藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

アマゾン・サイドウォーク。

*[ウェブ進化論]ネット網もアマゾン。
FTより。
さてこの本を読めばもう粗暴とか乱痴気、と言ってよいレベルにアマゾンが四方八方に手を広げていることがよくわかる。
amazon 世界最先端の戦略がわかる

amazon 世界最先端の戦略がわかる

 

 

FTの記事の中では「じっくり仕上げるアップル」と対比されているがその"やんちゃぶり"が勝利しつつありそうだ。
ECと物流を制覇したら、今度はネットワークそのものも狙っているらしい。
同社が9月の製品発表会で明らかにした新しいネットワーク技術「アマゾン・サイドウォーク」だ。これはWiFiと広帯域モバイルネットワークのギャップを埋める技術で、(後略)
AIスピーカーと家電を組み合わせ、家中の家電を丸ごとネットワークする。
その中心にアマゾンがいるという話。
壮大すぎる計画だが、もはやこれを冗談だと思う人はいないだろう。
 
さらには
どんな機器でもアレクサを搭載しやすくするチップセットを第三者メーカーに販売する戦略だという。
 
まさに「底辺から頂上まで」を本気で制覇する計画は野望と呼ぶにふさわしい。
さて自分たちはその野望を、まるで景色のように眺めているだけにはしたくないものだ。
 

「アレクサ」外販に込められた野望

アマゾンがもう一つ力を入れているのが、どんな機器でもアレクサを搭載しやすくするチップセットを第三者メーカーに販売する戦略だ。
 
[FT]アマゾンがIoTで狙う覇権
 
2019年10月3日 23:00
 

Financial Times

どんな些細(ささい)な会話も聞き漏らさないスマートデバイスに囲まれて、常に監視されているような生活を想像してみてほしい。そんな未来はおぞましいと思うかもしれない。だが、これこそが米アマゾン・ドット・コムが描く未来だ。そしてその未来は、読者が想像している以上に早く到来しつつある。
 
大手テック各社は今、次々に様々なガジェット(目新しい電子機器)を発売している。機器を売ることで、自社のデジタルサービスの契約につなげようというのがハイテク各社共通の戦略だ。

 
アマゾンは9月25日恒例の新製品発表会でAI搭載の機器を多く発表、そこにはIoTの中心的存在になる戦略がある=AP
フェイスブックは9月18日に開いた製品発表会でビデオチャットができる機器、スマートスクリーン「Portal」の第2世代の機種を発表した。米グーグルは近く、クリスマス商戦に向けて複数の個人用ガジェットを発売する。そのすべてはグーグルが提供するサービスを受けるためのプラットフォームになっている。
 
米アップルでさえ、自社が提供するサービスの受け皿としてのガジェットの投入に力を入れている。同社が提供するニュースや音楽、動画、ゲームなどのサービスにもっと多くの消費者を取り込もうと、9月に発表した新型iPhoneの主力機種では、価格の引き下げに踏み切った。
 

アップルとは対極の低価格戦略を展開

しかし、いずれの企業が抱く野心も、その大きさではアマゾンにかなわない。アマゾンは1年前、驚くほど多くの消費者向けデバイスを一気に発表した。同社が投入した初の電子レンジを含め、そのすべてにはアマゾンの人工知能(AI)「アレクサ」が搭載されている。
 
さらに今年9月25日に開いた毎年恒例の製品発表会では、タップすると内蔵されたアレクサと会話できる指輪型デバイス「エコーループ」や、同じくアレクサを搭載した眼鏡「エコーフレーム」など、目新しい新商品を低価格で発売することを明らかにした。
 
多種多様なハードウエアの開発になりふり構わず突き進むアマゾンのこの姿勢は、アップルとは対極にある。アップルといえば、職人技とこだわりによる徹底した開発を秘密裏に進め、完璧な製品に仕上がると、それにふさわしい高価格で発売する。これに対しアマゾンは、猛スピードで片っ端から製品開発を進め、完璧にならなくてもそれらを圧倒的競争力を持つ価格で市場に投入し、勝ち抜いていくという戦略だ。
 

スマホ市場での失敗を取り返すのが狙い

アマゾンがこれだけの競争力を持つに至ったのは、同社がEC(電子商取引)という土俵だけで戦ってきたわけではないからだ。そのことは、この9月の製品発表会で様々な新分野への進出を明らかにしたことで明白になった。いろんな分野に進出する目的は一つだ。従来では考えられないほど多くの新しい電子機器が登場してくる中、その中心にアマゾンが提供するサービスを据えることだ。
 
スマホ市場への参入に失敗した同社は、その失敗を取り返そうとしているのだ。
 
アマゾンが新しく進めている戦術の一つが、アップルの得意分野を攻めることだ。9月に発表した新製品のうち、アマゾンが初めて出すワイヤレスイヤホン「エコーバズ」には米オーディオメーカーのボーズのノイズ除去機能を搭載、高性能スピーカー「エコースタジオ」にはドルビーの「3Dサウンド」を搭載した。だが、価格はアップルの製品に比べはるかに安い。アマゾンが世界最強の買い物サイトも展開していることを考えると、同社はアップルの手ごわい競合になるということだ。
 

ハード分野でグーグルが中途半端な理由

同じくハードの強化を進めるグーグルとも比べてみよう。検索エンジンとしてスタートした同社はハードの分野に進出して4年目になるが、高品質高価格市場と量産品市場を前にどっちつかずの状態に陥っている。スマホ搭載のカメラなど素晴らしい技術を複数持っているのに、多数の熱烈なファンを一気にひきつけるような独自性のある製品を出せていない。一方、ネット上のサービスでは数十億人にも上るユーザーを抱える企業でありながら、その大量の消費者をつかむような大胆な価格も提示できていない。
 
アマゾンの新戦術の2つ目の特徴は、見えにくいが長期的には重要な意味を持つ。それは、自社で様々なスマート機器を生み出していくだけでなく、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の時代の到来に備え、アマゾンのサービスがその中心にくるよう、その土台作りを進めていくというものだ。
 
これを可能にする一つの要素が、同社が9月の製品発表会で明らかにした新しいネットワーク技術「アマゾン・サイドウォーク」だ。これはWiFiと広帯域モバイルネットワークのギャップを埋める技術で、家庭用のネットワークを広げ、今の制限が多い従来のネットワークではカバーしきれない様々なスマートデバイスをすべて接続できるようにするものだ。
 
もし十分な数の顧客がこのサービスを契約してくれれば、個々のネットワークが重なり合いながら大きな通信網を形成することになる。そうするとこの通信網によって、アマゾンが今後提供していく次世代の様々なスマートデバイスやサービスの利用が可能になっていくというわけだ。
 

「アレクサ」外販に込められた野望

アマゾンがもう一つ力を入れているのが、どんな機器でもアレクサを搭載しやすくするチップセットを第三者メーカーに販売する戦略だ。「アレクサ入ってる」というキャッチコピーで1年前から外販を始めたが、そのチップセットはここへきてさらに性能を高めている。最新版は調理機能まで備えており、このことは将来、今よりはるかに高レベルのAIを搭載していけば、毎日のこまごまとした仕事は簡単にこなしてもらえる日が来ることを示唆している。
 
9月の製品発表会の前日、アマゾンはアレクサをもっと普及させるための計画も発表した。この計画には既に29社が参加しており、一つのデバイスでも複数のAIアシスタントを搭載可能で、異なる「ウェイクワード」で呼びかければそれぞれを使い分けられる、というものだ。ただ、興味深いことにグーグルとアップルは現時点ではこの計画には加わっていない。
 
アマゾンによるこれらの取り組みは、IoTの時代が到来した際は、すべての中心に同社のサービスがあるという状況にするための布石だ。アマゾンのハードを買うか否かにかかわらず、同社の壮大な野望にのみ込まれることはもはや避けられないのかもしれない。
 
By Richard Waters