藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

国民の義務。

勤労、教育、納税は国民の三大義務。
小学校の社会科で最初に習う憲法の要諦だが、なかなかその真意を汲むのには努力がいるものである。
税金は福祉国家の維持構築には欠かせないもの。
だが、どうも色んな疑問が浮かぶのはそれが「国のシステムの問題だから」である。

自分のような一市民が国や行政や福祉のシステムの一端にケチをつけても始まらないが、しかし個別の税制を目の当たりにすると、あまりにその法律の細かさと、「その本来の主旨」については理解しにくいものも多い。
法治国家に暮らす身としては「まず納税ありき」なのが結論なのだが、企業経営と同様、国家の経営についてもしっかりとした方針と施策を打ち出して「喜んで納税する」というための教育がまだまだ足りないと思う。

それはともかく。
来年の相続税の改正をいよいよ目前にして、税務関連の話題が日々話題になっている。
税金の控除枠が「5000万円+1000万円×相続人数」、だったものがほぼその六割に縮小する。
今地価が上がり始めている大都市圏に家やマンションを持っている人が、課税対象になるケースが多く、これまで「相続税なんてお金持ちのこと」という常識が通じなくなりつつある。

本記事にもあるように、親から受け継ぐ自宅が「相続税を伴うものかそのまま住み続けられるのか」といったことを判断するのも相当複雑で、到底のうのうと過ごしていては、ある日「現金で納税して下さい」という場面に出くわす人もいるだろう。
多岐にわたり、またさらに複雑化する税制については、消費税も含めて日本中の知恵を集めて再設計する時期が到来しているのではないかと思う。

それにしても。

親しい税務関係の人に聞くと「日本では土地を三代続けて持ち続けるのは無理ですよ」とも聞く。
それを聞いた中国の友人は「一見そうとは見えないが、日本は高度な共産主義ですね」と笑う。

税金の「制度設計とその使い道」に納得性のある指針を作ることは、これからの日本には急務ではないだろうか。
国の財政が立ち行かなくなるまで先延ばしにするのは、経営者としては最悪の振る舞いである。

相続税を占う路線価 もう無関心ではいられない
「8割減特例」、あなたは当てはまるか

2014/6/29 7:00
日本経済新聞 電子版
国税庁は7月、相続税を算出する基準となる「路線価」を公表する。2015年からの相続税増税で都市部に自宅を持つ層で新たに税負担をする人が出る可能性がある。路線価で自宅の評価額を把握し、評価額を大幅に減らせる「小規模居住用宅地の評価減の特例」を利用できるかどうかチェックしてみよう。

東京都に住み、公的年金で暮らす香山義光さん(仮名、75)は最近「路線価」が気になる。15年からの相続税増税を控え、自分に万一の場合「相続税はかかるのか」を知っておきたいからだ。

香山さんは敷地約200平方メートル(約61坪)の自宅のほか預貯金が約3000万円ある。家族は妻、長男、次男。子どもは2人とも既婚で長男は持ち家があるが、次男はずっと借家住まいだ。香山さんが亡くなった場合、相続税がかかるか検証してみよう。

基礎控除4割縮小
相続財産全体の課税上の評価額が基礎控除(課税財産から差し引く分)を下回れば、税負担は生じない。上回れば支払う必要がある。基礎控除は年内までの相続なら「5000万円+法定相続人数×1000万円」だが、来年以降の相続分から「3000万円+法定相続人数×600万円」と4割縮小する。この式に当てはめると、香山家の基礎控除は年内なら8000万円だが、来年以降は4800万円と大幅に減少する。

地価が都市部を中心に上昇傾向にあるため、今年の路線価は前年より上昇する可能性がある。図Aの仮定に従って試算すると、香山さんの自宅の評価額は約7150万円。預貯金を含む相続財産額は1億円強と年内も来年以降も基礎控除を上回り、相続税がかかる。

ただ自宅は小規模居住用宅地の評価減の特例(評価減)が使えれば、240平方メートル(来年以降は330平方メートル)まで評価額を80%も減らすことができる。香山さんの場合は1430万円まで減らせるので、相続財産額は全体でも約4430万円と年内は基礎控除8000万円を大きく下回る。来年以降もかろうじて下回るため、課税されない可能性が大きい。

多くの個人にとって「評価減を使えるかどうかは相続税の課税の有無を左右する重要なポイントだ」と税理士の藤曲武美氏は強調する。

特例を使うには条件がある(図B)。(1)親(被相続人)の住んでいた土地である(2)土地を取得するのが一定の相続人(3)配偶者以外の相続人は相続税の申告期限までに実際に住むなどの要件を満たす――の3つだ。

これらの条件を順に全てクリアしないと評価減を受けられない。例えば親の土地で、同居の子どもが相続しても「その子どもが相続税の申告期限(相続から原則10カ月)以内に転居したり、売ったりしたら受けられない」(税理士法人、安心資産税会計の高橋安志税理士)。

■相続人の要件は複雑
特に「相続人の要件が複雑」と高橋氏は指摘する。親と同居していなかった子どもが相続する場合は、親の死亡前3年以内に自分や自分の配偶者が所有する家に住んだことがないことが必要だ。他家に嫁いだ娘の場合「ずっと借家住まいなら認められるが、夫の持ち家に3年以内に住んでいる場合は適用されない」(税理士の飯塚美幸氏)。

被相続人の配偶者が相続する場合、条件(3)は必要ない。同居していなくても構わないし申告期限まで貸していても、売った場合でも評価減できる。

ただ「妻が死亡したあとの二次相続は注意が必要」と高橋氏は話す。香山さんのケースでは相続人が子ども2人で、長男が相続する場合は持ち家があるため評価減はできない。持ち家のない次男が全部相続すれば評価減を受けられるが、長男が納得しない可能性がある。相続税はかからなくても兄弟が遺産分割を巡って争うのは親にとって本意ではないだろう。親の生存中に兄弟と遺産分割について話し合っておくのが選択肢だ。

税理士に最近問い合わせが多いのが、高齢の親が老人ホームに入居し、自宅に実際に住んでいなくても親の土地として認定されるのかどうか。相続直前に介護状態で、介護保険の要介護・要支援認定の書類などによって証明できれば親の土地とされ評価減の可能性がある。ただ、親が介護認定を経ずに急逝した場合は認められない場合がある。どうすれば評価減を受けられるのか税務署や税理士によく確認した方がいいだろう。(編集委員 後藤直久)

■2世帯住宅なら共有登記が有利
 埼玉県の会社員、前川良純さん(仮名、37)は親の土地に親子の2世帯住宅を建てる予定だ。玄関が世帯別になっているなど構造上区分された2世帯住宅だが、現在迷っているのが登記をどうするか。当初は自分の持ち分を明確にするため、区分登記する考えだった。
 しかし相続で小規模宅地の評価減を受けるには親子の共有登記が有利。親子の2世帯住宅は昨年まで評価減できない例が多かったが今年から認められる場合が増えた。区分登記では子どもは通常減額できない。共有なら全て評価減できる。「持ち分をはっきりさせるか、相続税対策をするか。どちらがいいのか」と前川さんは話している。

[日本経済新聞朝刊2014年6月25日付]