藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

水清くては…

ルールは後からやってくる。
「決まりごとは破るためにある」という迷言があるが、ある場面では正しい。
新しいことをやろうとすると、必ず慎重論が出てくる。

youtubeが動画のポータルを制覇し、まだチャンスのあったyahooの動画サービスが絶えた、という記事は象徴的だ。

中でも

(著作権違反の疑わしいコンテンツを削除しまくった結果)
そして何が起きたか。「面白みのあるコンテンツがほとんどなくなり、だれも動画を見に来なくなってしまった」

どんな新サービスも既存の法律とか因習とか常識との、摩擦がゼロでは済まされない。
「ずっといい子」でいては伸びないということだろう。
多少やんちゃで礼儀を欠くことのあったyoutubeが、批判にさらされながらも、周囲の声に耳を傾けて自分を修正しつつ、ついに動画のインフラとなった過程は、自分たちに多くのことを示唆してくれている。

水清ければ魚棲まず、は日本のことわざだが「自由さ」とか「奔放さ」を排した世界では、イノベーションは起こらないのだろう。

逆説的だが、"異端"こそが新しい世界を切り開いていくのかもしれない。
ただ「皆で異端を目指す」というのもちょっとどこかズレている。

重要なのは「少々の異端」を常識とプライドで潰してしまわないことだ。

なぜか自分たちは「新しい異端児」を潰したり排したりすることに意義を感じたりする。
保身感情というのは恐ろしいものだ。

「異端を許容すること」も十分に特異な能力なのに違いない。

「ヤフーの悲劇」を繰り返すな 編集委員 西條都夫

2016/6/14 3:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版
 ユーチューブといえば、言わずと知れた世界最大の動画投稿サイトで、日本語を含む76言語でサービスを展開。ユーザーは世界で10億人を突破し、企業価値は700億ドルを超えるという推定もある。電子版の読者の中にもユーチューブのファンは多いだろう。


 一方で「Yahoo!ビデオキャスト」というサービスを知っている人はいるだろうか。知らなくて当たり前。これは日本のヤフーが2007年7月に始めたユーチューブと同様の動画投稿サービスだが、さっぱり視聴者が集まらず、開始からわずか1年ほどでサイトの閉鎖に追い込まれた。

 両者の明暗を分けたものは何か。サービスの開始時期はユーチューブの05年に対して、ヤフーは2年遅れだが、それほど大きなハンディキャップとはいえない。ユーチューブが日本語対応を始めたのはやはり07年の半ばで、日本市場を相手にする限り、ヤフーとユーチューブの間に時差はほとんどなかったからだ。

 技術的にも大差があったとは思えない。ヤフーのサービスはパソコンだけでなく、携帯電話からの投稿や閲覧を可能にする機能をいち早く備え、「ガラケー先進国」といわれた日本との適合性はむしろユーチューブに先んじていたという見方もある。

西條都夫(さいじょう・くにお) 87年日本経済新聞社入社。産業部、米州編集総局(ニューヨーク)などを経て産業部編集委員。専門分野は自動車・電機・企業経営全般・産業政策など。
西條都夫(さいじょう・くにお) 87年日本経済新聞社入社。産業部、米州編集総局(ニューヨーク)などを経て産業部編集委員。専門分野は自動車・電機・企業経営全般・産業政策など。

著作権保護のルールめぐり明暗

 では何が「つまずきの石」だったのか。ヤフーで法務などを担当する別所直哉執行役員によると、「日米における著作権保護体制の違いが大きかった」という。動画投稿サイトにとって悩ましいのは、著作権侵害に当たる違法コンテンツにどう対処するか。米国では「デジタルミレニアム著作権法DMCA)」によって、ユーチューブのようなサイト運営者が外部から投稿された違法コンテンツにどんな形で責任を負うかの原則が明記されている。

 その中身は、著作権者から「違法コンテンツがアップされている」と指摘を受けた場合、直ちにその投稿を削除すれば、サイト運営者はもろもろの責任を免れるというものだ。これを「ノーティス・アンド・テイクダウン」の原則ともいう。権利者からの通告(ノーティス)を受けて、投稿を取り下げる(テイクダウン)という意味だ。ユーチューブも著作権侵害で訴えられたことはあるが、この原則が一つの盾となって、事業を大きく発展させることができた。

 一方、日本でもプロバイダー責任制限法の中に似たようなサイト運営者(プロバイダー)の免責規定はあるが、知的財産権を専門とする福井健策弁護士は「日本は免責の要件があいまいで分かりにくい」と指摘する。仮に免責されることになっても、その範囲が狭いという難点もある。損害賠償責任は免れるが、著作権侵害による刑事罰やサイトの閉鎖命令などを免れるものではないのだ。

■行き過ぎた動画削除、商機逃す

経済財政諮問会議産業競争力会議の合同会議(6月2日、首相官邸)=共同
経済財政諮問会議産業競争力会議の合同会議(6月2日、首相官邸)=共同

 そこでヤフーは「ビデオキャスト」のサイト内を自主的にパトロールし、違法の恐れが少しでもありそうな動画を片っ端から削除して回った。違法のそしりを受けて、サービスができなくなることを恐れたからだ。そして何が起きたか。「面白みのあるコンテンツがほとんどなくなり、だれも動画を見に来なくなってしまった」(別所執行役員)のだ。その結果、早々とサービス停止に追い込まれ、大きなビジネスチャンスを逃すことになった。

 この「ヤフーの悲劇」は何を示唆しているのだろう。インターネットのような新しい分野では、新サービスをめぐるルールをどう決めるかで、新規のビジネスが立ち上がるのか、芽のうちに摘まれてしまうのか、大きく結果が変わってくる。動画投稿サイトの場合は著作権をめぐるルールで明暗が分かれたが、例えば自動運転技術では、安全や道路交通法規の在りかた次第で一国の自動車産業の競争力が大きく左右されるだろう。

 政府はいま「第4次産業革命」を唱え、人工知能(AI)やロボット、ITなどの活用で日本経済の成長性を高める青写真を描いている。だが、技術があり、やる気のある企業があっても、規制と技術の不適合が起こればせっかくの新市場を取り逃がすというのが、「ヤフーの悲劇」の教訓である。新技術を調子よく囃(はや)したてることが政府の仕事ではない。産業創出につながる適切なルールづくりこそ、本来の役目である。