藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

おちつけ。

*[ウェブ進化論]世界で浮つく。

日経FTより。

今回のコロナ騒動はかつてない「情報との戦い」でもあるが、それにしても諸説入り乱れて正常な判断を妨げている。

専門家から経済学者から高級官僚から町医者まで「各々の自説」をこれだけ発信されると冷静な分析は難しい。

中でも「マスクは有効か?」ということについてすら確定的な情報はまだないようだ。

いまだにこのようなテーマの記事が大手紙に出るくらいだから「客観的で正しいコンセンサス」を作るのはとても難しいことなのだと思う。

マスク不足も日用品の買い占めも、恐怖心が引き起こしているに違いないが、「早い者勝ち」な行動が実際に起きてしまうのは、今の世界の政治の「保護主義」とどこか似ている。

米中貿易摩擦の問題からしてそうだったが、まずは「互いに軽挙妄動せずに落ち着こう」という知恵が最近の世界からは抜け落ちているように見える。

まるで幼児の振る舞いのようだ。

「われ先に」を誰かがすれば秩序が保てないのに「それ」を抑えられないのが今の先進国なのだろう。

今回の騒動が、近い将来に「外交行動の指針」のようにまとめられて、今のような利己主義を諌めるような知恵にできることを願う。

そういう意味ではマスクを配るとか、人の鎖国をするとか「こんなこともやっていた」という好例になるかも知れない。

そうして人類の知恵が上がっていきますように。

 
[FT]マスクは着用すべきか(社説)
オーストリアチェコスロバキアボスニア・ヘルツェゴビナの各国は定められた公共の場でのマスク着用を義務づけているが、欧州共同体(EU)加盟国の多くは着用を奨励していない。アジアでは多くの国々で、市民が日ごろからマスクをつけている。米国では疾病対策センター(CDC)が最近、混雑した場所では布製の物で口を覆うよう新たに勧告した。バンダナやTシャツでも構わないという。もっともトランプ米大統領は「私はそういったことはするつもりはない」と拒否している。
WHOは健康な人が日常的にマスクをすることを推奨していない=AP
世界的に感染が広がる新型コロナウイルスについて、マスクに関する助言ほど一貫していないものはない。世界保健機関(WHO)は指針を見直したが、それでも健康な人々が日常、ほぼあらゆる場面でマスクを使用することについては「現状では勧告の根拠が得られておらず、むしろ不安と重大な危険性を伴う」との見方を変えていない。
マスク着用の推奨に慎重な背景のひとつには、品薄のなか、人々がパニックを起こして買い込むのを防ぎ、医療関係者に医療用マスクが十分行き渡るようにする必要があることが挙げられる。

掃除機のフィルターで代用した人も

とはいえ、マスクの使用を勧めないのはおおむね科学的根拠に基づいての判断、というわけでは必ずしもない。マスクがウイルスの感染率にどう影響するかを調べる正式な臨床試験はほとんど実施されていない。英イースト・アングリア大学は、呼吸器系ウイルスに対するマスクの有効性に関して公表されている研究結果を調べ、店舗やバスなど混雑したところでのマスク着用は、最も感染しやすい人々を新型コロナから守るのには役立つ可能性があると結論づけた。マスクはわずかだが着実な防御効果があるものの、広く使用を推奨するほどではないという。
マスクの着用が間違った安全感覚をもたらし、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つことをおざなりにしたり、手洗いなど他の対策の代わりになると思われたりする危険性があると専門家はみている。マスクの外側はウイルスで汚染されやすいので、不注意な外し方をすると着用者本人が感染するかもしれない。スカーフなどの代用品は呼気で湿ってしまい、それ自体が感染ルートになることも考えられる。
マスクをして汗をかいたりこすったりすることで皮膚を傷め、他の感染症を引き起こす恐れもある。代用品によっては特にリスクが高まる。実際、危険な粒子が含まれているかもしれない掃除機のフィルターをマスクにしてみた人がいた。

他人への感染リスクを抑える可能性

利点と難点を考え合わせると、重要な点は、医療用マスクの水準に達しないマスクは、どれも着用者を感染から守るほどの効果がないということだ。ウイルスはあまりにも小さいため、生地の繊維の隙間を通り抜けてしまう。もっとも新型コロナへの理解が深まるにつれ、他人への感染リスクを抑えるためにマスクを着用することを支持する意見には説得力が出てきそうだ。
ウイルスの主要な感染ルートは飛沫だ。くしゃみとともに飛び散る飛沫は、これまで考えられていたよりも遠くまで届くことを示す証拠がある。感染していればまだ症状が出ていなくても、他人を感染させてしまうかもしれない。マスクはくしゃみやせき、呼気によって飛沫が拡散するのを抑えるので、マスクの表面の汚れを減らせる。
医療当局はマスク着用を推奨しないまでも、多くの市民がマスクで自己防衛しようとしていることを認識すべきだ。ニューヨークの一部では、すでにマスクをしないで歩いていると見とがめられる。当局は、医療用マスクは医療関係者用に確保しておく必要があると訴え続け、同時に手洗いやソーシャルディスタンスの維持が最も重要であることも引き続きしっかりと呼びかけるべきだ。一方、何らかの形で口元などを覆いたいという人々に対しては、政府や専門機関は何をどう使えばいいか明確な公式見解を出さなければならない。他国がしていることを簡単に目にすることができる今の世の中で、矛盾する助言は役に立たないだけではない。助言する人々への信頼も失わせる恐れがある。
(2020年4月12日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/
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