藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

総センサー時代。

それにしても「これまでは貴重な計算機」だったコンピューターが、桁違いに増え、安くなり、「どこでも、何にでも使えるもの」になりつつある。
もう「貴重なものだから」という概念がなくなりつつあるから「どこにでも、何にでもコンピューターとかセンサーを付けていい」という時代だ。
あらゆる商品やサービスに「センサー」をつけておいて「後から考える」ようなことも許されるだろう。
センサーの数が増えれば増えるほど集まるデータは膨張し、可及的に大容量になってゆく。
ビッグデータというのは、今はカオスになっている人間の社会とか為替とかお金とかへの「コントロールの挑戦」なのかもしれない。

いずれにしても「パソコン世代」には想像もつかなかった「センサーデータの時代」がすぐそこまで来ている。
お寺の池の蓮の花が咲くように、最初は少しづつだがある時一気に花開く予感がする。
「何ができるか」というよりは「まず作ってみる」という方が広がりやすい時代なのである。



第4次産業革命で輝く人材像「技術者5.0」 技術者5.0(上)

2016/5/13 6:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版
 IoT(モノのインターネット化)、ビッグデータの活用、オープンイノベーションの加速、開発のグローバル化…。ものづくりを取り巻く環境が激変している。こうした変化に対応するためには、人材育成のあり方を抜本的に改革しなければならない。そんな危機感を持つ企業が増えている。自動車、電機、機械などメーカーの次世代に向けた人づくりの最前線を追った。

 これまで磨き上げてきたものづくりの手法が通用しない。最近になって、愛知県に本社を置くある自動車部品大手の品質管理部門の技術者は強い危機感を覚えるようになった。次世代車の部品を開発する際に、エンジンの出力や排気の温度などの大量のデータをどれだけ解析しても、以前なら考えられないようなエラーが出るようになったからだ。

 「古典的なあらゆる統計解析の手法を極めた」と自負する第一線の技術者にとって、データを正確に解析できないという事実は衝撃的だった。問題を放置すれば、メーカーの生命線といえる品質を保証することが難しくなる。

 「これは喫緊の課題だ。なんとかしなければならない」。そう考えたこの自動車部品メーカーは、ハードウエアやソフトウエアといった分野の垣根を超えた社内の優秀な技術者を20人以上結集。車載部品の高機能化に伴って生まれる大量なデータを正確に解析できるように、「統計科学」の勉強会を始めた。

 その結果分かったのが、これまで社内で教育してきた古典的なデータ解析の手法がもはや破たんしているという事実だった。高度化に伴い膨大なデータを生み出す製品の品質を保証するには、新たなデータ解析手法を確立しなければならない。

 この自動車部品メーカーでは、ビッグデータ解析などの最新の手法を学ぶ研修プログラムを新たに導入。技術者育成の手法を大きく見直して、精緻なデータ解析が可能な開発体制の確立を急いでいる。

■環境変化に人材育成が追いつかない

 ものづくりの急激な変化に、技術者教育が追いつかない─―。この部品メーカーと同じような課題に多くの企業が直面している。

 その象徴ともいえるのがものづくりの「デジタル化」への対応だ。例えば、IoTや「Industrie4.0(インダストリー4.0)」に対応する成長戦略を打ち出すメーカーは多いが、肝心の技術者をどのように育成するのかに関しては悩んでいる企業が多い。

 「IoTとは何かを知りたいという依頼は急増しているが、技術者をどう育成するかまで考えている企業はほんの一部に過ぎない」。IoT人材を育成するための企業研修などを手掛けるメディアスケッチ(東京都渋谷区)の代表取締役、伊本貴士氏はこう語る。

 こうした状況に危機感を持ったメーカーは、技術者を社外の研修に派遣してIoTやビッグデータ関連の知識を身に付けさせようとしている。

 2016年2月下旬、日本科学技術連盟が開いた「モノづくりにおける問題解決のためのデータサイエンス入門コース」には、日本を代表するメーカーから多数の技術者が集まり、活況を呈していた。ビッグデータをソフトウエアで解析し、ハードウエア(製品)の異常を検知する手法を学ぶ内容だ。

 もちろんデジタル化だけが、メーカーの人材育成の悩みではない。2008〜2014年の1ドル=100円を切るような円高を背景に、多くの企業はグローバル化を加速してきた。

 コスト競争力を高めるために生産拠点を相次いで海外に移管する動きに加えて、海外に製品開発の機能を移管するメーカーも増加。国内市場が低迷する中、欧米や成長している新興国の市場を開拓する力を高めようとした。

 海外で成功する製品を開発するには、現地市場に対する理解を深める必要がある。そのためには海外で現地の事情をよく知る技術者を採用して育成することが欠かせない。開発は国内が中心で、海外拠点には主に日本の技術者を派遣して現地市場に対応するという、旧来型の開発体制では成功が難しくなっている。

図1 DMG森精機の新製品と技術を紹介する展示会。2016年1月にドイツのPfronten市にある拠点で開かれたイベントでは、日本とドイツの技術者が共同開発する工作機械が多数展示された
図1 DMG森精機の新製品と技術を紹介する展示会。2016年1月にドイツのPfronten市にある拠点で開かれたイベントでは、日本とドイツの技術者が共同開発する工作機械が多数展示された

 さらに最近では、グローバルな企業の合従連衡も進んでいる。工作機械大手のDMG森精機のように日本とドイツの機械メーカーが経営を統合するケースも目立つ。研究開発から多様な製品の品ぞろえまでを1つに統合する方針で、より高いレベルのグローバル人材の育成が求められている()。

 DMG森精機に限らず、三菱重工業が鉄鋼機械の事業をドイツSiemensシーメンス)の同事業と統合したり、空調機器大手のダイキン工業が米国の同業他社を買収したりしている。新たな段階に入ったグローバル化に対応する技術者の育成は急務になっている。

イノベーションの担い手を鍛える

 デジタル化とグローバル化が加速する中で、多くの企業が求めているもう1つの人材が新たな価値を生み出すイノベーションの担い手だ。

図2 Tesla Motorsの電気自動車「Model S」。ITを活用することで、これまでのクルマにないユニークな機能を実現している
図2 Tesla Motorsの電気自動車「Model S」。ITを活用することで、これまでのクルマにないユニークな機能を実現している

 デジタル化に伴い、以前は考えられなかったような新しい機能を製品に付加できるようになった。例えば自動車では、米Tesla Motors(テスラモーターズ)の電気自動車(EV)「Model S」のようにソフトウエアのアップデートによって、自動緊急ブレーキ機能や高速道路での自動運転機能を実現できるようになってきた()。クルマづくりにもIT(情報技術)企業のような発想が今後ますます求められるようになる。

 これまで考えられなかったような発想で独創的な商品を開発する新興メーカーも続々と誕生している。以前は家電大手が席巻していた分野でも欧米や新興国ベンチャーが台頭している。2輪車ではテラモーターズ(東京都渋谷区)が電動バイクを農村部などで売り込み、大手メーカーを抑えて国内最大のシェアを握るようになった。

 もはや従来の商品の延長線上で改良を考えていくような手法では、革新的な製品を生み出す新勢力に対抗するのは難しい。そう考えた多くのメーカーは、イノベーションを実現する人材の育成に本腰を入れ始めている。

 「技術者向けにイノベーション研修を新たに導入する企業がここ2〜3年で急増している」。パナソニック日立製作所、ホンダなどを顧客に持ち、技術者向けのイノベーション研修を提供するナレッジワークマネジメント(兵庫県芦屋市)代表取締役の大坪秀昭氏はこう話す。

■「技術者 5.0」で求められる人材像

図3 技術者 5.0のイメージ。ものづくりの環境が激変する中、デジタル化だけではなく、グローバル化イノベーションに対応する人材の育成が求められている
図3 技術者 5.0のイメージ。ものづくりの環境が激変する中、デジタル化だけではなく、グローバル化イノベーションに対応する人材の育成が求められている

 このようにものづくりの環境が激変する時代に求められる技術者の人材像を、日経ものづくりは「技術者 5.0」と定義する()。

 インダストリー4.0では、ものづくりの構造的な変化を以下のように4段階に分類している。18世紀末の水力や蒸気力を用いた機械的な生産設備の導入による第1次産業革命、20世紀初頭の電気エネルギーを用いる大量生産の導入による第2次産業革命、1970年代に始まった電子機器やITを使って生産を自動化する第3次産業革命、そして今まさに始まりつつあるように、さまざまな産業機器に多数のセンサーが搭載され、ネットワークにつながるIoT化による第4次産業革命だ。

 このような産業の進化の段階に応じて、求められる技術者の人材像も変化してきている。現在、多くの製造業の人づくりで最大の焦点となっているのが、第4次産業革命への対応を主眼とした、ものづくりとITの双方に通じたデジタル人材の育成である。

 ただし、これからの製造業を担う人材としては、ものづくりとITの双方に通じているだけでは十分ではない。生産拠点や開発拠点のグローバル化はますます進行し、かつ新興国企業と明確に差異化できる製品開発や生産体制を確立するためにはイノベーション創出力に優れた人材が不可欠だ。

 こうした状況を鑑み、「デジタル化への対応力」「グローバル化への対応力」「イノベーション創出力」を兼ね備えた人材を技術者 5.0と位置付け、今後製造業が目指すべき人材像として提案する。

図4 ソニーの新規事業創出プログラムで選ばれた若手技術者たち。入社3年目の若手技術者たちが集まり、さまざまな電化製品を1台で制御できる電子ペーパー学習リモコン「HUIS(ハウス)」を開発した
図4 ソニーの新規事業創出プログラムで選ばれた若手技術者たち。入社3年目の若手技術者たちが集まり、さまざまな電化製品を1台で制御できる電子ペーパー学習リモコン「HUIS(ハウス)」を開発した

 次回はイノベーション創出に関し、ユニークな製品を開発する社内ベンチャーを次々に生み出す新規事業創造の仕組みを導入したソニー()や、イノベーションを起こす潜在能力が高い人材を全社的に発掘して、長期的な商品開発の戦略やオープンイノベーションの取り組みなどを任せている富士ゼロックスなどの戦略を紹介する。

(日経ものづくり 山崎良兵)

[日経ものづくり2016年4月号の記事を再構成]