藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

神の手を。


小泉内閣規制緩和の余波はまだ続いている。
どん、と増えたタクシーが4%強、減らされるという。
都内のタクシードライバーの嘆きの声は日々痛切だが、乗客の数に応じた、「応分の収入」というのを恣意的に操作する、というのはいつまで経っても安定しないのではないか。
バブル期には近距離の仕事をしてくれぬタクシーが跋扈していたが、今は見る影もない。
行政が規制して台数の増減をするのは、結局市場の調整機能を損なうのではないか、とこの度の報道を見て思う。


昔の「駕籠や」は規制こそされていなかったからこそ、色んな人が街道で営業努力をし、料金体系も柔軟だった。
お上がそこにしゃしゃり出てきて、本当に「適正供給」になるのかは、かなり疑問である。
「業界がさらなる規制強化を求める」という一節を聞いても、それは既得権益の受益サイドの発言であり、実はその権利を護るための「規制」にあまり消費者サイドのメリットがない、ということを自分たちはもう体験的に知っていると思うのである。


いつもながら「既得権益サイド」の発言と言うのはおかしいことだらけである。
その「おかしさ」に自分自身が気付かぬほど病んでいるのである。
政治世界の「老害」は「高齢者の権力保持のせいで若者が活躍できないこと」だが、それよりひどい。

タクシー業界では車両1台当たりの運転手が足りない状態で、車両の削減が雇用に与える影響は少ないとみられる。

では「台数削減」をしていったい何になるのか?というそもそもの部分がまったくはっきりしない。
国交省もその「本意」を定めないから、いつも「台数ありき、規制ありき」といった消費者不在の不毛な議論になるのである。
そして、

また、車両数の規制だけでなく、運賃の規制を強化して割安な運賃を排除するべきだとの声も出ている。

結局、このあたりのことがやりたいのである。

業界の利権を護るための規制。

という構図はまだまだ日本からはなくならない。
各業界の団体や、行政ががっちりとガードしている。
業界側は利益確保を、行政は「役所としての影響力の保持」をそれぞれ志向し、目的とする場所は違うようだが、皮肉なことに「国民不在」という部分だけが共通している。


一度思い切って自由化し、「サービスの価格と質」を真剣に競って「業界としての需要喚起」を本気で考えないと、本当に公共交通機関にとって代わられるだろうと思う。
高齢者の無料パスを使い、「公共交通を駆使して町中を闊歩する」お年寄りの多さを侮ってはならない。
業界自身が、自らの「強さ」を磨かねば明日への道は開けないと思う。


日本のタクシーはきれいである。
地方に行ってもどの車両もピカピカ。
しかも新しい。
恐らく世界一ではないか。
ぜひその「サービスの質と価格」においても世界一、ダントツの存在へと進化して欲しい。
そしたら、そのまま輸出も可能である。




タクシー1万2千台減車へ 供給過剰の解消狙い


全国のタクシー会社で減車や休車を申請する動きが相次いでおり、来年3月までに全体の4%強の1万2千台の車両が減る見通しであることがわかった。
大規模なタクシーの削減は戦後初めて。
車両の増加が客の奪い合いに拍車をかけ、運転手の待遇悪化を招いているとして、国土交通省は業界に対し営業車の削減を促している。
サービスの低下も懸念されているが、業界にはさらなる規制強化を求める声が強い。


国は昨年10月、タクシーが供給過剰になっているとして、「タクシー適正化・活性化特別措置法」を施行。
供給過剰地域のタクシー会社に、車両の削減を申請すれば業務監査を免除するなどの特典を与えていた。


朝日新聞が、全国10カ所の運輸局(沖縄総合事務所を含む)に現時点での申請状況を取材したところ、減車や一時的な休車の申請をした会社は40都道府県で合計1876社にのぼっていた。
運輸局はほぼ申請通りに認める方針だ。


都道府県別にみると、東京都では、全体の7割近い297社が計4136台の削減を申請。
大阪府では約4割にあたる157社が計2057台、愛知県では120社が計867台、福岡県では102社が361台を減らすと申請している。
タクシー業界では車両1台当たりの運転手が足りない状態で、車両の削減が雇用に与える影響は少ないとみられる。


タクシーは、参入や増車の規制が緩和されたこともあり、バブル経済崩壊で需要が減った1990年代以降も増え続けた。
大半のタクシー会社は、売り上げが減ってもそれに応じて運転手の給料を減らす「歩合制」を取っているため、会社の利益はそれほど減らず、車両の削減には消極的だった。


そのため特措法では、タクシー事業者や自治体が参加する協議会を地域ごとに設けて削減を目指すことにした。
国交省はこの協議会に対し、全国で最大4万5千台が余剰になっているとの試算結果を示していた。


急な車両の削減は、価格やサービスの競争を損なう心配がある。ただ、業界には各社の計画通りに減車が実行されても、国交省が示した「適正台数」に達しないことを理由にさらなる規制強化を求める声が強い。
また、車両数の規制だけでなく、運賃の規制を強化して割安な運賃を排除するべきだとの声も出ている。


国交省旅客課は「まずは東京など、先行してある程度車両が減っていく地域について、運転手の給料やサービスがどうなるのか効果を見定めたい」としている。(大平要)