藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

やりたいことをやる時代

*[次の世代に]戦後75年。
日経産業より。
愛知県のローカル地域が地域振興で盛り上がっているという。
その名も旧幡豆(はず)郡をもじって「夢のハズフォルニア」とふるっている。
我々は地域活性化という言葉を気軽に使う。地元民からすると、これに違和感があるという。主語が違うというのだ。
その通りだ。
地域活性化というのは「中央」から見た表現だ。
同様に「女性活躍社会」とか「社会的弱者」とか「高齢者の活躍」とか。
みんな逆サイドからの表現だから、いまひとつうまくいかない。
「年齢関係なく、自由に楽しいことをやればいい。」そんな当たり前のことができる環境が、実はとても少ない。
老若男女、全ての人にとって。
そんな「本来当たり前の生き方」がようやく見直され、これからのスタンダードになっていくのだとしたら新しい。
敗戦、戦後、高度成長、失われた平成、を超えてようやく日本人がたどり着く"成熟"なのではと期待する。
GDPの伸び率がどうの、という話よりは「楽しくやろう」という言葉はなんと受け入れやすいことか。
 
ようやく時代の価値観が変わりつつあることを感じています。
 
 
夢のハズフォルニア
ハズフォルニアをご存じだろうか。カリフォルニアではない。ハズフォルニアだ。愛知県西尾市の寺部海水浴場「旧幡豆(はず)郡」のこと。地元の一部の人たちが、この地域を盛り上げようと幡豆からもじってつけた名前と聞く。

 
1985年上智大文卒。マーサ-ジャパン社長、カルチュア・コンビニエンス・クラブ最高執行責任者(COO)などを経て、2010年インディゴブルー社長、15年から会長。
 
我々は地域活性化という言葉を気軽に使う。地元民からすると、これに違和感があるという。主語が違うというのだ。確かに、その地域に住んでいる人間の言葉ではない。なんらかの企画を実行して地域に人を呼び、お金を落としてもらう仕掛け人が使う言葉だ。地域の話はあくまでも地元の人たちが主体であるべきだ。地元の人たちが、自分たちが楽しくなることを自由にやる。その魅力に外の人が引き寄せられる。この流れでないと続かない。
 
女性の活性化、多様化の推進。こうした言葉をよく目にするが、いずれも地域活性化と同じ使われ方だ。その言葉を使っているのは当事者ではない。仕掛け人や施政者だ。当事者が自由に楽しいことをやれる環境を整えること、その成果を世の中に知らしめること。それが地元外からの正しい影響力の行使の仕方だ。
 
ハズフォルニア運動の中心人物の鈴木達朗さん、松澤聡さんはともにアラサーの若者だ。高校卒業後、海外放浪の修行に出てハズフォルニアにたどり着いた。古民家を改造して民泊施設にしたり、海の家を開設したり、コミュニティーFMとコラボして番組を放送したりしている。そこに集客という目線はなく、あるのは自分たちが楽しいこと。彼らの話を聞くと、その様子を見に行きたくなる。
 
なんでもそうだ。いわゆる営業トークに遭遇すると一気に冷めてしまう。買うか買わないかは、合理的な判断に委ねることになる。商品・サービスの提供者の楽しさに触れると違う。その楽しさに共感した買い手の感情が動く。買うことの合理性はその後だ。
 
自由に楽しいことをやるのは若い人がいてこそだ。多くの地域から若者が流出している現状では夢物語と否定されそうだが、私はそうは思わない。年齢関係なく、自由に楽しいことをやればいい。ただ、年齢を重ねていくと社会規範という見えない鎖につながれがちだ。そうではない。鎖などない。仲間をみつけて自分のできることをして、自分の居場所をより楽しくする。その感覚でいいのだ。
 
ハズフォルニアのインスタグラムは地区の組合長(57)が趣味で写真を撮ってアップしている。楽しんでやってくれてるので続いているという。かくいう私も58歳。新しいことをやるのに年齢は関係ない。
 
今年のハズフォルニアの海の家は4月中旬のオープンと聞く。自分の地域を盛り上げたい方、はたまた大企業の中で停滞している方におすすめだ。手ぶらで出かけて海辺に座り、ハズフォルニアの空気を堪能してみてはどうか。
 
日経産業新聞2020年3月13日付]