人民元は国際通貨ではない、いわゆる「ハードカレンシー」ではない、というのが十年前はあたりまえだったが、時代は変わる。
いったい国際通貨ってなんだったか。
と、聞いてみれば「米ドル、円、ポンド、フラン、ユーロ」などが国際通貨としては流通するものの、明確な定義はないという。
つまりもう「金本位制」ではない世の中、経済成長とともに「決済通貨」として使われる実績を積めば、いつしか国際通貨としての存在になるらしい。
今の人民元は正にそんな存在なのである。
その背景には先進国の事情も大きい。
米ドルも、ユーロも、そして債務大国の日本も、すべてを安心して軸足を預けるには不安があり、さりとて新興国も決済を100%任せるわけにはいかない。
消去法としては、いろいろ言われてきたけれど、人民元に頼らざるを得ない、という各国の事情もあったのだと思う。
また中国も、名実ともに世界経済のメインプレイヤーに入ったという証なのだろう。
この先、中後の経済規模にしてみれば、ドルと同様のポジションを獲得し、ユーラシア大陸の経済覇権を企む、というのは考えすぎだろうか。
それにしても既存勢力のドル・円・ユーロはあまりにも危うく、そんなチャンスは十分あるように感じるのである。
「眠れる通貨」じわり国際化 人民元の貿易決済、急増
【編集委員・吉岡桂子】中国の通貨、人民元を貿易の支払いに使う動きが急増している。中国人民銀行によると、2013年1〜6月で前年同時期より64%増の2兆500億元(約33兆円)と半年ベースで過去最高に達した。米ドルへの依存度を減らそうと、中国政府が20カ国・地域と通貨スワップ(交換)協定を結ぶなど、人民元を流通しやすくしているためだ。
人民元、英国から信任状日中の識者に聞く 中国の貿易総額に占める人民元を使った貿易決済の割合も、1〜6月は16・4%と過去最高で、通年では4兆元を上回る勢いだ。中国政府は08年のリーマン・ショック以降、米国経済の影響を受けにくくするため、貿易決済で米ドルに依存する割合を減らそうと、人民元の利用を推進してきた。
そのため、人民元を他国通貨と交換しやすくするなど規制を緩和したほか、各国が人民元を手に入れやすくする通貨交換協定を英国や韓国など20カ国・地域と結び、後押ししてきた。
SWIFT(国際銀行間通信協会)によると、世界全体で決済に使われる通貨として、人民元の比率は今年6月に0・87%と11年6月の0・24%から大きく増加。米ドルやユーロの各36%、円の2・7%に及ばないが、タイ・バーツなどを抜き、1年前の16位から11位に上昇した。
規制が多いため、中国の経済規模に比べて国外で流通が進まず、「眠れる通貨」と呼ばれる人民元。影響が広がれば、中国企業は為替変動の影響が小さくなり競争が有利になる一方、世界経済が中国の金融・財政政策に左右されやすくなる。