藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

リーダーの力。

APECを前にしてスモッグだらけの北京の空が澄んだという話。
「合成写真と見紛うほどの月が出た」というくらいだから大したものである。

69もの大型工場の操業を止め(総数2500とか)、火葬場の営業を制限し、車の通行量も半分にする。

「当局の指導に基づき」これだけのことがやれるというのは今の自由主義国にはない力である。
それにしても天気を左右するほどの「人為的な営みがある」ということがそもそもやり過ぎ状態であると思うし、今の中国で工業化禁止などと言っても統治が出来ないだろうけれど、もしリーダーが出現して「工業化・経済発展至上主義」を凌駕するようなビジョンを示して動くようになれれば、今の先進国では真似のできないような国づくりができるだろう。
先のドイツ然り、専横的な国づくりは恐怖の的で、その後近代の法治国家は「国家権力の統制」が最大のテーマだったが、一方で主導的な政治は形骸化してきているのは間違いなく、日本などをみても何をやろうとしても「どうにもならない苛立ち」を国全体が孕んでいる。

国民が「我もわれもと、権利や利益を主張しない文化の形成」というのは実に難しいことに違いないが、一方で「そうした価値観に同意する人たち」も少なからず存在する。
経済発展がそのまま将来像ではない、という新しい憲法を作って一気に世界をリードするようなことが今の中国には可能ではないだろうか。
故あって一度分散した権力は再び「別の目的であっても」集中することが困難なことを日欧米の諸国は知っている。

中国こそがchangeできるのではないだろうか。

APEC直前 突如現れた「北京の青空」
中国総局 阿部哲也
2014/11/6 7:00
日本経済新聞 電子版

中国・北京で7日から、アジア太平洋経済協力会議(APEC)閣僚・首脳会議が始まる。習近平指導部は2008年の北京五輪に続く「最高レベルの国際イベント」と位置付け、官民を総動員して運営に万全を期す構えだ。ホスト国として会議を成功裏に終わらせ、「大国」のメンツを保てるか。最大の敵はスモッグとテロだ。

■「合成写真と勘違いされる」ほど澄んだ空気

 「月が出てるよ。これじゃ、誰も北京と信じてくれないよね」。3日午後、独メルセデス・ベンツが開いた北京R&Dセンター開所式。屋外で新しい建物の全景を撮影しようとしていた米国メディアのベテラン記者が真顔で困っていた。「まるで合成したと勘違いされる」ほど空気が澄んでいたためだ。



10月末まで北京では深刻な大気汚染が続いていた=ロイター
10月末まで北京では深刻な大気汚染が続いていた=ロイター

 最近、確かに北京の空気がきれいだ。わずか2週間ほど前の10月19日には、重度の大気汚染のなか、恒例の北京マラソンが開かれ、マスク姿のランナーが続出して話題を集めた。それが今では毎日青空がのぞくようになり、市中心部からも北京の周囲に広がる山脈を目視できるほどだ。

 北京の米国大使館によると、北京マラソンのあった10月19日は、微小粒子状物質「PM2.5」の濃度が日本の環境基準の10倍に相当する1立方メートル当たり350マイクロ(マイクロは100万分の1)グラム前後を記録した。それが5日正午時点で8マイクログラム。嘘のように大気汚染が減った。目立った変化があったのは、各国関係者の北京入りが本格化し始めた2日前後からだ。

 「上級指導部門の要求により、11月1日から15日まで火葬時の衣類焼却を停止します。花や副葬品は夜7時から10時に焼却します」。北京市郊外の八宝山葬儀場。10月末から入り口には風変わりな看板が立てかけられている。火葬に伴う煙が市中心部へ流れ込むのを少しでも減らすための措置だ。

 3日午前0時からは「当局の指導に基づき」北京市内の合計69カ所の大型工場が生産を停止し、72工場が減産を始めた。周囲の河北省には北京五輪の際に移転を命じられた鉄鋼や化学関連の工場が多く立ち並ぶが、これらも関係当局の指導で生産をストップしている。同省で現在、操業を停止している工場数は合計2500カ所にも及ぶ。

 さらに3日からは、北京市内で末尾のナンバーに応じて1日おきにしか走れない自動車の走行規制を始めた。7日からは官公庁や学校を休みにする「APEC6連休」も始まる。期間中は4000人近い海外メディアが北京に集まるとされる。黄白色のスモッグで会場が覆われれば、即座にその様子が世界中に流れかねないだけに、習指導部は大気汚染を何とかして封じ込めようと躍起だ。

 強大な国家権力を駆使し、目の前の問題解決へ一気に動く。事実上の一党独裁国家である中国だからこそできる手法だ。日常生活に支障も出ているが、スモッグ対策については今のところ効果が出始めており、大半の市民も歓迎ムードだ。しかし一筋縄ではいかない大きな問題も潜んでいる。テロの不安だ。

■「上司の許可なくテロ分子撃って構わない」

 「新疆のテロ分子が北京に潜入した疑いがある。有事の際には各自、10秒以内に自己判断で銃を撃って構わない。上司の許可は不要だ」。香港の中国人権民主化運動情報センターによると、APEC警備に当たる特殊部隊「特警」に最近、こうした有事対応時の指示が出たという。

 北京から遠く離れた新疆ウイグル自治区では、いまも民族対立を背景にした暴力事件が相次ぐ。10月も自治区南西部のカシュガル地区巴楚(マラルベシ)県で、少なくとも4件の襲撃事件や爆発事件が発生し、合計50人が死亡、100人超が重軽傷を負ったとされる。強硬・高圧的な手法で締め付けを強める中国政府に不満を持つウイグル族は多く、「テロ分子」にとって各国首脳が集まるAPECは格好の「標的」だ。それだけに治安当局も危機感を強める。



北京APECでメーン会場の1つになるオリンピック公園=AP
北京APECでメーン会場の1つになるオリンピック公園=AP

 10月27日、APEC会場付近で煙と怒号が飛び交った。自動小銃と黒色の特殊装備で身を固めた「雪豹突撃隊」が大規模演習を実施したのだ。対テロ戦を想定して創設された特殊部隊で、化学兵器対策を専門にするガスマスク姿の隊員も参加した。演習の様子はテロ分子を威嚇するかのように、国営中央テレビ(CCTV)でも繰り返し放送された。

 APECのメーン会場の1つになるオリンピック公園は四方を鉄柵で囲い、制服姿の武装警察が数十メートルおきに警備に当たる。登録済みの記者も2重の安全検査を受けないと入れないほどだ。市内の地下鉄では空港並みの荷物検査を徹底し、100万人の市民ボランティアを動員して市中心部などの巡回に当たらせる「24時間臨戦態勢」も続いている。

 経済だけでなく、政治でも外交でも「一流」でありたいと切望する中国。APECは「進化」をアピールする大きな見せ場となるが、逆に失敗すればダメージは計り知れない。世界が注目する北京APECがまもなく始まる。