藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

音声の時代

*[ウェブ進化論]ビジュアルだけでなく。
今さら高級品のラジオCMが増えているという。
さてその心は。
人が知覚する情報の八割は「目から」のものだという。

 けれども「全てが目から」という状態になると新鮮味がなくなるらしい。

そりゃ毎日これほどの画像情報を見ていれば「目が飽食」になるのは当然だ。
 
そうなると他の「五感」が活躍する。
触覚とか聴覚とかだ。
目で見たものの情報量は確かに圧倒的だが、だからこそ「それ以上の想像」が働きにくい。
聴覚はその点、全くイメージの世界でもある。
もう目からの情報にはゲップが出るようなビジュアルの氾濫に「耳からの想像」はちょっとした「新たなる挑戦」のようだ。
「音」とか「匂い」とか「感触」とか「熱」とか。
そんな人の眼以外の五感が、いよいよこれから研ぎ澄まされる時代に入るのかもしれない。
どんどん人の感覚もバランスに向かっているのではないだろうか。
 
ラジオCM復活 グッチ、カルティエも特番(日経MJ
 
2019年9月15日 4:30
 

NIKKEI MJ

おはようございます! 今日も「日経MJ」よりお送りいたします。本日のテーマはラジオ広告。動画全盛の今、再注目されているんです。あのハイブランドがわざわざラジオで特番を放送したりCMを流したり。なんと若い世代のファンをがっつりつかんでるって言うんです。見えないからこそ魅せられる。広告主やリスナーからどしどし届いたその効果、早速聞いてみましょう!
 
■音で膨らむ世界観
 
マクラーレン、プレゼンツ……」
 
7月、TOKYO FMで放送された特別番組。スポンサーは英マクラーレン・オートモーティブの日本支社だ。これまでテレビはおろか、インターネットにもあまり広告を出してこなかった同社。なぜ今ラジオに広告を出稿したのか。

 
オンエア前にリハーサルをする「TOKYO FM」のパーソナリティー(東京都千代田区)
「ストーリーを伝えるのにビジュアルは無い方がいい」。そう話すのはマクラーレン・オートモーティブ日本支社の正本嘉宏社長。2011年から世界で乗用車の販売を始めたが、国内では「F1で常連の高級車」というイメージが根強い。
 
そこで目をつけたのがラジオ。スーパーカーは見た目のインパクトが強く、映像や画像を見せてしまうと「『高そうだしどうせ私には関係ないや』と切り捨てられちゃう」(正本社長)。映像がないラジオだからこそ、商品の世界観を十分に伝えられると判断。番組枠を買い取り、特番を放送することにした。
 
音の利点も大きい。「ドアを開け閉めする音、エンジンの音……。音は想像をかきたてるんです」と普段からラジオを聴くという正本社長。「車はラジオと相性が良い」と断言する。
 
この日の放送では、6月発売のニューモデル「マクラーレンGT」の魅力をPR。東京の街を運転するイメージを存分に伝えた。今後もラジオへの広告出稿を前向きに考えていくという。
 
テレビやネットに押され、存在感が薄れたラジオ。広告出稿量も減少の一途をたどってきた。だが今、ハイブランドによるラジオへの広告出稿が増えている。
 
6月にはイタリアのグッチがTOKYO FMで特別番組を、昨年9月にはフランスのカルティエJ-WAVEの番組内で特別コーナーを放送。スイス高級時計のタグ・ホイヤーも昨年4月、銀座に開いた「タグ・ホイヤー 銀座 ブティック」のPRを兼ねJ-WAVEでCMを流した。
 
「ここ1、2年、高級時計メーカーからの番組提供が増えている」。J-WAVEの塩田真人営業促進部長は指摘する。高級時計ブランドは群雄割拠。時計への興味が低い層を新たに取り込もうと、商品の強みを十分に語れるラジオを再評価しているという。広告単価が割高なテレビよりもコストパフォーマンスが高いというわけだ。
 
別の理由もありそうだ。「雑誌の部数減少が関わっているようだ」(ラジオ局関係者)。これまで高級ブランドの重要な広告出稿先だった雑誌が、昨今の紙離れで休刊・廃刊になる例が増加。広告の出し先が減り、その代わりとしてラジオが選ばれるようになったと分析する。

 
3月のイベントにはライブビューイングも含め2万2000人が集まった
「お弁当に~?」「Good!」。3月、日本武道館で開かれた番組のイベントでは、満場のファンがニチレイ商品のキャッチコピーを合唱。会場は熱気に包まれた。
 
ニチレイは同番組のスポンサーを務めて6年目。短期的なCMの効果に疑問を抱き、長く続けられることを前提に出稿先を選別。「各媒体の中でもラジオを特に重要視している」(同社の森本浩司さん)
 
今では東北地方や名古屋のラジオ局でもCMを出稿する。インターンシップで大学生からラジオCMに関する質問が飛んだことも。「ニチレイといえばラジオ、ラジオといえばニチレイと言われたい」とぞっこんだ。
 
スポンサーにもファンが生まれるのは、コンテンツとして聞き飛ばされにくい側面もありそうだ。出演者が広告を読み上げるケースも多く、テレビCMのようにスキップしづらいという。
 
ラジオ放送のネット配信アプリ「radiko(ラジコ)」の調査によると、ラジオ広告の完全聴取率は98%に達する。「テレビCMやインターネット広告より圧倒的に高い」(ラジオ関係者)
 
 
スマホ普及で若者のラジオ聴取増える
 
電通によると2018年のラジオ広告は1278億円と20年前から41%減ったが、足元ではほぼ横ばい。むしろ都心部に限れば復活している。TOKYO FMでは19年4~6月期の番組提供、スポットCM収入がそれぞれ前年同期比4%増、21%増。J-WAVEでも18年度はそれぞれ前年度より2%以上増えた。
 

広告復活の背景には、若い世代でラジオ聴取者が増えていることにある。きっかけの1つは10年に運用が始まったラジオ放送配信アプリ「radiko(ラジコ)」。スマートフォンの普及で、今やラジオは「1人1台」状態に。現在は全国95局が参加し、後追い聴取も可能。有料サービスに加入すれば日本中の放送が聴ける。
 
ネット動画やSNS(交流サイト)の利用に疲れた若年層にとって、耳の「隙間時間」を埋める身近なメディアに変身してきた。ラジコの調査によると、10~20代の利用者は全ユーザーの15%近くに及ぶ。
 
総務省の調査では10、20代で平日にラジオ聴取する人の割合は17年に1.4%、3%と依然低いが、この5年でそれぞれ1ポイント、0.8ポイント上昇した。テレビ視聴がリアルタイム、録画ともに下落しているのとは対照的だ。
 
(田村峻久)