藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

日本再編の気配。

2010年度の課税状況が国税庁から発表され、ひそかな話題になっている。
隠れた相続増税の話で、要は基礎控除も上がり、継続して住むなどの条件で大幅減額を受けられていた「各種特例」もばんばん"厳格化されている"という話である。
この影響が、昨年からじわりと効いてきているらしい。

ただ、それにしても。
消費税を1%あげても税収増は一兆円以下。
10%あげても十兆でしかない。
福祉・厚生の費用も上がるばかり。
高齢者もともかく、生活保護や失業手当に予算が食われていては、まさにジリ貧である。
ニュースでは「就職の決まらない大学生へ向けてのビジネス教育」をする派遣会社の姿が報道されている。

増収、節減、福祉をどれもコカせることなく、バランスを保って組み直すには、どうも一度ガラガラポンと、組み直す以外になさそうである。
組み直しに直面しての、仕事とか生活とかをもうそろそろ具体的に考えねばならない時期にきているだろう。

nikkei onlineより隠れた相続増税「影響じわり出始めた」の声
編集委員・田村正之2012/5/1 7:00ニュースソース日本経済新聞 電子版

4月25日、国税庁は2010年の相続税の課税状況を発表した。実は今回の発表は税理士たちの間で大きな関心を集めていた。「隠れた相続増税」ともいえるような課税ルールの改正が、この10年4月から始まっていたからだ。影響はどうだったのか。

「『隠れた相続増税』って何?」
「遺産額の評価を下げる効果が大きかった『小規模宅地の特例』という制度の適用が、10年4月から厳格化されたんだ。現在、相続税法の改正案が国会に提出されている。だけど、それとは別に『この小規模宅地の厳格化も隠れた相続増税と呼べるほどで、影響が大きい』って言う声が税理士の間で高まっていたよ」

「小規模宅地…って聞いたことないわ」
「知っている人は少ないんだけど、実は重要な知識だよ。これは相続税の支払いのために自宅や自営店舗などを手放さないですむように、一定の条件の宅地について大幅な評価減を受けられる制度(表Aの(1))。でも10年の4月からは、相続人が住み続けていなかったり、事業を継続していなかったりした場合の減額がなくなった」

「例えばどんな影響が?」
「亡くなった人が住んでいた宅地の評価額が1億円、相続人は自宅を持って別居している子供1人だけの場合、従来は別居でも子供が50%の評価減を受けられた。このため5000万円の評価ですんだ。4月以降は原則的に減額されなくなった」

「一挙に評価が2倍になったってこと? きついっすね。表Aの(2)の方は?」
「適用も相続人ごとに判断されるようになった。従来は配偶者が一部でも宅地を相続すれば、残りをすべて別居の子供が相続しても、すべて80%減額を受けられた。配偶者が1割、子供が9割相続した場合、本来の子供の分の評価額9000万円は、8割減額されて1800万円ですんだ。これも10年の4月以降は減額されなくなった」

「確かに『隠れた増税』ですね。なんかひどいわ」
「ただし、もともと小規模宅地の特例は居住や事業を継続するためのもの。それが度重なる緩和で住んでない人にまで適用が広がっていたこと自体がおかしいという声もあった。適用の厳格化は『本来の趣旨に戻っただけ』ともいえる」

「でも影響が大きいのも事実なんでしょ?」
相続税には現在『一律5000万円+法定相続人1人当たり1000万円』という基礎控除枠がある(法改正で今後縮小の方向)。この枠内なら相続税はかからない。これまでは小規模宅地の特例を使うことで評価が大幅に下がり、相続財産を枠内に収められたケースも多かったんだ」

「それが10年4月以降変わっていた、ってわけね」
「そう。だからこそ、25日の10年の相続税の課税状況の発表に注目が集まっていたってわけ」
「で、結果はどうだったの?」
「様々な事情で、非常に読みづらいんだけれど『じわり影響が出始めていると見た方がよい』(朝日税理士法人の小林浩二税理士)という声が多い。まず全国ベースで見ると、課税対象は4万9733人で、亡くなった人に占める比率は4.2%で前年比0.1ポイント増(グラフB)。グラフにはないけど首都圏などを担当する東京国税局に限ると、7.0%へ0.4ポイントも増えていた」

「でもそれほどの増え方じゃないですね」
「税理士の間でも『もっと大きく増えると思っていた』と意外感を指摘する声は多い。ただこれには背景があ
りそうだ。まず10年は、不動産価格が大きく下落した年。路線価は全国で8%も下落している。東京圏に限ると9.7%もの下落だった。『本来は、課税対象の比率が大きく減ってもおかしくなかったのが、小規模宅地の適用厳格化で逆に増加になったと考えられる』(小林税理士)」

「確かに9.7%も土地が下がったんなら、対象者の比率は減るはずですもんね」
「それに適用厳格化は4月から。対象になったのは2010年に関しては9カ月分だけだ」
「11年以降は年間でフルに効いてくるので、さらに影響が強まる可能性があるのね」
「別の理由で『本当の影響はこれから』(タクトコンサルティングの本郷尚税理士)という指摘は多い。夫婦の

一方が亡くなったときの相続を『1次相続』って言うんだけど、『小規模宅地の厳格化を逃れるため、1次相続の段階ではとりあえず配偶者に資産の多くを相続させた人が多いのではないか』(本郷税理士)ということだ。適用厳格化の後も、配偶者であれば大幅な評価減を引き続き受けられるからね」

「なんだ。配偶者に相続させればいいのか」
「でもいずれ配偶者も亡くなり、子供に相続させる時期が来る。それが『2次相続』だ。そのとき子供が別居しているなどすれば、適用厳格化後の小規模宅地の特例は使えない。『1次相続はとりあえずしのげても、2次相続では適用厳格化の影響が直接出る。影響はむしろ数年後に本格化する』(柴原一税理士)との指摘は多いよ」

「あなたのように資産が少ない人は安心ね」
「失敬な。でもまぁそういう面も事実で、相続税は課税のちらばりが大きな税金だ。例えばタクトコンサルティングの調べでは、09年の推計で東京23区の平均は8.8%で、全国平均の2倍だ(グラフC)。千代田区ではなんと23%。つまり4人に1人に達する。遺産の大きな割合を占める不動産価格が高いという要因が大きい」

「大都市部の人に特に関わる問題ともいえるのね。ええと……、話は変わりますけど、確か小規模宅地の問題とは別に、今国会に相続税の課税強化の法案が提出されてましたよね」

「そう。消費増税関連法案に盛り込まれている。相続税は、現在5000万円の基礎控除を3000万円に縮小するうえ、法定相続人1人当たりの控除を現在の1000万円から600万円に引き下げることなどが盛り込まれている。最高税率も上がるよ」

「大幅増税じゃないっすか!」
「消費増税への理解を得るために『持てる者』からも課税強化しますよという姿勢を、政府が相続増税案で示しているとの見方もある」
「大人ってずるい」
「まぁそうなんだけど、グラフBで見たように、相続税の課税対象は1991年は7%弱。相続税のために自宅を売る“悲劇”も多発した。これを防ごうと様々な優遇策が拡充されてきた。その1つが小規模宅地の特例だったし、相続税基礎控除枠も段階的に拡充されて、最高税率も90年代の70%から現在は50%に下がった。この結果、課税比率も相続税額も大きく減ったんだ」

「緩和の歴史だったのね」
「そう。でもバブル崩壊後、地価が下落したにもかかわらず、いったん大きく引き上げた基礎控除の引き下げなどは行われず、最高税率の引き下げなども行われてきた結果『再分配機能が失われた』という声が強まってきていた」

相続税の見直しに合理性がないわけでもないんですね」
「ただし、既に実施済みの小規模宅地の適用厳格化で評価が下げにくくなったところに、今回の相続増税が加わることになる。『2つ合わさればかなり影響が大きい。都心周辺で考えると、3割前後が課税対象になってくる可能性がある』(本郷税理士)との見方もあるよ。『相続税はお金持ちだけの話』という時期は過ぎ去りつつあるのかもしれない」

「資産をたくさん持っている人はどうすれば」
「(1)年間110万円の贈与税基礎控除や住宅取得資金の贈与税非課税枠などを使って、生前贈与を進めておく(2)婚姻20年以上の配偶者への居住用不動産または取得資金の贈与は2000万円まで控除されるので、あらかじめ配偶者に資産を移しておく(3)小規模宅地の厳格化後の適用を受けられるよう、もし可能なら親と同居を始める……など、自分なりの対策を考えておく必要があるよ」