藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

正解を決めるのは自分。


日経、風見鶏の選挙評というのも皮肉だけれど。

選挙は政治権力をめぐる戦いである。しかし今回ほど政策論争がかすみ、序盤からけんか腰の言い合いになるのも珍しい。

これとそっくりの光景を時に目の当たりにすることがある。
日常の仕事で「相手と何かをしようという気持ちのない人たち」の話し合いとそっくりである。

いい年をした社会人同士が喋っているのに、論点はおろか話の主旨すら疎通出来ていない。
しまいには相手の言葉尻を捉えたり、会話を遮って自分の言いたいことを投げつける。
聞いていて一番不毛な感情の湧き送る瞬間だ。

痴話喧嘩なら「どうぞお好きに」だが、まっとうな仕事の場での実話である。

自分は、「民主主義とか政党政治のあり方」が戦後、新たに問われているような気がしている。

信念とか哲学とか美学を語る政治家が少なくなり、状況次第で「陣取り合戦」をする戦国時代のような。
"反与党"なら誰とでも手を組む、というのはもうそんな「総力戦の泥仕合」に嵌っているのではないだろうか。

民進党の閣僚経験者は「共産党と組むなんて本当は論外。日米同盟や自衛隊憲法への考え方が全く違う」と憤る。

 いま永田町で自分の意見を堂々と言うのは、引退を表明した議員だけという感すらある。政治家が国の将来に関わる問題で本音を語らなくてどうするのか。これでは赤ちょうちんで上司の悪口を言うサラリーマンと大差ない。

自分たち一人一人が「決して無音ではない」ということを政治家に示唆ねばならない時代になっていると思う。

政治が退化していないか《風見鶏》
2016/7/3付
日本経済新聞 朝刊
 選挙で自らの党が負ける怖さを将棋に例えるベテラン議員がいた。「チェスは持ち駒を相手に取られるだけだが、将棋は一番困るときにそれを使われる。仲間が落選すると次の選挙で敵の応援が一気に増える」




 いざ選挙になると与野党幹部の顔色が変わるのは、こうした危機意識の表れだろう。今回の参院選の街頭演説で舌鋒(ぜっぽう)の鋭さがひときわ目立つのが安倍晋三首相だ。

 「野党は対案がないから批判ばかり。一昨日も批判、昨日も批判、おそらく今日も朝早くから夜遅くまで批判ばっかりだ」

 民進党共産党選挙協力を野合だとやり玉に挙げ「気をつけよう、甘い言葉と民進党」と付け足すこともある。民進党岡田克也代表が「総理大臣の言葉なのか。公党に対して失礼だ」とクギを刺しても、気にするそぶりはない。

 選挙は政治権力をめぐる戦いである。しかし今回ほど政策論争がかすみ、序盤からけんか腰の言い合いになるのも珍しい。

 最大の争点は3年半に及ぶアベノミクスが成功か失敗か。もう一つは3月に施行された安全保障関連法が合憲か違憲か。「自公」対「民共」の構図で見方が百八十度異なり、穏健な中道政治は消えたかのようだ。これでは議論がかみ合うはずがない。

 民進党の幹部は安倍政権の強権的な手法を言い立てる。「首相が争点にするのは前回の衆院選も今回の参院選も反対が少ない消費増税の延期。選挙が終わると別の本音が見えてくる」

 政府・与党は2013年夏の参院選後に特定秘密保護法、14年末の衆院選後に安保関連法を成立させた。岡田代表は「参院改憲勢力に3分の2を許せば必ず憲法改正をやってくる」と争点隠しを批判する。あながち杞憂(きゆう)とは言い切れない。

 その民進党もどの政策を旗印に有権者に支持を求めるのかが分かりにくい。旧民主党から使ってきたマニフェスト政権公約)の呼称を今回からやめ、政策の達成目標や財源を数字で示す形にはこだわらない。安倍政権のうちは環太平洋経済連携協定(TPP)も改憲論議も全部反対という空気が伝わってくる。

 本来、参院選で徹底討論すべきテーマは素通りだ。与野党とも消費増税は先送りし、社会保障の充実は急ぐという。旧民主、自民、公明の3党が苦労の末に合意した「社会保障と税の一体改革」は風前のともしびになっている。

 二大政党への歩みと何度かの政権交代を経て、日本の政治は果たして進歩したのか。欧米で吹き荒れるポピュリズム大衆迎合)の風が国内でも強まり始めたような嫌な予感がする。

 それにしても各党のベテラン議員はずいぶんおとなしくなったものだ。

 増税延期に反対だった自民党幹部は「物言えば唇寒しだ。増税延期が決まった日の夜はやけ酒を飲んで寝た」と語る。民進党の閣僚経験者は「共産党と組むなんて本当は論外。日米同盟や自衛隊憲法への考え方が全く違う」と憤る。

 いま永田町で自分の意見を堂々と言うのは、引退を表明した議員だけという感すらある。政治家が国の将来に関わる問題で本音を語らなくてどうするのか。これでは赤ちょうちんで上司の悪口を言うサラリーマンと大差ない。

 各党の公約集を読んでも日本の活力をいかに取り戻し、将来不安を解消するのかは書かれていない。支持政党が決まらない人は少しでも信頼できそうな候補者を見極めるしかない。投票日まで1週間、目を凝らす時間はまだある。

編集委員 坂本英二)