藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

製造業だけでなく。

ヒーロー不在などという。
20世紀は確かに自動車だった。

しかし、スマートフォンスマホ)でコミュニケーションの自由を手にした21世紀の若者たちにとって、車はもはやあこがれの対象ではなくなった。

ポスト自動車は何か。
いつの時代も「次はこれだ」というのは見えにくいものだが、「次はSNS」という感じもしない。

IoTや AIが跋扈して、あらゆる人の仕事はどんどんなくなる。
ドローンのような車が空中に溢れる。
けれども人の暮らしはよくなっている…

「貧困は争いの元凶」とよく言われるが、本当にみんなが豊かになったら「本当の平和」とか幸福とかについてようやく真っ当に考えられるのではないだろうか。
そんな文脈では、今まで誰も経験していない歴史の延長に自分たちはいるわけだ。
過去に正解を探そうとしても「ぴったりなもの」はなさそうだ。
「あこがれは世界平和」の時代が作れるだろうか。

クルマ産業はどこへ 製造業かサービス業か

 6月4日、1万人近く集まった福井県でのラリー大会。スポーツ車「86」のハンドルを握るトヨタ自動車豊田章男社長(61)の姿があった。車を操る楽しみを訴え続け、社長就任直後にスポーツカーを復活。第1弾の「86」の販売は今も月平均で計画を15%上回る。

ユーザーへのアプローチはトヨタとGMで異なる(豊田章男トヨタ社長)

 だが表情は厳しい。2期連続の減収減益を見込む。業績だけではない。「過去の成功体験は捨てろ」。焦りの背景にはシェアリングサービスの台頭など産業の激変がある。

 モータリゼーションに沸いた20世紀。高性能の車を低コストで大量生産する「ものづくり」の覇者が市場を制し、その頂点にトヨタは上り詰めた。

 しかし、スマートフォンスマホ)でコミュニケーションの自由を手にした21世紀の若者たちにとって、車はもはやあこがれの対象ではなくなった。安く簡単に移動できるなら自分で車を持つ必要がないと考える人々がカーシェアリングに着目、今や1日に世界で300万人以上が利用。自動運転車の普及も加わり「2030年には車の保有台数が半減する」(デロイトトーマツ)。所有を前提としたビジネスモデルが崩壊する「断絶」が車業界を襲う。

 「登山の途中で別の山にジャンプして谷に落ちても登る勇気がいる」。豊田社長には米シリコンバレーに設けた「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)の責任者ギル・プラット氏(55)から昼夜を問わずメッセージが届く。米グーグルも引き抜きにかかった同氏は人工知能(AI)の第一人者。彼を慕いグーグル元幹部や大学教授など計画を3割上回る190人の精鋭が集う。

 5年で10億ドルをTRIに託し、自動運転やシェアリングなどを攻める。

 トヨタに敗れ、リーマン・ショックで破綻した米ゼネラル・モーターズ(GM)。「販売台数を追う従来の面的拡大はやめる。車利用のサービスを広げる」。父親もGMに勤め、18歳から同社に在籍するメアリー・バーラ会長(55)は、加工職人として車づくりでライバルと競いあった父の時代の経営と決別する。

 目指すのは移動サービスの提供者だ。

 欧州子会社「オペル」は売却した。5月にはロシアなどに次いでインドからの撤退を決めた。ピックアップトラックなど汎用車は製造受託メーカーに任せ、ものづくりからも身を引き始めた。

 自前で工場投資する負担を軽減、そこで浮く資金をライドシェア大手の米リフトなどの買収にあてる。昨年、独自ブランド「メイブン」を新設。スマホで予約、1時間6ドルから使える手軽さから利用者は4万人を超えた。運送業者向けにも1週間レンタルを開始するなど移動サービスのメニューを競う。

 製造業の衣を捨てサービス業への転換を急ぐGM。エコカーで業界をけん引したトヨタは「ものづくり」の経験とAIを自動運転車に生かし、年間125万人の交通事故の犠牲者ゼロに向けてもがく。ユーザーはどちらにつくのだろうか。

 技術革新に伴う断絶への挑戦は経営者たちの未来の読みあいだ。勝ち残るためどう競争力を磨くか、その動きを追った。