藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

韓国から学ぶこと。

この3-40年でも、特に経済界の中だけでも価値観とか、流行りのスタイルなんかは、ビュンビュン変わってきたという実感がある。

自分が若い時に聞いた「モーレツ」とか、「環境問題」とか「ゆとり」とか「規制緩和」とか「ボーダレス」とか。
そして今や"ネット"だ。

流行のアイドルグループに熱中するように、ビジネスをする人たちの流行りも移ろってきた。
記事では北朝鮮から亡命してきた人たちが、職を得て立派に働いているという。

結局、仕事も経済も政治も(官僚はともかく)、極端な「勝ち残り競争」は続かないものなのだ、というのが結論のような気がする。

特に欧米から「白馬の騎士」のように突然現れた企業や産業は、その極端なヒーロー性のために、数年で自滅しているような気がする。

世界で最も安く作り、高く売れるところへ運ぶ。とか。
世界で最も成長する国に投資し、エネルギーや為替で稼ぐ。とか。

聞いているだけで、まるでアスリートのような「常に競争と勝負」ということこそが自分たちの本来の姿ではないのだ、ということがなんとなく感じられる。

「持続可能性」とよく言われるが、本当に息長く続いていくスタイルは、田舎や先人の生き方にあるような気がする。
今はまだ宴の最中なのではないだろうか。

韓国「慈善資本主義」の波 本社コメンテーター 梶原誠
 韓国最北部の坡州(パジュ)市は、北朝鮮との境界の街だ。朝鮮半島を南北に分ける非武装地帯から自動車でわずか10分の場所に、その会社「メザニン・アイ・パック」はあった。化粧品向け、食品向け……。事務所に隣接する工場では、人々が紙を加工して製品を入れる箱を作っている。

 社員は50人。そのうち10人、つまり社員の20%は北朝鮮から脱出してきた人々だ。

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 同社は2008年、脱北者を雇用して社会に定着してもらうことを目的に創業した。雇用のためにも稼がなければならないし、実際黒字を続けている。「社会的企業の手本になりたい」。朴商徳(パク・サンドク)社長(56)は抱負を語る。

 豊かさを求めて韓国に来る人は後を絶たないが、異なる文化や資本主義になじめず、犯罪や自殺に追い込まれる人も多い。英語で「中二階」を意味する「メザニン」を社名に盛り込んだのは「一般人と弱者の橋渡しをしたい」という朴社長の思いからだ。

 私が同社に注目したのは、「社会派」が連鎖しているからだ。同社には、社会派企業への投資や経営指南を手掛けるソウルの「MYSC(ミスク)」が出資している。メザニン社を資金面で支える一方、3年後に同社の株式を上場する計画を朴社長と議論中だ。リスクマネーを得て企業は成長し、弱者は救われ、投資家も報われる――社会を支える生態系が浮かぶ。

 社会志向の波は、韓国経済を良くも悪くも牛耳る財閥にも押し寄せている。「財閥から一緒に仕事をしないかという話が増えている」。MYSCの会長である鄭振鎬(チョン・ジンホ)氏(62)は明かす。すでに現代自動車やSKグループと連携し、社会起業家を育てる活動などを展開中だ。

 財閥批判への対応でもある。韓国の財閥は成長への最短距離を走った結果、世界での存在感を一気に高めた。だが恩恵は国内には広がらなかった。表面化したのはむしろ、財閥の下請けを担う中小企業への過度な値下げ要求、その結果でもある格差の拡大、主要国で最悪水準にある自殺率や若年層の失業率といった成長の暗部だ。

 人々の不満が爆発した結果が昨年の大統領失脚で、最大の財閥であるサムスングループのトップ逮捕だった。財閥は社会の不満に耳を傾けざるを得ない。サムスン電子は今月、500億円相当の基金をこしらえて孫請け業者の資金繰りの支援に乗り出した。

 社会の怒りと企業経営の「社会化」。韓国であらわになったこの構図は世界規模の現象であり、原点は08年のリーマン・ショックだと私は考えている。

 目前の収益のみを追ったウォール街の金融機関は、過大なリスクを取って自滅した。経済という公器を傷つけ、人々の怒りを買い、規制の強化が経営を圧迫した。

 社会を敵に回す経営のもろさを知ったウォール街は反応した。JPモルガン・チェースは、自動車の街デトロイトの経済再建を本業で支援している。ウォール街に大量の人材を送り込んでいたハーバード・ビジネス・スクールは、社会との共存こそが収益機会という概念「クリエーティング・シェアード・バリュー(CSV)」を理論化し、世界に広めている。

 この傾向に拍車をかけたのが昨年のブレグジットや、米大統領選でのトランプ現象だ。企業のグローバル化がもたらした格差への怒りは鮮明になり、世界の企業は社会に一層神経をとがらせた。

 一方で、社会派としては先を行く非政府組織(NGO)などの慈善組織は、「企業化」を一段と進めると私は予想している。

 きっかけは、やはりリーマン危機だ。景気悪化で弱者への支援が必要なのに、寄付が減った慈善組織は多い。社会に欠かせない事業の方が収入は安定的だ。慈善家に転じたビル・ゲイツ氏らに刺激され、社会的なリターンを企業経営の発想で追う「慈善資本主義」という言葉も広まった。

 3年前、3万人の従業員を擁し、貧困解消を目指すバングラデシュのNGO、TMSSを訪ねた。収入の寄付への依存はわずか4%で大半は紙のリサイクルなど社会的事業から得ていた。「産業をもっと興して人々の所得を高めたい」。創設者であるホスネアラ・ベガム氏の発言を強く覚えている。

 企業も慈善組織も、先進国も途上国も、持続的な成長を目指して収益性と社会性を併せ持つ姿を競っているかのようだ。短期的利益を極大化するだけの、かつての米国型資本主義はとっくに信用を失った。今ようやく「新たな資本主義のかたち」がちらついている。

 韓国は、この競争を有利に進める可能性がある。就任したばかりの文在寅ムン・ジェイン)大統領は「人間中心の経済」を訴えて弱者をすくい上げようとしており、財閥も呼応しつつある。

 「財団マネー」の行方は焦点になるだろう。主要財閥は社会貢献のための財団を持っている。MYSCによると、使える資金は合計7000億円相当に上るが、その多くは単なる資金運用にとどまっている。巨額の資金がメザニン社のような社会的企業の成長を支えれば、韓国経済の顔ぶれも変わり、世界からも注目されるだろう。

 「トイレから戻って気が変わった」という俗語が韓国にある。追い込まれたら何でもするが、落ち着いたら態度を一変する例えだ。政治も財閥も、未曽有の社会的な圧力にさらされている今が、後戻りできないほど進化する好機だ。