藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

高度成長の次に。

高度成長の狼煙とともに誕生した大阪の千里ニュータウンが、急速に高齢化している、ということはここ数年ニュースで特集されたりしていたことだが。
次世代型のベットタウンとして、若い人の憧れのニューシティ・レジデンスだった街が、半世紀も経てばその存在も危うくなるということに、都市づくりの難しさを感じたものである。

ところが。
その千里ニュータウンからさらにバス便で20-30分も離れた箕面市の人口が増えているという。
入居世帯数も前年比4割増し、50?で5万円台の家賃という「低消費生活」は実は「それはそれで充実できる価値観」を提示し始めている。
いわゆる「低消費・低エネルギー生活」である。

着るものはユニクロで何ら不足はない。
自宅の内装を、自分の趣味に合わせて設え、休日は家族やご近所とのホームパーティやお付き合いに使う。
こういう生活の提示が「都会との対比」として十分に出てくるのがこれからの日本の良さなのだろう。

どちらの価値観もアリ。
都市部に近くてもこれら両者を折衷したような生活もあるだろう。
徹底的に都会か田舎か、ではなく。
結局は今の日本のあり様に沿った「生活スタイル」を作り出していく人は、既存の価値観に惑わされずにきちんと「自分の生活を楽しむ」ことができるのだろう。
はたして自分の老後はどこにいるのだろう、なんてことをふと考えたりします。

若い家族、都心より地元 「コンシューマーX」の実像
2014/7/27 3:30
日本経済新聞 電子版

 大阪のベッドタウン千里ニュータウンからバスでさらに20〜30分。築35年の箕面粟生第3団地(大阪府箕面市)に今、若い家族が続々と移り住んでいる。

 会社員の福山健(28)は長女の誕生を機に学生時代5年間を過ごした箕面市に戻った。「子育て環境を優先した」という福山。妻の伊穂莉(28)も「服はもっぱらユニクロ。都心での買い物には興味がない」。



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2013年度の入居世帯は12年度より4割増え、退去世帯を上回った。人気の理由は50平方メートル程度の3DKで月5万円台の家賃だけではない。「賃貸でも内装変更が自由。緑も多く、生活スタイル優先の30歳前後が飛びついた」(運営する都市再生機構)。福山も壁の塗り替えや床材の張り替えに10万円をつぎ込んだ。

 東京都区部と全国20政令指定都市を都会とすれば、郊外・地方に住む20〜30歳代は14年1月時点で2084万人。SMBC日興証券エコノミスト、宮前耕也(35)はこの層の消費額を年間20兆円強と試算する。

 都会と地方、都心と郊外の便利さの格差は縮まっている。1990年以降、地方・郊外に開業したショッピングセンターは全国で1800超。89年以前の2倍以上になる。生活コストの安い地元で買い物も便利になり、若い世代は車や付き合いなど暮らしを楽しむ分野に支出を振り向ける。

 「東京や大阪に住みたいなんて思ったことは一度もない」。福井県敦賀市に住む配管工、馬路智也(32)はこう話す。全国の30歳代の平均世帯年収545万円に対し、馬路は400万円ほど。それでも「今の生活はとても充実している」。

 13年8月に建てたマイホームは土地込み2900万円。居間とキッチンをつなぐカウンターをバーのような雰囲気にしつらえ、広い屋上にもこだわった。休日は夫婦や2人の子供の友達を家族連れで招待し、ホームパーティーを楽しむ。買い物はほぼ敦賀市内で済ませて地元にお金を落とす。

 「若い世代ほど安定した日常生活を伴う幸福を求める」。日本総合研究所の所長、松岡斉(59)はこう指摘する。14年1月にまとめた都道府県幸福度ランキング。待機児童ゼロ、正規雇用者の割合は全国3位という福井県がトップだった。

 都会や流行への関心が薄く、地元志向を強める若い世代を博報堂若者研究所の原田曜平(37)は「マイルドヤンキー」と名付けた。低成長時代がもたらした幸福観が人口減少で先細る地方を支える。(敬称略)

 多様な価値観を持ち、素顔が見えにくくなった消費者。日本経済の変数「コンシューマーX」に迫る。