藤野の散文-私の暗黙知-

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振れ幅の中で(2)

*[政治] 究極の形。
FTより。
独裁主義的な考え方のほうが時代遅れになっているのではないか。

 自由主義反自由主義か。

というか古今東西、政治ほど揺れ動いて型の決まらないものも珍しいのではないか。
議院内閣制とか、二大政党制とか連邦制とかいうけれど「これだ」というのは特に大国ではお目にかからない。
アイスランドとかスロベニアとかヨーロッパの小国では成功しているモデルがあるようだが、どうも一定の人口規模以上では統治は安定しないのかもしれない。
自由主義反自由主義か」は二分できる問題ではないと思うが、独裁主義で国民をまとめ切るのも無理そうだ。
EUもいつまでもゴタゴタしているし、ひょっとして世界は「数十万人くらいの国」に細分化しないとまとまらないのじゃないかとも思う。
 
世界中が富めば争いは無くなる、という人もいるが、特に独裁者でそういう考えの人は見当たらない。
企業でも統治のスタイルは百人百様と言われるが、自分には「小さな規模で志を共有する」というスタイル意外に思いつかない。
方針や行動がまずいのではなく、統治規模に問題があるような気がしてならないがどうだろうか。
そういう意味で、未来は小さな政府、小さな行政ではないだろうか。
 
 
[FT]反自由主義こそ時代遅れ
 
2019年8月16日 2:00
 

Financial Times

ロシアのプーチン大統領は、「自由主義的な考え方は時代遅れになった」と言う(編集注、6月下旬、プーチン氏がFTの単独インタビューの中で、こう発言し注目を集めた)。確かにそうかもしれない。しかし、最近モスクワと香港の両都市を訪れたところ、反自由主義もまた、それほどうまく機能しているようにはみえなかった。

 
イラスト James Ferguson/Financial Times
ロシアと中国は共に西側の自由主義に対し地政学的、イデオロギー的な面から異を唱える代表的存在だ。だが両国とも「自国政府は安定しており、効率的で、国民の支持がある」との主張を覆すような抗議デモに直面している。抗議活動への両国政府の反応も似ており、モスクワや香港のデモは海外の敵対勢力らが仕組んだものだ、という自分たちに都合のいい妄想的解釈を展開している。
 

香港、モスクワのデモには共通点が多い

モスクワと香港で起きている事態には大きな違いがある。まずは抗議活動の規模だ。香港のデモの中で最も規模の大きかったデモには約200万人が参加した。一方、モスクワの10日の週末に起きたデモは過去最大規模だったが、参加者は約5万人だ。また、ロシア警察は香港よりはるかに早い段階で暴力的な対応を取り、デモ参加者の大量逮捕に踏み切っている。加えて、モスクワはロシアの首都であり、国家権力の中枢だが、香港は中国の一部とはいえ異なる制度の下に統治されている別の存在だという意識がある。
 
こうした違いはあるが、筆者は香港を離れて1週間後にモスクワを訪れ、両都市の市民デモにあまりに共通性があることに衝撃を受けた。まず、どちらも抗議デモに参加する者たちの士気が極めて高い。8日にロシアの反体制派の弁護士、リュボフ・ソボル氏(31歳)に話を聞いた。同氏はモスクワ市議会選挙への立候補が認められなかったことに抗議して、ハンガーストライキを始めて4週目に入っていた。そのため今や歩くことも困難な状態だが、当局はそれでも彼女をデモに参加させないよう10日に逮捕した。
 
ソボル氏は8日、7月下旬や8月上旬のデモで多くの逮捕者が出たにもかかわらず、10日の週末のデモは過去最大規模になり、モスクワ以外の都市にも広がるだろうと予想した。実際、その通りになった。彼女は「モスクワは変わった。ロシアも変わった。今や国民は自分たちを代表するような政治家を求めている」と考えている。
 

今や広範な要求へと姿を変えた抗議デモ

モスクワのデモに参加した勇気ある人々は、香港で会った学生や若い社会人たちを思い出させた。彼らは逮捕され、収監されれば自分の将来が閉ざされる危険があると知りながら、デモがあるたび参加し続けている。
 
いずれの抗議デモにも若者の多さが目立つ。モスクワで長年自由主義を求めて闘っている人物がこう説明してくれた。「何年も反プーチンデモには欠かさず加わり、参加者のほぼ全員を知っているが、今回参加してきた若者たちには会ったことがない」。香港の世論調査によると、中国政府に最も反感を抱いているのは若者だ。
 
モスクワでも香港でも抗議運動に単一の指導者はいない。デモ参加者はインターネットを介して広まるため、抑え込むのは難しい。香港のデモ参加者たちは、伝説の武道家ブルース・リーの言葉「水(のように柔軟)であれ」をスローガンに掲げている。この言葉を胸に、固定的で予測可能な戦術は採らないようにしている。モスクワでも、最も有名な反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏周辺の活動家がほぼ全員逮捕されているにもかかわらず、抗議デモが収まる気配はない。
 
デモ参加者たちが、みせかけだけの民主主義に対し怒っている点もモスクワと香港は極めて似ている。モスクワのデモは、9月の市議会選挙に無所属で出馬しようとした者全員の立候補を当局が認めなかったことが引き金となった。香港市民の多くは、転換点は2016年、香港立法会(議会)の選挙で当選した政治家の一部が、中国に忠誠を誓う宣誓をしなかったとして議員資格を無効にされた時だったと考えている。
 
香港でもモスクワでも、抗議デモが1つの不満に基づくものから広範な運動に展開していった様子が見て取れる。香港では、最初のきっかけは犯罪容疑者を中国本土に引き渡せるようにする条例改正案が提出されたことだった。だが改正案が棚上げされた後もデモは続き、参加者は今や完全な民主的選挙を求めている。ロシアでも、モスクワ市議選を巡る議論はもっと大きな問題を浮き彫りにした、とソボル氏は指摘する。「プーチン氏が率いる体制の下ではロシア社会がいい方向に変わることは絶対にないと社会が気づいた」
 

高まりつつあるデモ鎮圧のリスク

両国政府はデモを抑えつけるか、譲歩するかに直面している点でも似ている。いずれの道も裏目に出る可能性がある。ロシアでは6月、汚職を追及していたことから容疑をでっち上げられ逮捕されたイワン・ゴルノフ記者の釈放に自由主義を求める活動家らが成功したことでデモが勢いづいた。香港では行政府が逃亡犯条例改正を棚上げすると譲歩したことが、デモを力づけた可能性がある。
 
しかし、反対に抑圧を強める道は、不公正感をかき立てる。そもそも国民が最初にデモを始めたのは、そうした不公正感への不満からだ。モスクワでも香港でも、デモ参加者らは、これまでの抗議デモで逮捕された者たちの釈放を要求として大きく掲げるようになっている。
 
どちらの都市でも、街頭デモはこれが初めてではないという経験が、政府と抗議デモ双方の戦術に影響を与えている。香港は14年に雨傘運動を経験し、モスクワでは12年に大規模な反プーチンデモが起きた。
 
これら過去の運動は結局、自然消滅していった。そのことがロシア政府や中国政府にしばらく様子を見ようと時間稼ぎをさせているのかもしれない。だがデモが長引くにつれ、力にものをいわせて鎮圧する危険性は明らかに高まっている。
 
何が起きようとも、モスクワでも香港でもこうした民主化を求める抗議デモが繰り返し起きるのをみると、プーチン氏が嘲笑する自由主義とは、何度も再発する熱病のようなものに思える。そうした熱は警察の力という"治療"で一時的に抑えることはできるかもしれないが、必ず再発する。
 
独裁主義的な考え方のほうが時代遅れになっているのではないか。
 
By Gideon Rachman
 
(2019年8月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/
 
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