藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています


ページめくり。


電子書籍が身近な話になってきて、ますます最近「本とデジタル」ということが気になるようになってきた。
連休中に集中的に本を読んでいたのだが、どうも気になることがいくつか。


がっつり読書するぞというとき、自分は書見台を使う。

EDISON ほんたった黒(ハードケース入り)

EDISON ほんたった黒(ハードケース入り)

i-Padの対極にあるアナログツール、といった感じだけどなかなか便利。
食事をしたり、酒を飲んだり、ニュースや音楽を聞いたりしながらということも多い。


すると、読書の「線」が「途切れる時」が気になる。
食事でツマミに箸を伸ばしたり、酒を注いだりせねば、その「線」は途切れないのだが。
それはともかく。


じーっとテキストを追っている。
難しい部分だと何行か戻ったり、数十ページ手前を読み返したりすることも多い。
だがそれ以上に、最も「読書の線」が途切れるのはいつでしょうか。(いきなりクイズ)
















それは改ページの時。
当たり前っちゃー当たり前、と仰るだろうけど、それは本が「本の態」を成しているから。
(印刷物を重ねて、後ろを接着剤で閉じて、表紙と裏表紙が付いている。)
だれもそれに苦情を言う人はいない。

けど、読者の本願は「改ページがないこと」ではないか。

改ページの負担とか


オーケストラなんかだと、譜面を見ている弦楽器とか管楽器の奏者が、自分のパートがお休みの時とか、あるいはちょっとした息継ぎの間に「パラリ」と譜面をめくる。
厄介なのはピアノで、譜面を見ながらの連弾とかだとわざわざ「譜めくりスト」みたいな人が横に座っていて、そのページの終わりに来たらサッと中腰になり「パラリ」とやっている。
その昔「自動譜めくり機」なるものを真剣に考案したこともあったが、その後三十年余経っても実現していないところをみると、どうも必要ないのだろうか。(あ、譜面が電子化される方が早いでしょうね、もはや)


話が逸れた。
で、「理想の読書」というのがあるなら、たぶん「改ページのない本」ではないか、と思ったのだ。
以前「視線を外さずに酒を飲む道具」を提案したことがあったけど、それよりも重要かも。

改ページの実際


アナログの書見台、は両手が自由になるし、本を持つ手もダルくならないし、非常に快適なのだけど。
集中してずんずん読んでいると、自然に書見台にある「これから読む側」の十数ページ分くらいを片手で摘み、視線が「そのページの終わり」に達するや否や「シュバッ」とページを繰り、視線を斜め上に動かして再度読み始める。

およそ古来、本を読む限りにおいては人はそんなことをしてきたはずである。


i-Phoneユーザの間では、あのアナログライクな
「画面の上をスィとなぞれば、紙感覚で画面が切り替わる」というところが受けているという。
あれに効果的な「めくり音」をつけよう、という人もいると聞く。
それを聞いたときは、「やはり人間というのは本とかあの紙をめくる感触が好きなのだな」程度に思っていたのだが。


ん?

0.2秒の隠れたコスト。


某大手エレクトロニクスメーカの技術者だった人に聞いた話。
人は「視線の切り替え」に約0.2秒要するという。
これは目の筋肉の収縮の問題で、物理的に必要な時間だという。
そう。
読書には隠れた0.2秒があるのである。
つまり読者側から言うと、

(およそ読書というものは、「改ページ」をする度に)
0.2秒はどうしても思考が途切れるものなのである。

というとんでもないことに気がついた。
これってすごくないかしら。
たかが0.2秒と軽んずることなかれ。
一冊の本が大体220ページとすると。
220×0.2=44秒。
本を千冊読むなら4400秒、実に1.22時間のロス。(まあ計算すればですが)


で、重要なのはこれは「視線移動にかかる時間」なのでこれ以上は縮めようがない。
(「電子巻紙方式」にする、という手はある、が話題が分岐するので次回に。)


問題は「ページをめくる動作」のこと。
これで上記「視線移動のための0.2秒」は仕方ないとしても。

ページをめくって、「くるんと丸まった紙を延ばし、ピタッと反対側になでつける」

この「改ページ」という行為におそらくは0.5秒かけている。
いや緩慢に動作するなら1秒ほども我われは費やしている可能性がある。
で、一体私は何が言いたいのか。
来る電子書籍時代には、「アナログの模倣」である「紙感覚の改ページの感触」を追いかけるのではなく、「視線移動が最短になる」仕組みの採用を望みたいのである。

スピード・フィード。


改ページは英語でpage feedというらしい。

ならばhigh sppd page feeding 機能、などと銘打って、ぜひ実現してもらいたい。


具体的には既存技術で事足りるだろう。
デジカメなどですでに開発済みの「視線追跡センサー」を使い、「当該ぺージの『最後の活字』に視線が達するや否や」瞬時に画面が次ページに切り替わるのである。(ただそれだけ)

当然「電子栞」はあるだろうから、気になった言葉や部分はバンバンラインをひいたり、コピペできるし、その気ならそのままネットや辞書の検索も当たり前である。



連休中に最も気になったのがこのことなのであった。