利益を増やしたりすることが可能になるというわけです。

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2017年05月19日 16時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
ページ: 4
フードコンサルタント 白根智彦

店舗と顧客が「ウィンウィン」になる飲み放題・食べ放題

 鳥貴族では、8人以上の予約で2時間以内なら一人2800円(税別)で飲み放題・食べ放題となるプランも人気です。外食チェーンにとって「飲み放題」「食べ放題」は集客の重要な戦略と言え、各社がサービスの充実を競っています。また最近は、作り置きではなく、好きな料理を好きなだけ注文して食べられる「オーダーバイキング」と呼ばれる食べ放題サービスに力を入れる店も増えています。

 前掲の表のように、食べ物・飲み物の原価率はその種類によって様々ですが、飲み物の場合は、総じてビールやワインのようにそのまま飲むお酒は30〜40%と高く、ウーロンハイやレモンサワーなど、アルコールを水や炭酸水などで割って飲む“割りもの”は10%台と低くなります。

  • 一般にビールやワインなどそのまま飲むドリンクは原価率が高く、レモンサワーなどの“割りもの”は原価率が低い(写真はイメージ)

 従って、団体客がビールやワインをたくさん飲むケースなどでは、店の利益は少なくなり、飲み物代だけを見れば赤字になることもあります。反対に、割りものばかり飲んでくれるグループであれば、店の経営者は「ラッキー」と思うかも知れません。

 実際には、ビールやワインだけを大量に飲み続ける顧客はそれほどいませんし、「ビール離れ」が指摘されている若い顧客の間では今、ウイスキーを炭酸水で割って飲むハイボールが人気です。

 例えば、2時間飲み放題の料金が1500円(食べ物は別)、原価率3割(450円)と店舗側が予算設定したとしましょう。仮にハイボールやウーロンハイ、レモンサワーの売価がいずれも1杯400円で原価率17%の場合、原価は68円となります。

 この場合、顧客の飲んだ量が一人当たり6杯(68円×6=原価408円)までなら店舗側に分があり、7杯(同476円)を超えると予算割れをすることになります。しかし、前述したように実際には7杯以上飲む顧客はあまりいません。一方、顧客にしてみれば、売価が400円なので、4杯飲めば1500円で1600円分を飲んだことになり、「得をした」という気持ちになります。

 ここで大切なのは、店舗と顧客が「ウィンウィン(双方に利益をもたらすこと)」になることです。「原価」で損得を考える店舗側と、「売価」で損得を考える顧客の双方が「得をする」ことができる。これが、飲み放題・食べ放題のカラクリなのです。

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プロフィル
白根 智彦(しらね・ともひこ)
 株式会社イエローズ・株式会社シェアハピネス代表取締役。1965年、埼玉県生まれ。学習院大卒。ベッカーズ株式会社(現・ジェイアール東日本フードビジネス)で22年間勤務した後、2011年2月に独立開業。フードコンサルタントとして店舗プロデュースなどを手掛ける。東京・京橋のレストラン「ぶーみんVinum 東京スクエアガーデン店」など3店舗を運営し、ハンバーガー研究家としても知られる。
2017年05月19日 16時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun