藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

まだできることについて。

TEDトークより。

生きているということがどれだけありがたいか。それだけで感謝です。毎日、朝起きるたびに、人生で二度目のチャンスを与えられたのだという喜びを実感しています。

さて生きている自分は何をすべきだろうか。
自ら一度、死を選んだからの迫真が迫る。
日本の文学作品でも戯曲や小説には死をテーマにしたものは多い。
自分の死や、死後の世界のことを語るのは、人の究極のテーマなのかもしれない。

そうした「最期」を考える人の特徴は不安にある、とも言われている。

つまり、今成功していたり、とても不安定だったり。
「今が極貧で生きていけないから」といっても人は不安にならないらしい。

人というのは複雑なものだと思う。
一度極端を考えたから、却って見えるものもある。
『それを言っちゃあおしまいよ。』というフーテンの寅さんが、あれほどの共感を持って観られているのはそんな「人生の機微」が作品に織り込まれているからに違いない。
自分の一番辛い経験こそ、人に聞いてもらう価値がある、ということだろうか。
まあ話せばいろいろなことが解決する、というのも経験の知恵だと思う。

「自殺未遂者の沈黙を破る」 世界が涙したTEDトーク|出世ナビ|NIKKEI STYLE

 世界でもトップクラスの教授陣を誇るビジネススクールの米スタンフォード大学経営大学院。この連載では、その教授たちが今何を考え、どんな教育を実践しているのか、インタビューシリーズでお届けする。今回からJ・D・シュラム氏が登場する。

 2011年、自らの自殺未遂体験を語ったTEDトーク「自殺未遂者の沈黙を破る」で世界的に有名になったシュラム氏。2012年には、NHK Eテレ「スーパープレゼンテーション」でも放送され、日本でも大きな話題となった。スタンフォード大学の教員という名誉ある地位にいながら、なぜ自らの自殺未遂体験を公表しようと思ったのか。(聞き手は作家・コンサルタント佐藤智恵氏)

スタンフォード大学経営大学院 J・D・シュラム氏 Courtesy of Stanford GSB

自殺未遂体験語り、大きな反響

:シュラム先生が自らの自殺未遂体験を語ったTEDトーク「自殺未遂者の沈黙を破る」は、世界的に大反響を巻き起こしました。4分という短い時間に込められた深いメッセージに励まされ、自殺を思いとどまった人は多いと思います。日本では、2012年5月、NHKEテレの「スーパープレゼンテーション」という番組で放送されたのをご存知でしたか? おそらく100万人以上の視聴者が見たと思いますよ。

:それは知りませんでした!

:NHKEテレの番組で先生のことを初めて知り、ずっとお目にかかりたいと思っていました。TEDで自らの自殺未遂体験を語る、というのはどれほど勇気のいることだろうか、と思ったからです。現在、スタンフォードの人気講師として活躍されているシュラム先生を見て、励まされている人は多いと思います。

:自殺が未遂に終わったことに、今は感謝の気持ちでいっぱいです。生きているということがどれだけありがたいか。それだけで感謝です。毎日、朝起きるたびに、人生で二度目のチャンスを与えられたのだという喜びを実感しています。

:なぜあえてつらい過去を公表したのですか。

:私は今、「こんな素晴らしい人生を再び与えてもらったのだから、世の中に何かお返しがしたい」「人の役に立つことをしたい」という気持ちで日々生きています。私が、スタンフォードの教員という仕事をして、プライベートでは養子を育てているのも、次の世代を担う若者の役に立ちたいという一心からなのです。TEDでスピーチをしたのも、自殺する人が一人でも減ってほしいという思いからでした。

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佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHKボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。

:自殺未遂をした、という事実を公にしたのは、TEDでのスピーチが初めてでしたか。

:そうです。私は自分が2003年に自殺未遂をしたことを、本当に限られた人にしか打ち明けていませんでした。あえて公にしたくなかったのです。

 ところが、2010年、転機が訪れます。TED主催の講演会で、ある女性のスピーチを聴いたことです。その講演会には一般の人が参加できる「3分間スピーチ」というコーナーがありました。そこで彼女は、脳腫瘍とともに生きる日々を赤裸々に語り、講演の最後をこのような問いかけでしめくくりました。

 「3年後、おそらく私はこの世にいません。生きている皆さんは3年後、どこで何をしているでしょうか」

 たった3分間でしたが、本当に感動的なスピーチでした。特に最後の質問が私の脳裏から離れませんでした。「生きている自分は何をすべきだろうか」と。自分がやるべきことは、自殺しようと思っている人たちの助けとなることではないか。生きていることがどれだけ素晴らしいか伝えることではないか。そう考えて、「私も自らの経験を語ろう」と1年後のTEDをめざすことにしました。

 2011年、「3分間スピーチ」に応募し、200〜300人ぐらいの人の前で講演しました。それが、「自殺未遂者の沈黙を破る」です。

ウェブでの公開にはためらう気持ちも

:最初の聴衆は300人だけだったのですね。それが現在は150万回以上も再生されていて、世界中の人が、シュラム先生が自殺未遂をしたことを知っている。ものすごい覚悟を持って、講演されたのですね。

:TEDから、講演をTEDライブラリーに加えて公式ウェブサイトで公開したい、と相談があったとき、私はとても悩みました。300人ぐらいが知っている分にはいいけれど、これを公開してしまえば、世の中の人々から、「あの人は自殺未遂をした人だ」という目で見られることになる。そんな覚悟が自分にはあるだろうかと。

 それで最初は「少し考えさせてください」と言って了承しなかったのです。でも3カ月ほど悩んだ末、ビデオを公開することに決めました。きっかけは、私の親しい友人が自殺で亡くなってしまうという悲しい出来事でした。ビデオを公開すれば、自殺を思いとどまってくれる人がいるかもしれない、と強く思ったのです。

:2011年6月11日にTEDの公式ウェブサイトに公開しました。

:この日を選んだのは2つ理由があります、1つは、6月11日は私が自殺を図った日で、私が第二の人生を与えられてから8年目を迎えた記念日でもあったこと。もう1つは、夏休み中だったこと。さすがの私も公開直後に、学生を目の前にして授業をする勇気はなかったのです。

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:2011年といえば、すでにシュラム先生はスタンフォードで人気講師になっていたころですよね。教育者としての評判に傷がつかないだろうか、学生や教員から色眼鏡で見られないだろうか、と不安に思いませんでしたか。

:ものすごく怖かったです。不安で仕方がありませんでした「どんな顔をして学生にコミュニケーションを教えればいいのだろう」と。ちょうどそのころ、スタンフォード大学との5年間の契約更新も控えていましたから、「ビデオを見た上司が、契約を更新しないと言ってきたらどうしよう」と悶々と悩みました。さらに「お世話になったニューヨーク大学のブランドにも傷をつけてしまうのではないか」とも考えました。私が自殺未遂をしたのは、ニューヨーク大で働いていたときだったからです。

 こうした不安に押しつぶされそうになりながらも、私はビデオを公開することを決めました。私の講演ビデオを見て、一人でも自殺を思いとどまってくれたら、それでいいのです。どれだけ色眼鏡で見られようが、自分のキャリアに影響があろうが、たった一人でも救えれば、それだけで十分価値があることだ、と思いました。

書き込みチェックの特別チームも用意

:TEDトークの公開後、どのような反響がありましたか。

:それが驚くほど好意的だったのです。

 TED側はとても心配して、私の講演ページに書き込まれるコメントをチェックする特別チームをつくってくれました。もし「自殺しようと思う」とか、「もう死にたい、助けてください」といったコメントが書き込まれたら、すぐに返事をして自殺を思いとどまるよう説得するためです。結果的にその心配は杞憂に終わり、私が知る限り、そういう危機的なコメントが書き込まれたことはありませんでした。

 しかし残念なニュースもありました。私の講演ビデオを見たのに、自殺してしまった若者の話です。彼は亡くなる1カ月前、フェイスブックの自分のページに私のビデオをアップしていました。それが「助けてください」というサインだったのです。それなのに誰も助けてあげられなかった……。これは私にとってあまりにも悲しくてつらい出来事でした。私の講演ビデオを見ても、自殺をしてしまう人がいる。こういう事実を知るたびに、自分の無力さを感じ、ただただ悲しくなります。それでも、私は、できるかぎり多くの人に、「自殺などするな」と呼びかけたい。だからこそ、私は今、自殺予防にとりくむ団体を支援したり、全米で講演を行ったりしているのです。

J・D・シュラム J.D.Schramm
スタンフォード大学経営大学院講師。教育学博士。専門は組織行動学(コミュニケーション)。2007年より同校のコミュニケーション部門で中心的な役割を果たし、数多くのコミュニケーション科目を創設。現在、MBAプログラムで選択科目「戦略的コミュニケーション」「レピュテーション・マネジメント」を教えている。授業では積極的にTEDトークを活用し、「TED ×Stanford」のアドバイザーも務めている。