欧州の友人と話していたら「認知症」に対する印象が根本的に違うことに驚いた。
どうも彼らは認知症を「脳の衰え」と捉え、寿命を全うさせることを尊重するらしい。
最新医療で「徹底的に立ち向かう」日本のスタンスとはえらい違いである。
日常生活の継続を徹底的に尊重し、「医療措置による延命」は最後の手段と考える。
日本には「姥捨山」伝説もありながら、どこか医療保険や介護保険制度が幅を利かせすぎたのだろう。
独居の高齢者割合がが世界一になり、さらにこれからも激増する中で解決策をどの方向に見いだすか。
自分は答えは「コミュニティ」にしかない、と思っている。
高齢者を「看取ったらいくら」。
運動をしてもらって「機能改善ができたらいくら」。
病院と介護施設が「情報交換を密にしたらいくら」。
といった今の「高齢者への施策」は早晩、抜本的に考え直す必要に迫られるだろう。
その時に、これから激増する高齢者自身が「介護保険の締め付けだ」「弱者切り捨てだ」と自ら騒がない覚悟がぜひに必要だ。
年寄りはその年の取り方に責任を持つ必要があると強く思う。
秋田で「コグニサイズ」 頭と体を使い認知症予防 (とうほく地方創生 気になる現場)
雪深い秋田県では冬に運動するのを面倒に感じる人が多い。こうした高齢者に運動習慣を身につけてもらいつつ、認知症予防も狙うのが、秋田大学が2016年度から普及啓発活動を展開している「コグニサイズ」だ。秋田県東成瀬村、男鹿市に続き、18年10月からは秋田市の北に位置する潟上市で始まり、県内で浸透しつつある。
14日の昼下がり。「50」「47」「44」「41」……。「18」「15、あれ?」。潟上市に10月に完成したばかりの防災・健康拠点施設「トレイクかたがみ」に笑い声が響き渡った。
5人1組で踏み台を昇降しながら、順番に50から3ずつ引き算して数えていく。最後は「2」で終わるのが正解だが、足を動かすことに気を取られるうちに、思わず3の倍数を声に出す人も多い。これがコグニサイズだ。市内に住む矢部節子さん(71)は「運動不足を感じていたので参加した。教室が終わった後は爽快です」と笑顔で話す。
英語のコグニション(認知)とエクササイズ(運動)を組み合わせた造語で、計算やしりとりなどの認知課題と運動を同時に行い、認知症予防に役立てる。国立長寿医療研究センター(愛知県大府市)が開発した手法だ。
運動と組み合わせる認知課題は、引き算以外も多彩だ。例えば、踏み台を昇降しながら、野菜や果物の名前を順番に言ったり、黄色い物や赤い物を次々に挙げたりする。楽しみながら取り組み、体を動かすことと認知症予防の効果を引き出す。
潟上市は10月から19年2月まで週1回の無料プログラムを提供。市の広報誌を見て応募した65歳以上の20人が参加している。1回のプログラムは90分間で、ストレッチ、筋トレ、踏み台有酸素運動、コグニサイズ、クールダウンの順番にこなす。ゆっくりだが、汗が噴き出るほどだ。
厚生労働省の12年時点の推計によると、65歳以上の認知症の人は462万人。25年には730万人に増加し、65歳以上の5人に1人が発症するとされる。
認知症を発症する前段階の軽度認知障害(MCI)の人(12年時点)は約400万人に上る。脳内の海馬の萎縮を少しでも抑え、「認知症予備軍」が認知症になるのを抑えようとするのが、コグニサイズだ。
秋田大は文部科学省の地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+事業)の予算を使い、16年度に東成瀬村、17年度に男鹿市でコグニサイズ教室を開いた。教室の開始前と終了後に東成瀬村の7人、男鹿市の12人の体力や記憶力を調べると、立ち座りテストや単語の記憶で改善がみられたという。
講師を務める同大大学院の久米裕助教(35)は「コグニサイズが開発された愛知県と異なり、雪の多い秋田県では教室の開催頻度を多くすることはできない」と指摘。週1回で成果が出る枠組みなど、秋田で展開しやすいプログラムづくりを模索している。
(秋田支局長 早川淳)