藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

日本の気持ち。

nikkei top leaderより。
楽天、三木谷氏の「劇薬経営」。
なるほど、社内の英語公用語化は、それ自身も目的だったのだが、何よりも経営手法だったのか、と納得。

製品を作って世界に出てゆく企業は多い。というか日本のお家芸である。
そこには「言葉の壁」はない。
そして日本はガラパゴスと言われ。
製品にしても、サービスにしても「なかなか他国と交わらない性質」は、歴史的な背景もあるらしい、日本の特徴である。

そこでさらに考える。
本当に日本のビジネスマンが、他国の人がそうするように「英語を日常語に使い、他国へと仕事をしに出てゆく日」が来るのだろうか。

国内に市場が無くなれば、そうせざるを得なくなる、とか
他国との価格競争、技術競争の結果、日本の垣根は崩れる、という話をよく聞く、が。

自分は何だか、日本人はそういうことをあまり「やりたがっていない」ような気がするのである。
言葉にしても、カナ仮名漢字の三つを使い分け、外来単語も語彙を増やし、これらの細かい話法を、わざわざ英語に変換する、というのは、あまり「知的な興味を刺激しない」ような気がするのだ。
仕事では、必要なことは伝達せねばならないから、必要な人は英語を使う。
そして「特に必要でない人」は、それほど積極的に「そのスキル」を磨こうとはしない。

海外についても。
島国根性、もあるのだろうが、実はあまり「移住」を望んではいないのではないか。
安全である、とか四季がある、とか食文化が豊かだ、とかいろんな理由があって、日本人は自国がとてつもなく好きなのではないか。

保守的というか、我が道を往く、というか、何か"オタク的"な国民性なのではないか。

だから、先の戦争で、特に「侵略」を試みたりしたのはよろしくなかったと思う。
キャラ設定に合っていない。
ひたすら守りに徹して、自国の独立性のみを確保すべきだった、などと思うのである。

特に現在のようなネット社会になり、英語の必要性は日々感じながらも、どこか「体の中から希求するものが今一つ湧いてこないわけ」について、ガラパゴスの意味を今さら考える。

「英語の次はジャバ語」 楽天・三木谷氏の劇薬経営2012/7/2 7:00ニュースソース日本経済新聞 電子版
 2011年12月期も二ケタの増収増益を達成するなど快走する楽天。創業から15年で日本を代表するインターネット企業の座についた。会長兼社長の三木谷浩史は「社内公用語の英語化」など個性的なリーダーシップを発揮し続ける。トップとして会社の将来像をどう見ているのか。これからの成長力の源とは。三木谷に聞いた。(敬称略)
出店者を対象とする「楽天新春カンファレンス2012」で講演する三木谷。さらなる成長に自信を示す
【社長論】 やると決めたら必ずやる
――社長の役割をどのように考えていますか。
 自分でやるべきところと任せるところは、はっきり分けています。楽天の肝である「楽天市場」は私が指示します。一方、金融などの事業は権限を委譲しています。
 戦国武将に例えれば、ここぞという場面では最前線に出ていって太刀を振るってみせることが必要だと思うんですよね。自分がリスクを取って責任を負う姿勢を示す。楽天市場はこれから世界に広げていこうという“脱皮期”なので、直接やらないといけない。
 ですから、今も楽天市場で買い物します。小売業で言えば、店舗の実地見学と同じ。利用者の目線に立って、機能や使い勝手を考えています。
 画面を見ていると、自分でも不思議なのですが、ちょっとしたデザインの崩れや文字のずれに気付きます。そうすると、もう我慢できない。夜中の2時であっても担当者をたたき起こす。
 端末やウェブブラウザーが多種多様になって、それぞれに対応しなければいけない苦労は理解しています。それでも、電話しますね。徹底するこだわりをトップが見せるのは重要なことですから。
――社内公用語の英語化では、トップダウンで推し進めました。
 強烈にやりました。ずるずるとやっている余裕はないので、勢いをつけてやり切ってしまおうと考えましたね。
 「そんなことができるのは、三木谷のオーナーシップがあるからだ」と指摘されれば、そうかもしれません。ただ、周りも「この人が『やる』と言えば、絶対にやる。決して譲らないだろう」と分かっている。嫌われるかもしれませんが、それでもやらなければいけないことが、経営者には往々にしてあります。
■みんな英語が話せるはず
三木谷浩史(みきたに・ひろし)
1965年、兵庫県生まれ。88年に一橋大学商学部を卒業後、日本興業銀行(現・みずほコーポレート銀行)に入行。93年に米ハーバード大学MBA経営学修士)を取得。97年にエム・ディー・エム(現・楽天)を立ち上げる。現職は、楽天会長兼社長(写真:菊池一郎)
 はっきりしているのは、中後半端はダメということ。英語化の目的は、真の国際化を実現するためです。そして、私は「日本人は、程度の差はあれ、みんな英語ができる」と心底、信じている。
 英語ができるようになれば、日本語しか使えない人よりも情報源が増えます。確実に視野が広がりますから、社員一人ひとりの実力向上につながります。最近では、エンジニア全員を世界中の学術会議に参加させるというプロジェクトを始めました。
 また、これまえは楽天市場を熟知している人間が英語を話せませんでしたから、なかなか海外に「楽天カルチャー」を含めたノウハウを移植できないという問題がありました。そんな彼らが、矯正されたとは言え、英語を話すようになった。今は「伝道師」として活躍しています。
 楽天の「英語化」が成功すれば、他社も追随するでしょう。明治維新と同じぐらいのインパクトを日本にもたらしたとなったらいいな、と思っています。
――発想が独特ですね。
 楽天の経営は“教科書通り“に見えないかもしれません。でも、私は当たり前のことをやっているという意識です。
 もともとは「お金はないけれど、どうやったら知名度を上げられるんだっけ」というところからスタートしています。問題を解決しようと考え抜くから、創意工夫が生まれてくる。
 ところが、大企業的な発想を持つようになると、「お金をかけて広告宣伝すればいい」となる。それでは、ロマンも面白みもない。
 創造性にあふれていて人と違う考え方をするのが、楽天のあるべき姿です。それが、最近は守りに入っていると感じていて。
 だから、社内には「バック・トゥ・ベンチャー」と訴えています。薄れつつあるベンチャー精神を取り戻す。俺たちはあくまでも大企業じゃねぇんだ、と。
 
【組織論】 自ら発想して自ら動け
――組織の硬直化は、企業規模に関係なく、経営者に共通する悩みです。
 組織は放っておくと腐るものです。楽天もそう。人間の集団ですから、どうしても封建的になったり官僚的になったりする。
 それをいかにぶち壊すか。多少は無理をしても新陳代謝しなくちゃいけないし、普段よりも重いバーベルを挙げる筋肉トレーニングのような刺激もしないといけない。
 時々はビックバンを起こして揺り動かす。そういう意味で、英語化は“新しい劇薬”でした。
 今後はジョブローテーション制度の導入を考えています。個人の視野が広がるし、ノウハウを社内で共有できる。そして、人が異動することによって、組織に壁を作らずに済む。
 個人の専門性で戦う欧米のインターネット企業は、ローテーションなんて絶対に考えないでしょう。でも、ビジネスの形がものすごいスピードで変わる今の時代に、私は人を型にはめ込むのは得策ではない気がしています。
――組織を作るうえで、どんな点に留意していますか。
 私を含めて全員が全員、完璧ではありません。ですから、お互いを補完し合うフォーメーションを意識しています。
 例えば「1+1」を「3」にできるような成長を実現する人は、そのリターンを得るためにどこかで必ずリスクを犯しています。ところが、何となくセンスで仕事を進めているケースが多いんです。だから、リスクを抑える人材をチームに入れておく。これで、成功の確率が高まります。
 一般に「あいつの欠点はここ」「出戻りだからダメ」というように、相手のマイナスポイントを見がちです。言い方は悪いですが、私はそれも織り込み済み。野球で田中将大投手にホームランを期待しないのと同じことです。
2月に開催された「楽天新春カンファレンス2012」札幌会場の懇親会で、出店者と話をする三木谷。参加者から記念撮影を頼まれることも珍しくない
――最近は指示待ち社員が多いと、多くの経営者が嘆いています。
 社員が会社から言われたことだけをやるのではなく、自ら発想して動くのがベストです。
■英語の次は「ジャバ語」だ
 それによって、思わぬ成果が出てくる。その1つがゴルフ場予約の「楽天GORA」です。時間がかかると私は内心思っていましたが、利用がガンガンに伸びている。
 自律的に動く組織の実現には、経営者が社員に“武器”を持たせる必要があります。英語化がそうですし、これからは社員にコーディング(プログラムを書く作業)を習得させるつもりです。私自身も勉強しますよ。「英語の次は何ですか?」とよく聞かれますが、それは「Java(ジャバ)語」です。
 自分でコーディングできれば、アイデアを形にするのに誰かに頼む手間が省けるので、すぐに動き出せます。楽天は、モチベーションいっぱいの集団でなくてはならないのです。
 
【成長論】 競合のまねはしない
――常に高い目標を掲げます。流通総額1兆円を達成した楽天市場の次の目標が10兆円と、一見すると途方もない数字ですね。
 10兆円は、経営者としての実感値です。消費者がネットでもっと買い物するようになる。指で操作できるタブレット端末が普及する、教育や医療などのネットサービスも一般的になっていく――。こうした環境変化を見据えると、10兆円は不可能ではありません。
 「月に行けるんじゃない。だって、見えてるじゃん」。これが私の経営スタイルです。
 そして、そのために何をすべきかを詰めていく。仮説を立て、やってみて、もし違っていたら修正する。これをものすごいスピードで実行し続けていることが成長の要因だと考えています。
 これからも攻めていきます。最近はカナダの電子書籍大手であるコボ(Kobo)を買収しましたが、このような経営判断をもっとダイナミックにやっていきます。
――これからの企業経営に必要な条件は何でしょうか。
 2つあります。まず、自分たちがゼロから考えて、それを成功するまでやり続けること。米アマゾン・ドット・コムはスーパーマーケットのように売り場の棚に品物を置くモデルです。これに対し、楽天市場は“とんがった”店舗がずらりと立ち並んでいます。
 競合をまねるのではなく、自分たちが「こんなサービスがあったら、世の中が元気になるだろう」という視点で作ったのが楽天市場です。だから社内には「競合、競合と言うな。顧客を見て仕事しよう」とメッセージを発しています。
■「おもしろい会社」にしたい
 もう1つは、何を大切にしているか、です。米グーグルが情報検閲に反発して中国から撤退しました。ビジネスの観点からは中国を手放すのは大きな損失ですが、それでもグーグルは自社の価値観を重んじた。この判断は、長期的にはプラスに働くでしょう。
 楽天の哲学は、優れた商品やサービスを持つ小店舗が大手に“食われない”世界を作り出すことです。この上に、楽天のビジネスモデルがあります。
 極端な話、自らの哲学に背くのであれば、成長のスピードを緩めても構わない。こんな信念で経営しているから、楽天は仲間が増えるんじゃないでしょうか。
 最終的にどうなりたいか? 自分でもよく分かりません(苦笑)。ただ、日本が衰退するという危機感を強く持っています。楽天ロールモデルになって、この国のあり方を変えていきたい。同時に、世界に日本の良さを伝えていく。「おもてなし」に代表される人と人との触れ合いを輸出していきたい。
 自分自身を信じて、楽天流でやれるところまでやります。目指すところは、関西弁で言えば、「おもろい会社にしようぜ」。こう思っています。
日経トップリーダー 戸田顕司)
日経トップリーダー2012年4月号の記事を基に再構成]