藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

バランス思考を持てるか。

日経、竹中平蔵氏のコラムより。

若者の15〜24歳の完全失業率は8.2%になるという。
また今年に入って、上場企業の人員削減計画による失業者は2万人を突破したともいう。

「村全体の稼ぎが減っている」。
その状態で「村全体」がどういう運営をしていくのか。
今の日本の運営はまったく同質の問題を抱えている。

高齢化し、働けなくなる人たちは生活の保証を求める。
若者は「より自由で、束縛のない生活」を求める。

当たり前である。

そして「この春大学を卒業した約56万人のうち6%にあたる3万3千人が、進学も就職も準備していないことが、文部科学省の調査で明らかになった」という。

日本の若者は、今「とにかく働け」という命題に対してサボタージューしているのである。

なぜなら、全く意の沿わない会社に正社員で潜り込むよりも、フリーターでいた方がむしろ柔軟である。
さらに、現在外国人が主に従事している外食や流通の仕事に「正社員として」働く気など毛頭ない。

かくして「宙ぶらりん」の若者が大量に排出されることになるのである。
日本には「雇用がない」というよりは「若者が思うような雇用」がないだけだろう。

そして、そうして「なりふり構わぬ」という態度にまで至らなくても、割と食べていくに不自由がない社会が形成されているのである。

そして高齢者。

そうした若者の「仕事離れ」に拍車をかけ、今度は高齢者の保証問題が持ちあがっている。
こちらはより深刻。
核家族化し、シングルになっている高齢者がマジョリティを占めるなかで、年金という生活保障がクローズアップ。
60歳で定年になり、65歳からの年金支給の間は「霞を食うのか」というまっとうな理屈で、これまた不満が噴出する。

結果、ついに今年の国会で、企業は「就業を望む者の定年を65歳にする」という法案を可決してしまった。
これからの企業は、自らの事業を「従業員が65歳になるまで雇用を確保できるか」という視点で見なければならない。

「では、より定年が延びる仕事を開発しよう」という経営者ばかりではない。
多くは「勝手に定まったルールに、自社の仕事を当てはめるのは無理」と思っているだろう。

「つまらぬ仕事はしない若者」と、「ともかく65歳までは働きたい壮年」。
こうしたギャップは、これからまだ数年は続くと思われる。
年金ありき、で権利だけを求める高齢者には、決してなるまいと思うのである。

高齢者の犠牲になる若年層の雇用機会

2012/9/5 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

竹中平蔵(たけなか・へいぞう) 73年日本開発銀行入行。大阪大助教授、慶大教授などを経て01年経済財政相、02年経済財政・金融担当相。04年参院議員。経済財政・郵政民営化担当相、総務・郵政民営化担当相を経て慶大教授兼グローバルセキュリティ研究所所長。日本経済研究センター研究顧問。

 決められない政治が批判されているが、気がつけば主要政党が足並みそろえて、なかなか凄いことが国会で決められた。60歳の定年後も希望者全員を雇用することを企業に義務付ける高年齢者雇用安定法改正案が、8月29日成立したのだ(日本経済新聞8月29日付朝刊3面)。

 来年4月から厚生年金の受給開始年齢が引き上げられるため、定年後に年金も給与もなくなる人が増える可能性がある。それに対応するための措置である。2025年度には65歳までの雇用を義務付けるという。

社会主義のような政策

 いうまでもなく、雇用の安定は重要な政策課題だ。しかしだからといって、それを単純に企業に義務付けるという社会主義のような政策は、どう考えても弊害が大きすぎる。グローバルな競争環境を考えれば、産業の空洞化はますます進むと考えられるし、企業の競争力を削いで雇用を減らす可能性も高い。そして、高齢者を保護するうらで若年層の雇用機会を奪って、世代間の雇用格差を決定的に高める懸念がある。

 世界を見渡すと、若年層の失業問題は1970年代から顕著になってきた。日本ではやや遅れて、90年代以降にこうした問題意識が広がってきた。2011年の15〜24歳の完全失業率は8.2%となったが、これは20年前に比べると2倍近い水準であり、全世代の4.5%を大きく上回っている。

 学校を卒業した人に限ると、10人に1人が失業している計算だ。パートや派遣社員など非正規の若者も増え、25〜34歳では20年前は10人に1人だった25〜34歳の非正規も、現在は4人に1人まで増加した。若者を取り巻く雇用環境に改善の兆しが見えないなかで、さらに高齢者の雇用を保護する政策がとられることになる。実は、高齢者雇用はすでに拡大の傾向が見られており、09年の60〜64歳の就業率は57%と、全体の就業率を初めて逆転している。

 こうしたなか、あらためてショッキングな報道がなされている。この春大学を卒業した約56万人のうち6%にあたる3万3千人が、進学も就職も準備していないことが、文部科学省の調査で明らかになったのだ(日本経済新聞8月28日付朝刊1面)。


2012年春、就職ガイダンスで話を聞く大学生(東京都豊島区の立教大学)

 大半が、いわゆる「ニート」と言われる存在であり、これを放置すると個人の豊かな暮らしを崩壊させるとともに、質と量の面で日本の労働力の劣化を招くことになる。若い時期に成長の機会を逃し、結果的に将来の生活保護受給者を拡大させる(結果的に財政負担を高める)可能性もある。

 先にも述べたように1970年代以降世界の主要国では、雇用とりわけ若年雇用は最大の政策課題となっている。このため、現在展開されているアメリカの大統領選挙でも、雇用拡大は大きな争点だ。

■雇用より福祉が選挙の争点に

 それに比べると、働くことより福祉が選挙争点の前面に出されている日本の姿は、健全さを欠いているのではないか。とりわけ人口が減少し労働力が弱体化する日本で、高齢者に過剰な保護を与えて若年層の雇用機会を奪っている現状は、大幅に修正されなければならない。

 解散総選挙が云々されるなか、若年雇用に焦点を当てた政策論が聞きたい。

竹中平蔵の眼」は原則毎週水曜日に掲載します。