藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

ブレイクスルーは案外近くに。

日経より。
法政大の渡部教授のすごい分析に驚いた。

 株式会社、中央銀行、英語は、英国に起源を発する巧妙な制度である。いずれも「足して2で割る合わせ技」で複数の目的を達成している。

詳しくは記事にあるけれど、「所有者と運営者」とか「出資者と運用者」とか。
さらには英語は、ゲルマンとラテン語の「合わせ技」なのだという。

つまりは「一党支配」ではなく、なんでも中庸をとる、ということが大事なのだとすれば、我われ日本時は得意分野なのかもしれない。

アメリカやEU保護主義的に向かう報道が多いけれど、「今さら保護主義なの?」と感じている若い世代も多いはず。

今の世界的な「保護主義的トレンド」が次には一斉に「超国際視点」に変わる日がくるような気がする。

何事も本当に浸透するには少し時間がかかるもの。
むしろこれまで2000年ほど縛られてきた「国」の概念をいつ自分たちはブレイクスルーできるのだろうか。
そんなところに興味が向いている。

「足して2で割る」英国の試練
株式会社、中央銀行、英語は、英国に起源を発する巧妙な制度である。いずれも「足して2で割る合わせ技」で複数の目的を達成している。

 株式会社は、ひとつの法人の上に株主の所有権と取締役(経営者)の支配権という2つの権利を認知した。英国には土地信託の伝統があり、委託者(地主)の権利を擁護する衡平法の法理を生んだ。これが1844年共同出資会社法会社法の起源)に受け継がれ、取締役の信認義務や株主権擁護という概念に発展した。もともと株主と経営者双方の権利を認知するのだから「会社は誰のものか」という問題設定自体が的外れかもしれない。

 次が中央銀行。1694年創設のイングランド銀行は、官民合同の貨幣管理の先駆けであった。同行は共同出資会社として設立され、民間の出資者が取締役として企業統治を担った。イングランド銀行の負債である銀行券(ポンド紙幣)に国王が裏書保証し、その見返りとして同行が国債に投資した。それによって政府(王権)の財政資金需要と民間(商人)の取引決済ニーズを両立させた。官民が貨幣発行利益(seigniorage)を共有したのである。

 グローバル言語としての英語も、ゲルマン語とラテン語の合わせ技である。金融業の重要概念である「受託者」にはtrusteeとfiduciaryの2つの英語があるが、前者はゲルマン語源、後者はラテン語源である。

 こうした巧みな制度を生み出した英国が、欧州連合(EU)離脱を機に移民制限、司法権の奪回、単一市場の利点確保という複数目的の達成を模索する。従来強硬な交渉姿勢を示していたメイ首相も、3月末の離脱通知書の中では独断的表現を避け、妥協の余地を残した。

 ともあれ英国のEU離脱は政治主権と自由経済の両立が現代国家の課題であることを体現している。

(法政大学教授 渡部亮)