藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

食欲の犯人。

*[食]おいしいの科学は快楽。
日経より、興味の尽きない食の話。
龍谷大学の伏木教授によると美味しさは四つに分類できるという。
1つ目は、生命を維持するために必要なものを食べたとき。(先天的)
2つ目は食べ慣れているもの。(生命の維持)

3つ目はもう少し人間的で、情報が関係している。(中略)『このワインは高級だからおいしい』と学習し、実際に飲んでこういう味がおいしいと覚える」

 そして。

一番面白いのは4つ目だ。世の中には誰が食べてもおいしいと感じるものがある。(中略)
じつはよく見ると、砂糖と油、そしてアミノ酸核酸が舌に与える感覚であるうま味のどれかがふんだんに入っている。この3要素が入っていれば、誰でもおいしいと言わせることができる」(中略) 
とどめは。
「糖分も1つ目のおいしさのもとにもなるが、それは適度な量であったときのおいしさであり、おなかがいっぱいになったら必要なくなる。これに対し4つ目は味が非常に濃い点が特徴。『こんなにおいしいものがあるのか』と感じてどんどん欲しくなる」
4つ目はたとえ太ったとしても食べたくなる。快楽を求めて食べているのだ」

 じつはよく見ると、砂糖と油、そしてアミノ酸核酸が舌に与える感覚であるうま味』そうだ。

自分たちはこいつに振り回されているのだ。

まあ世の中「おいしいもの」に興味のない人は少ない。

それが実は生きるためではなく「快楽」と言われてしまえば、あまり食べ歩くのも気がひける。 

 

それにしても記事冒頭にある「人は何を食べても"瞬時に"うまいか不味いかを見分ける、というのも不思議だと思いませんか。

本当に瞬時に分かるもんねぇ。

「おいしい」とは? 人間の食、生物として想定外 編集委員 吉田忠

 
極上のメニューで顧客をうならせるシェフも、絶品の農産物をつくる生産者も、ともに追求しているのはおいしさだ。それぞれが腕とセンスを磨き、競い合っているが、そこに共通する要素はないのか。おいしさの正体とは何か。うま味を研究する龍谷大学の伏木亨教授にインタビューした。
 
――おいしさとは何なのでしょう。
 
「人間はたくさんの種類のものを食べているにもかかわらず、口にした瞬間においしいか、そうでないかを判断することができる。そこでおいしさについて研究するにあたり、まず我々はおいしさに関してシンプルな原理を持っているはずだと考えた。そうでなければ瞬時には判断できないからだ」
 
「一方で、何をおいしいと思うかは人によって差がある。『蓼(たで)食う虫も好き好き』という言い方があるように、おいしさは個人的なものでもある。おいしさは食べものの中に存在しているのではなく、人と食べ物の関係の中に存在する。こうした観点から探求した結果、何をおいしいと感じるかについて4つに絞り込むことができた」
 

 
現代人はかつてない豊かな食生活を享受している
「1つ目は、生命を維持するために必要なものを食べたときにおいしいと感じる。最も基本的で、必然的なものだ。微生物も動物も人間も自分にとって必要な食べ物に向かっていく性質がある。2つ目は食べ慣れているもの。生活の体験にもとづく違和感の無さと言ってもいい。この2つが基本だ」
 
――1つ目との関連で、ノンカロリーの飲料や食べ物はどうなりますか。
 
「ネズミに砂糖水を3日間飲ませ続けると、4日目には『もっと欲しい』という反応が起きる。だがカロリーがない人工甘味料だとまったく執着が起きない」
 
「人間ももしノンカロリーのものばかりを食べ続ければ、いずれ嫌になるだろう。ところが人間の食生活はもっと複雑だ。例えば人工甘味料の入った飲料と一緒にハンバーガーを食べると、カロリーがどこから来たのかわからなくなる。だからカロリーのないものも喜んで摂取することになる」
 
――残りの2つは。
 
「3つ目はもう少し人間的で、情報が関係している。子供のころ、なぜあれがおいしいのかと疑問に思っていたものでも、大人になると好きになっているものがある。例えばグルメ雑誌の『この食べ物は秀逸』といった記事が影響する。『このワインは高級だからおいしい』と学習し、実際に飲んでこういう味がおいしいと覚える」
 

 
国内外の様々な食材を楽しむことも可能
「一番面白いのは4つ目だ。世の中には誰が食べてもおいしいと感じるものがある。チョコレートやケーキ、ステーキ、おでんなどで、B級グルメと呼ばれるものも多く含まれる。でもチョコレートとおでんは何が共通なのか。じつはよく見ると、砂糖と油、そしてアミノ酸核酸が舌に与える感覚であるうま味のどれかがふんだんに入っている。この3要素が入っていれば、誰でもおいしいと言わせることができる」
 
――4つ目の3要素は、生命を維持するために必要なものと同じではないですか。
 
「糖分も1つ目のおいしさのもとにもなるが、それは適度な量であったときのおいしさであり、おなかがいっぱいになったら必要なくなる。これに対し4つ目は味が非常に濃い点が特徴。『こんなにおいしいものがあるのか』と感じてどんどん欲しくなる」
 
「1つ目のおいしさは先天的なもので、2つ目は安心につながり、3つ目は社会的なものだ。4つ目はたとえ太ったとしても食べたくなる。快楽を求めて食べているのだ」
 

 
現代の人間の食生活は動物の常識から外れている
「日本は明治時代より前は油はほとんど取らず、砂糖も高価だった。これに対し現代は4つ目のおいしさを追求している時代と言っていい。動物の多くは飢餓すれすれの状態で生きていて、エサが十分にあれば本来、生殖行動を起こして子孫を増やす。ところが人は今、そうなっていない。食べ物があふれかえって4番目のおいしさがせり出し、動物として非常にまれな行動をとるようになっている。生物的には想定外の事態だろう」
 
――食べることは生命をつなぐための行動であるはずなのに、いまや本来の意義に反して、健康を害しかねないレベルでおいしさを追求しているわけですね。どう対処すべきでしょう。
 
「ブレーキをかけることができるのは、栄養学と医療だ。『食べ過ぎるとよくないですよ』『生活習慣病に注意してください』などと訴え、理性の力で抑制する」
 
「もう1つは、3つの要素のうちうま味に比重を置くことだ。日本の食事で言えば、ダシ。油と砂糖、ダシの3つとも快感を生じさせるが、満ち足りるおいしさに必要なのはそのうち2つほど。ダシは香りが重要でカロリーがほとんどなく、油や砂糖を過剰に摂取するのと比べると不健康ではない。ダシのうま味で満足できるようになるのが向かうべき道だと思う」

吉田忠則(よしだ・ただのり)
農政から先進農家、スマート農業、植物工場、さらにカリスマシェフや外食チェーンなど「食と農」に関するテーマを幅広く取材してきた。著書に「見えざる隣人」「農は甦る」「コメをやめる勇気」「農業崩壊」。中国の駐在経験も。Twitter@nikkei_yoshida