藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

ITの真骨頂。(2)

ビッグデータは、ポイントカードなど巨大に張り巡らせたネットの網で、浚ったデータの傾向を分析して、一定の性質を研究するようになってきた。

「ポテトチップスが好きな人はカロリーオフのビールを好む」などというように、本人もあまり気付いていない"傾向の大きなうねり"を分析するのだ。

これと同じことは、大きなデータ収集網がないと不可能だが、「自分一人」についてなら簡単である。
しかも、細かくやれる。
例えば自分のネットの閲覧記録を分析する。
するとニュースの中でも「政治がらみの閲覧」にPVが偏っている、とか
新製品を扱うクリック広告の閲覧が多い、などという自分の性向が分かって来るだろう。

さらに、ネットだけではなく、自分自身を記録・分析してはどうだろうか。
何時に起きたか。
何時に寝たか。
いつ、何を購入したか。
いつ、何を食べたか。
いつ、どんな仕事をしたか。
いつ、どこに移動したか。
いつ、どんな音楽を聞いたか。
いつ、どんな速度で歩いているか。
いつ、どんな感情が湧き上がってきたか。
いつ。どこを見ていたか。

そして究極の分析で「いつ、何を考えていたか」

ビッグデータは何も買い物の履歴やwebの閲覧履歴だけではない。
自分の中にも徹底的に記録する仕組みを作り、自分自身の思考を分析することも近い将来は可能になるだろう。
それによって、自分という人間のキャラクターや特性を、否応なく自分自身で知ることになる。
けれど、それは実は一番面白い参考資料になるのではないだろうか。
「自分のビックデータ」を早く見てみたいものである。

「明日のお客」つかめ 情報解析、隠れた需要を開拓
ビッグデータを競争力に(上)2013/3/30 7:00ニュースソース日本経済新聞 電子版

様々な店舗の売り場やツイッターなどのソーシャルメディアで日々発生し蓄積される膨大な情報。「ビッグデータ」と呼ばれるこれらのデータを短時間で解析し、需要を創造しようという企業の取り組みが活発になってきた。データ解析の専門家(データサイエンティスト)たちは数値以外のテキストや写真(=非構造化データ)を素早く解析する技術を活用、多様なデータ群を組み合わせて隠れた顧客の志向を導き出す。コンピューター処理能力の向上やネット普及も追い風に、ライバルより半歩先に“明日のお客”をつかみ競争力に変える最先端の動きを探った。

■「缶コーヒー」と「運転免許」…利用者も知らない嗜好
東京・渋谷の「SHIBUYA TSUTAYA」の店内

コンビニエンスストアレンタルビデオショップなど、さまざまな業種の店頭から集まるデータを活用し、商品販売などで成果を上げているのがカルチュアコンビニエンスクラブ(CCC、東京・渋谷)が展開する「Tカード」だ。

例えば、あるブランドの缶コーヒーの購入と、(ガソリンスタンド、駐車場、カー用品販売店、レンタカー会社などでTカードを使ったことから推定できる)普通自動車運転免許の所持には強い関係があるという規則性を発見した。条件に当てはまる会員に缶コーヒーの割引きクーポンを配布したところ、クーポンの利用率が通常の2倍になったという。

これ以外にも「TSUTAYAでアニメDVDを買った人と、年賀状DPEサービス利用者には強い関係がある」「あるスポーツブランドのユーザーと、特定の車に関するサービス利用者の関係が強い」など、いくつもの規則性を発見した。会員自身も認識していない嗜好(しこう)をデータ解析から導き出し、売り上げ向上につなげた例だ。これがTカード加盟企業の競争力の源泉になっている。

CCCがTカードの発行を始めたのは2003年だ。当初は参加企業が限られた共通ポイントカードだったが、現在はコンビニエンスストアレンタルビデオショップ、スーパーマーケット、ガソリンスタンドなど企業の系列や資本関係などを超えた96社が加盟し、カードを使える店舗は全国で5万を超える。

これら店舗では、商品の購入やサービスの利用などで料金を支払うときに、店員がTカードをレジのバーコードリーダーで読み取る。この時点で、会員が購入した商品名や利用したサービス名のほか、店舗の場所、時間などのデータが蓄積される。4400万人を超えたTカード会員が1カ月に生み出すデータ件数は、約1.9億にものぼるという。

■ニーズにマッチしたクーポンだけを発券
大容量データの解析から得た規則性を基に、ユーザーに具体的なアクションを導くのが、レジが自動的にクーポンを発行する「POSクーポン」だ。単独の企業が発行するクーポンと異なるのは、加盟している96社のデータを基に複数社のデータをクロス集計して、使われる可能性が高いクーポンだけを発行している点だ。

「使われないクーポンは出さない。求める人に、求められる情報(クーポン)を提供している」(Tポイントプログラムを運営するTポイント・ジャパンの長島弘明氏)。世の中に割引クーポンがあふれている今、数十円安くなるクーポンをやみくもにバラまいても使ってもらえない。ニーズに合致しているであろうクーポンを、その会員だけに的確に発券するのがポイントだ。
個人の嗜好に応じたクーポン付きレシート

加盟社からは「販促だけでなく、商品開発にもデータを活用したい」という声が高まっている。テストケースとして、コンビニエンスストアの女性客を対象に、購入した女性誌のジャンルとスイーツの相関性を解析した。その結果、10代〜20代前半の濃いメークを好む読者層が多い「ギャル系雑誌」を購入した会員は、スイーツの購入頻度が多く、生クリーム入りのこってりした商品を好むという規則性を見つけられた。

このルールを活用すると、例えば生クリームをたっぷり乗せたプリンの宣伝に、シブヤ109で売れているブランドを身にまとったモデルを起用する、広告出稿はギャル系雑誌に絞るなど、商品のマーケティング活動に一貫性を持たせられる。やみくもに広告宣伝費を投入する“ばらまき型”から、ポイントを絞ったマーケティングが可能になる。

■プライバシーを侵害しない解析を徹底

Tカードのデータ解析を担当するデータアナリストは現在約20人いる。96の加盟社を分担し、通常は担当企業のデータ解析に専念する。担当企業からの要請があれば、ほかの企業のデータベースと会員の利用実績を掛け合わせるという。

データ解析に携わる渡部隆弘氏(アライアンス・コンサルティング本部第3ユニット)は、「クロス集計時に最も苦心しているのは、企業間のデータ項目の差異だ」と話す。加盟している96社の業態はバラバラで、収集しているデータの項目も異なるからだ。企業同士のデータ項目がうまく合わず、思い通りにクロス集計ができないこともある。しかし「複数企業のデータを活用できるのが共通ポイントの強み。依頼された要件を満たす結果が出るまで試行錯誤を重ねる」(渡部氏)。こうしたデータアナリストの奮闘から、誰も見つけられなかったルールが掘り起こされ、蓄積されていく。

ただしビッグデータの活用には常にリスクもつきまとう。顕著な問題が個人情報の取り扱いだ。例えば会員の氏名と購買履歴をセットにして、会員の許可なくほかの加盟店と共有すれば、プライバシー侵害を引き起こしかねない。12年11月には市民団体が、Tカードの医薬品購入歴の収集停止を求めて経産省厚労省消費者庁などに要望を出した。

こうした指摘に対してCCCは「データアナリストがアクセスできる情報の範囲に厳しく制約をかけて運用している」と主張している。「アクセスできるのは『性別』『年齢』といった属性だけで、氏名などの個人を判別できる情報を扱う権限はない」(同社広報)。個人を特定できる情報を切り離し、あくまでマーケティングに有用な「属性情報」までにとどめ、加盟店間で共有しているという。

ビッグデータで重要視される「リアルタイム性」
Tカードの場合、ファミリーマートやTSUTAYAなどの加盟店舗で収集されたデータは毎日データベースに蓄積している。公表している会員数は、1年に1度は利用したアクティブな会員だけを数えた数値。古い情報を集め時間をかけて解析しても、企業の競争力を高めることはできない。「情報のフレッシュさが命」と長島氏は言い切る。

大量の数値データをデータベースに蓄積・分析して、次の戦略に役立つ情報を導く「データウエハウス」という概念は1970年代からあった。しかしコンピューターの処理能力などの問題から扱えるデータの範囲には限りがあって、解析に時間もかかっていた。

「単にボリュームの大きさだけを指して『ビッグデータ』と呼ぶのではない。Volume(データ量)、Variety(データの種類)、Velocity(データの発生・更新頻度)の『3V』がそろって初めて注目する価値がある」――。野村総合研究所の上級研究委員で書籍「ビッグデータの衝撃」の著者でもある城田真琴氏は、こう指摘する。これら「3V」の特性を備えたデータを処理する技術が大きく進化したことも、ビッグデータの活用を加速させた。さらに数値以外の非構造化データや膨大なデータを並列分散処理できる技術「Hadoop(ハドゥープ)」の普及や、この環境を低コストで利用できるクラウド環境が整備されたことが、ビッグデータから競争力を生もうとする企業の取り組みを後押ししている。

こうした潮流の中で、より重要視されつつあるのが「リアルタイム性」だ。そのデータの源となっているのは、東日本大震災で有用なサービスとして認知されたツイッターなどのソーシャルメディア。つぶやきとして発せられるユーザーの生の声を拾い、ほぼリアルタイムで解析し、短時間でその改善策までを導ければ、ライバルに先んじるための大きな武器となる。この市場に注目しているのは、企業だけではない。今夏の参院選から解禁されると目される「ネット選挙」でも、様々なサービスや技術が生まれつつある。
(電子報道部 富谷瑠美)