藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

IT化の現場。

日経、セブン&アイの物流センターの記事。
電化製品とか宅急便とかの物流がどんどん効率化されていくのは「運送業としての努力」で当然とも言える。
それが日用品とか小売店舗の世界に伝播していくと、どうも不自然というか「やり過ぎな感じ」がするのは自分だけだろうか。

これまでは客が「近くのスーパーに出向き、店舗に準備された品物を買う」というところでバランスを保っていたのが、「ネットで注文して自宅に届ける」という利便性を求めた結果が、"都心近郊の巨大倉庫群"ということらしい。

amazonも世界最大の倉庫業と言われているが、自動化されてごく少人数の人が働く巨大倉庫の存在を、自分たちは意識せずに暮らしている。

デジタル化の特徴はこういう「徹底的」なことではなかろうか。

デジタルでできる通信とか相互のコミュニケーションとか、コンテンツ配信とかゲームは「デジタルもの」として一括りにできたけど、それがもうモロに「アナログワールド」に浸潤してきている。

ライドシェアとか民泊もそうだ。無駄なく、隙間なく、早く。
少々非人間的な巨大倉庫を街中に次々と作り、まだまだ効率化の集積は進むだろう。
そろそろ"小売"は一通りターゲットになった。
次は人の関わるサービスが標的になるのだろう。

人の仕事は確実に減っているけれど、余った人たちは何をしているのだろうか。

(前略)
 ここまで見てきた通り、久喜センターは最大限、倉庫の自動化や機械化に挑んでいる。実際、センター内を歩いていると、巨大な棚やコンベヤーが目に付く一方で、作業者は非常に少ないことが分かる。それだけ少ない人数で運営できる体制を敷いているという証しでもある。

 ここに大きな課題が透けて見える。久喜センターが抱える最大の問題は人手の確保なのだ。omni7の命運を握るのは、実は物流センターの担い手をどれだけ安定して雇用できるかにかかっている。だがその保証はない。だからマルチシャトルシステムや段ボールの自動折りたたみ機をはじめとする装置に、セブン&アイは先行投資するのである。

 松尾センターマスターによれば、「東日本大震災以降、物流センターを沿岸部から内陸に移す企業が増え、なかでも首都圏へのアクセスが便利な埼玉・久喜エリアには今、物流センターが密集している」という。

 ところが久喜市の人口は15万人ほどにすぎない。高速道路網が充実しているとはいえ、人手の確保にはおのずと限界がある。現地では作業者の奪い合いが起きており、時給が高騰しているのだという。

■久喜に在庫を置くか、店舗共有か
 セブン&アイは2018年度にomni7で600万品目を取り扱う目標を掲げる。オープンから4カ月で、品目数は180万から220万へと増加している。

 その動きは急激な速さで、久喜センターに押し寄せている。というのも久喜センターの在庫数は、2015年11月のオープン時には約30万品目だったが、わずか3カ月後の2016年1月には約70万品目へと、2倍以上に膨れ上がっている。久喜センターへの「在庫寄せ」が始まったのだ。

 それには訳がある。鈴木取締役は「配送リードタイムが短く、すぐにお届けできる商品ほどよく売れることが、omni7のオープンから2カ月ほどで早くも実証されてきた」と打ち明ける。その結果、グループ各社が久喜センターに在庫を置きたがるようになったというのだ。

 久喜センターのすぐ近くにはヨーカ堂の共配センターがある。ならば、わざわざ久喜センターに在庫を置かず、注文が来たら久喜センターまで運べばいいという雰囲気が当初は漂っていた。しかし、久喜センターにある商品と取り寄せ商品では、明らかに配送リードタイムに差が出る。消費者の立場になれば、早く届く商品ほど安心してリピート買いできる。この事実は商品の注文数や回転率に如実に表れており、それが久喜センターに在庫を寄せる動きにつながっている。

 鈴木取締役は「お客様がすぐに欲しがる売れ筋は、久喜センターに適正な数の在庫を持った方がいい。逆にたまにしか売れないロングテールな商品は店舗との共有在庫として扱い、そのつど取り寄せてもいいだろう。今はそれをグループ各社が手探りで見極めている状態だ」と話す。

 分かりやすいのは、赤ちゃん本舗が扱う商品。おむつなどのベビー用品は親が気に入れば、同じ商品を繰り返し注文してもらえる。「久喜センターの稼ぎ頭は圧倒的に赤ちゃん本舗の商品」と松尾センターマスターが語るほどだ。そのため、赤ちゃん本舗の商品は今、どんどん久喜センターに集まってきている。

 せっかく久喜センターに置いている売れ筋の在庫は、サイト上でより良く見せて、手早く売っていきたい。そこで久喜センターは大規模な撮影スタジオまで完備している。モデルが服や靴、ネクタイ、かばんなどを身に着けては写真を撮影し、すぐにサイトにアップする。そこまで久喜センターが担うことで、在庫回転はさらに上がっていく。

日経情報ストラテジー 川又英紀)