藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

時代の鏡。


少し前の、スタバが豪州から撤退するという記事。
自分の学生時代辺りから考えても、結局スタバのような「カフェとコンビニ、生鮮品を主に扱う中型以上のスーパー」というセットが全国に配備される世の中になった。
小規模の地方都市に行ってもこの三点セットは必ずあるから、今の時代のニーズが端的に、そして合理的に現れているのに違いない。

三十年前にこんなになることを想像できなかった(ファミレスやフィストフード全盛とか)し、多分この先を予見するのも難しいことだと思うけれど、商店街が姿を消し、生活用品店もない街の時代が今である。
書店も加速度的に無くなっているらしい。
書店も超大手は別にして、平積みの様子をちらっと眺めて、あとはアマゾンで関連書籍も含めてどんどん検索する方が理に適ってきたように思う。

より手間なく、合理的に。
さらに好みの強いモノは専門店で。ということがこれからも集約して行くとしたら、今のコンビニなどで手に入れる生活必需品以外は、みんな「感覚ショップ」になってしまうのだろうか。品物の風合いや触感などを確かめたり、アンテナ的な流行だけを感じに行くのが目的で。
そしてスタバ型のカフェで若い人がみんな勉強しているような、ショップ型の個人スペースがさらに増えてゆくのだろうか。(図書館にカフェを置けばすごく流行るんじゃないだろうか。)

仕事には直接関係ないけれど、三十年後の街中がどんな風になっているのか想像してみると不思議な気分になるのであった。
カフェで飲み会を始めているおじさんたちがいる。

スターバックスがオーストラリアから撤退する理由

THE PAGE 7月3日(木)14時48分配信


[画像]オーストラリア進出当時から営業しているシドニー市内中心部のスタバ旗艦店

世界に約2万店舗を展開するコーヒー・チェーン最大手のスターバックス(スタバ)が、不振のオーストラリア事業から手を引く。同国内からスタバが消えてなくなるわけではないが、残る全直営店の運営権を地元企業に売却する。スタバがオーストラリアで成功しなかったのはなぜか。

米国のスターバックス・コーポレーション(米スタバ)はこのほど、オーストラリア国内に残る全スタバ直営店の運営権を地場の小売大手「ウィザーズ・グループ」に売却することを決めた。ウィザーズ・グループはオーストラリア東海岸を中心にセブン・イレブン約600店舗を運営するコンビニ国内最大手。同グループのウィルモット最高経営責任者(CEO)は「スタバをオーストラリアのコーヒー・チェーン最大の成功例にする。(セブン・イレブンの運営を通して)世界的なブランドの地元に最適化したスキルを生かしたい」と述べた。

スタバは1971年に米シアトルで創業。世界展開を進め、オーストラリア1号店を2000年にオープンした。店舗網を拡大したが、ブルームバーグによると2008年までに約1億米ドル(約102億円)の赤字を出した。同年、84あった店舗の約4分の3を閉鎖、従業員約700人を削減した。

米スタバの2013年9月期決算書によると、連結売上高は前年度比12%増の149億米ドル(約1兆5,000億円)。62の国・地域で1万9,767店舗(直営1万194店、フランチャイズ9,573店)を展開する世界最大のコーヒー・チェーンだ。国・地域別の店舗数(直営とフランチャイズの合計)は、最大拠点の米国が1万1,457店と半分以上を占め、次にカナダ1,337店、中国1,017店、日本1,000店、英国764店、韓国559店などの順に多い。

全世界での同年度の新規開店数から閉店数を引いた店舗の純増数は1,701店と全店舗数の約9%と順調にネットワークを拡大している。しかし、オーストラリアの店舗数は08年のリストラを経て現在では24店舗を残すのみとなっていた。日本では、現在1034店舗あり、1996年に上陸して以来、順調に成長していきているが、南半球の大陸では、スタバ文化が根付かなかったことになる。


本格的なエスプレッソが浸透
スタバがオーストラリア市場で苦戦した理由はいくつかある。最大の要因は、進出した時には既に本格的なエスプレッソやカフェの文化が根付いていたことだろう。英国植民地から独立したオーストラリアはもともと紅茶文化圏だったが、カフェイン飲料の主流は次第に紅茶からコーヒーにシフトした。中でも、戦後に急増したイタリア系移民が持ち込んだエスプレッソが市場を席巻している。なお、イタリアにもスタバは進出できておらず、同じ理由が言えるだろう。

90年代の初め頃はまだぬるま湯のような米国式の薄いコーヒーもガソリンスタンドの売店やコンビニなどでは流通していたが、現在ではそうした店のほとんどがエスプレッソ・マシンを備え、小型のマシンを導入するオフィスや家庭も増えている。アメリカンはほぼ姿を消し、日本の喫茶店などで主流のドリップ式も見られない。内食用のインスタントを除くと、オーストラリアのコーヒー需要の大半はエスプレッソだ。

世界的に評価の高いバリスタを数多く輩出するなど、オーストラリアのエスプレッソの品質は非常に高い。プロのバリスタは大手チェーン店ではなく個人経営の小さなカフェを舞台に活躍している。公共放送SBSによると、こうした零細カフェは国内に約6,500店舗あり、年間売上高は40億豪ドル(約3,800億円)に達している。シドニー市内のこうした小さな店の中には、朝から夕方まで常に行列ができる繁盛店もある。オーストラリア人は1日平均3〜4杯のコーヒーを飲むとされるが、お気に入りのバリスタを見つけて同じ店に1日に何度も通う人が多い。

また、質の高い小規模なカフェが強いことに加え、既存の大手コーヒー・チェーンの牙城を崩せなかったこともスタバの敗因の1つと言える。国内の有力チェーンとしては、約460店舗を展開する「グロリア・ジーンズ」、オーストラリアを中心に海外を含む330店舗を運営する「コーヒー・クラブ」、マクドナルドが併設する「マックカフェ」の存在感が強い。スタバはこれらのチェーン店と比較して料金が高めで、海外と同じメニューを現地化せずそのまま導入していたことも消費者に敬遠された形だ。


高コストもネックに外資の進出難しく
さらに、経営戦略の甘さも指摘されている。マクドナルドやKFCといった世界的な大手ファストフード・チェーン(地元企業がフランチャイズ展開しているケースが多い)を除き、コーヒーに限らずオーストラリアの外食産業では海外チェーンが進出して成功した例はほとんどない。日本勢も同様で、例えば大手牛丼チェーン吉野家は多店舗展開を目指してシドニーに2店舗を出店したが、既に撤退している。

その背景には、オーストラリアの事業コストが世界の主な国・地域と比較して非常に高いことがある。成人の全国最低賃金は現在、時給16.87豪ドルと日本や米国の約2倍。労働者の権利が手厚く保証されていて、企業側にとっては賃金以外の労務コスト負担も大きい。商業物件の家賃は日本の大都市と比較しても高い。こうした高コストがネックとなり、思うように利益を出せないことが多いのだ。

グローバルな成功体験をそのままオーストラリアに持ち込んでも、必ずしもうまくいかない。スタバ撤退のニュースは、そんな教訓を示していると言えそうだ。

(守屋太郎/日豪プレス特約)