その立場で、その年齢であらばこそ、独特で「一層の重み」をもつ言葉がある。
99歳・私の証"あるがまゝ行く"、より。
日野原氏は言う。
中学1年生のうちからすぐ、名門の進学高校に行こうなどとは考えず、最初の1年は、自信をつけることに専念してください。
そもそもの「学習の理由」を自分たちは若い世代に、真正面から伝える必要がある。
それも自分の言葉として。
中学生になれば進んで学び、自立する気力を養ったり、努力を重ねたりすることが必要です。そのためには、「このような人になりたい」というモデルを探すことです。
学びの動機。
まず「詰め込み」の学習ありき、ではない。
まずロールモデルを探して。
そして「そうなりたい」と思うことで学びなさい、という「学びの動機」について重要な示唆がある。
ふとした発言だが、こと「根源的な動機」という意味ではとても重要だろう。
「まず学べ」ではない。
「そう思うのなら、学びなさい」というとことんの「自発」からの学びなのである。
最近「学び」への動機がそもそもどこにあるのか、ということが取り沙汰されることが多い。
それがないのに学ぶ、というのもどこか矛盾しているけれど、ある程度形から影響を受けることもあるだろう。
受験教育の中、まず成績ありき、という常識を疑うことは、なかなか青年期には難しいものである。
けれど、生涯を通じ、職業を越え、「学ぶ」ということを続けられるのは、人の貴重なアドバンテージである。
なぜなら、それはとても知的に充足感をもたらしてくれるから。
何となく、「世間の言うような尺度」で動く時期もあるだろうけれど、段々と物心が付いてくると「自分なりの価値観」を自分で持って生きてゆかねばならない。
そんな時にも「学び」というのは普遍のキーワードなのである。
まず学び、というよりは「学びたいから学び。」
当たり前だけれど、自分に問うて、もっとも自発的なことから取りかかりたいものである。
学生さんでもそうだし、社会人でも実は何ら変わらない。
考えと行動は、最後は一致しなければならないと思う。
中学に進んだ君たちへ
この春、中学校に入学した君たちに、私からメッセージがあります。
君たちは、「2分の1成人式」と言われる10歳を2年すぎ、もはや子どもではありません。大人となる入り口で、青年と呼ばれる段階に来ています。
小学校では、先生たちから知識を教えられたと思いますが、中学生になれば進んで学び、自立する気力を養ったり、努力を重ねたりすることが必要です。そのためには、「このような人になりたい」というモデルを探すことです。
今から86年前、中学校に入学した私がまず向かったのは本屋さんでした。大人になるにはどんな本を読めばいいか、自分で探し、選んだものの一つが発明家エジソンの伝記でした。
スポーツが好きならイチロー選手の伝記でもいいし、紙幣に印刷されている有名な人たち、例えば医学者の野口英世や慶応義塾をつくった福沢諭吉、「坊ちゃん」の作者・夏目漱石などの伝記でもいいのです。14歳で漁師らと漁に出て漂流、アメリカの捕鯨船長に救われ、日本人として初めてアメリカに上陸したジョン万次郎こと中浜万次郎の伝記もぜひ読んでほしいです。そして、これらの伝記の主人公に負けないように、精いっぱい勉強してほしいのです。
中学1年生のうちからすぐ、名門の進学高校に行こうなどとは考えず、最初の1年は、自信をつけることに専念してください。
これからは、いろいろな出会いが君たちを待っています。講演会に参加したり、本を読んだり、劇を見たりしたことが、人生に大きな影響を及ぼすことがあります。その出会いは、君たちを思わぬ所に引っ張って行ってくれます。登山家が岩山を登るのに一歩一歩足場を作っていくように、一つ一つの出会いを最大限に生かす努力も大切です。
君たちは生きているうちに、どこかで思わぬ災害にあったり、大病で長期休学するような事態に陥ったりしないとも限りません。そんな時欠かせないのが、手を貸してくれ助け合える友だちです。親しい友がいれば、困難な状況でも立ち上がることができるのです。