藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

令和のマンモス(1)

*[ウェブ進化論]滅亡と新生。
日経、VC社長の成田宏紀氏の記事より。
製薬業界の今後を予見した内容だが、他の産業にも通じるエッセンスがある。
まず、サイエンスが起こす「新風」により、疾患のメカニズムはより明らかになり、今まで一つの病気と考えられていたものが、複数の細かい疾患に分類されると考える。

これだ。

今の医学技術がどんどん進み、どんどん深いところが明らかになっている。
「がんは数年後には死ぬ病気ではマイナーになる」という医師もいる。
そうした「技術の深化」が既存の大企業には致命的なことになるかもしれないという。
効きそうな患者に絞られる分、当然治験薬は効きやすくなるし、対象患者は少なくなるため、大規模な臨床試験が不要となる。
現代統計学の申し子RCT(ランダム化比較試験)による臨床試験が主流だが、ビッグデータの時代も相まって、時代遅れの手法になるかもしれない。
さもありなん。
精度は悪くとも「数打ちゃ」という手法が時代遅れになる時代が来る。
そして。これが一番重要ではないだろうか。

個人的には、規模を抑え、特定技術や疾患に特化した企業が次世代の主流になると考える。

つまり。
スタートアップはこれからますますチャンスが多いということだ。
「技術の霧が晴れてゆく」のおかげで、追いかけるターゲットがはっきりして、少人数でも狙いやすい。
ますます大事なのは専門性か。
日頃から「自分のターゲットは何か」を探して世の中を見つめる必要がありそうだ。
(つづく)
 
令和の医薬、VCに商機
2019年6月2日 19:30
令和を迎えて久しいが、周回遅れながら、筆者も時代を予想し、令和に吹く「風」を読んでみたい。21世紀を迎えた時も「これからはバイオの時代だ」とコメントしたが、新しい時代を迎えると、とりあえず何か言うのは様式美である。
2000年エヌ・アイ・エフベンチャーズ(現・大和企業投資)に入社し、11年投資第一部副部長兼VC投資第四課長。14年5月、DCIパートナーズ社長就任。
令和であるが、数十年単位の科学の予想は、正直言って無理である。そこで経済環境から、イノベーションの担い手であるベンチャーを取り巻く環境を予想してみたい。星占いレベルの精度であることは許してもらいたい。
筆者は現在、医薬品産業は長い「嵐」の中にあると感じており、令和時代中に様々な変化が顕在化すると感じている。
まず、サイエンスが起こす「新風」により、疾患のメカニズムはより明らかになり、今まで一つの病気と考えられていたものが、複数の細かい疾患に分類されると考える。
効きそうな患者に絞られる分、当然治験薬は効きやすくなるし、対象患者は少なくなるため、大規模な臨床試験が不要となる。現代統計学の申し子RCT(ランダム化比較試験)による臨床試験が主流だが、ビッグデータの時代も相まって、時代遅れの手法になるかもしれない。
こうなると、メガファーマの規模のメリットは薄れるし、大企業が追いかけるには市場規模が小さ過ぎる。個人的には、規模を抑え、特定技術や疾患に特化した企業が次世代の主流になると考える。
ひょっとしたら、大成長したベンチャーかもしれないし、メガファーマが非戦略領域を売却したり、ベンチャーとして切り出したりすることで脱皮を図った姿かもしれない。
 
次に、医療保険制度は巨大な「台風の目」になると予想する。日本は国民皆保険により、患者負担3割で最先端の高額医療を受けられている。しかし、医療保険の台所事情は火の車である。
保険対象医薬品の薬価は国が決めているが、薬価抑制は不可避だろう。費用対効果による薬価調整もまさしく始まる。意外かもしれないが、医薬の世界で費用対効果の概念は乏しかった。諸外国では既に導入されているが、人命が地球より重いこの国ではようやくの導入である。
問題は、そもそも保険の対象とすべきか、費用対効果を用いて判断すべきだとの意見が既に出ていることである。
現在は高額な医薬品を想定しているようだが、一度保険の例外を認めると、他の医薬品にも波及する可能性がある。長期収載品にメスが入ろうものなら、製薬会社は良くて悲鳴、打ち所が悪ければ断末魔の声を上げるだろう。おそろしい話だが、蟻の一穴は開いてしまったのではないかと考える。
これ以上は製薬業界と筆者の間に「隙間風」が吹きそうなので書けないが、これらの変化が万が一起こると、「逆風」下の製薬会社には、イノベーションしか活路はないかもしれない。
ということは、イノベーションを供給するベンチャーは活躍する。制度が変わると商機が生まれて、新しいベンチャーも誕生するだろう。ということは、筆者の商売はチャンス到来である。
「風」が吹けばVCがもうかるのである。
日経産業新聞 2019年5月30日付]