藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

数理工学。

よく「若い頃に戻れたら」という問いがあるけれど、もし戻れたなら「物理か生物のどちらか一テーマを究める」ということをやりたかった。
それも「今にして思うこと」だけれども。

抽象的な概念を探る純粋な数学に対して、数理工学は現実世界の諸問題の数学的な解決を目指します。

AIを始めとする脳の機能、ますます複雑系な国際経済、そして地震
一見解き明かすなんて到底不可能に見えるテーマへの挑戦。

しかも学問だけで完結せずに、一番リアルな我々の日常へと追究する。
そんな迫力のある学問に一度は身を置いてみたかった。
ので合原教授の研究は引き続き要注目だ。

脳・経済・地震 意外な共通点
日本経済新聞 

現実世界の諸問題を「数理工学」を使って解決したい
 東京大学の合原一幸教授は「数理工学」という武器を引っさげ、様々な要素が絡み合った複雑系と呼ばれる独特な学問分野に挑んでいる。

 ――数理工学とは何ですか。
 抽象的な概念を探る純粋な数学に対して、数理工学は現実世界の諸問題の数学的な解決を目指します。理論のプラットフォーム(足場)に基づいて、非常に広い応用範囲をカバーするという特徴があります。

 ――プラットフォームとはどんなものですか。
 複雑系における動的な変化の制御、要素間のネットワーク構造の最適化、ビッグデータを駆使した予測という3つの基礎理論で構成しています。最適化は電力システムの安定化に大切です。ビッグデータの解析は、最近とくに注目されていますね。

 ――どんな応用が考えられますか。
 例えば多数のバイオマーカー(体内指標物質)の変化をとらえて治療に生かすことです。私はそれをDNB(動的ネットワークバイオマーカー)と名付けました。これまでDNAを通じて生命に関する基礎的な理解が進みましたが、今後はDNBも重要になるでしょう。「Aの次はB」です。

 DNBを定期的に検査しておけば、病気になる前の「未病」の状態をつかめ、超早期の効果的な治療につながることが期待されます。もっとも漢方薬の研究者からは「漢方の世界では2000年前から知られていた」と言われましたが。

 ――横断的な知見もあるのですか。
 全然別の分野に見えますが、複雑系である脳と経済と地震には共通点があります。いずれも連続する時間の流れの中で、ある瞬間に事象が急に立ち上がります。これを「点過程」と言います。私たちのビッグデータ解析技術で研究しやすくなりました。

 脳の神経細胞は電気パルスを次々に点過程として生成し、情報を伝達します。為替相場などでは取引の成立が点過程に相当し、神経細胞のデータ解析手法が為替の解析に使えることが分かってきました。地震のデータもやはり点過程であり、高精度の余震予測が可能になっています。

 ――今後はどんな方面に研究の方向付けをしたいですか。
 生物の仕組みをもっと理解することが大切です。脳をまねた電子回路の研究はもともと日本のお家芸でしたが、今は欧米に抜かれてしまいました。うまく集積化すると、高密度かつ圧倒的な省エネが可能です。若い人たちを「軍師」として支えながら、こうした研究に取り組みたいですね。

(池辺豊)