藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

パラダイムは変わり続ける。

日経より。
財務次官だった真砂氏の弁。

これらはすべて『コストを後世に先送りする』誘因とどう戦うかという問題だが、近代民主主義の初期の想定には入っていなかったことばかりである

五十年前、少なくとも日本は「敗戦から復興へ」をスローガンにひたすら経済成長を目指した。
「その後に何が起こるか」を政治家もマスコミも官僚も市民も考えていなかったという話だ。

「経済成長がなぜ止まったか」とか「成長以外に目標はあるか」ということについても、ようやくここ数年で話題に上るようになった。

確かに「先送る」ということは成長している時には許されたのだ。

もう「ともかく拡大」「成長」「人口プラス」ではなくなった。
過去の良かった時代を眺め、「これからの価値観」を作っていくのは今の世代の役割だと思う。

今の「ガツガツしない世代」に一度政策を預けてみるのも一案だ。
自分たちの思いもしない調和的な方針を編み出すかもしれない。

「年寄りが"経験と知恵"で導く時代は一旦終わる」という気がする。
今は既成概念から解き放たれた、方向とか価値観が必要なのではないだろうか。
今は「古さ」が流れを邪魔しているような気がする。

世代を超える課題と民主主義 真砂靖氏 弁護士・元財務次官

 英国が欧州連合(EU)から離脱する問題については、いろいろな論点について議論がなされているが、英国の経済的ダメージが計り知れないことは論をまたない。そんな中、私が関心を寄せているのは世代別の投票結果だ。

 18〜24歳では離脱28%、残留72%。65歳以上では逆に離脱58%、残留42%となっている。これから最も長く生き、そのぶん多く稼がなければならない若者は約4人に3人が残留を希望している。すでにリタイアし、移民に抵抗感の強い高齢者がこれを覆したというのは極論としても、英国の若者がかわいそうに思うのは私だけだろうか。

 先進国で「シルバー・デモクラシー」「ペンションズ(年金)デモクラシー」という言葉が喧伝(けんでん)されて久しい。日本も4人に1人が高齢者(65歳以上)で、投票率は20代の倍以上である。

 私が財務省主計局長だった5年程前、日韓財務対話で社会保障改革が取り上げられた。私は韓国のカウンターパートにこう助言した。「高齢化率が低い(当時韓国は10%未満であった)うちに社会保障改革をした方がいい。高齢化が進むと難しくなる」

 韓国当局が自らの社会保障改革キャンペーンに使ったのであろうか、私の発言が韓国内で報道され、日本国内でご批判をいただいたことがある。ただ、昨今の社会保障改革の停滞をみるにつけ、その意を強くせざるを得ない。

 更に民主主義には現世代を超えた課題にどう答えを出すかという問題がある。小林慶一郎慶大教授は6月20日付「経済教室」でこう述べている。「有限な化石燃料資源、環境問題、原子力発電とその放射性廃棄物の超長期的管理の問題、そして政府債務によって支えられた社会保障制度の持続性の問題。これらはすべて『コストを後世に先送りする』誘因とどう戦うかという問題だが、近代民主主義の初期の想定には入っていなかったことばかりである」

 民主主義は現世代主義・現世利益主義である。過去のように民族の誇りとか国家の威信とかの名目で戦争したりしない。そんなことより生きている人間の命が大切である。民主主義以外に権力を作るルールはないと考えるが、それをどう補完すれば現世代を超えた課題に正しい答えを出せるのか。将来を見通す意欲と能力をもった「ぶ厚い中間層」の存在とか、官僚の役割とか様々言われているが、なかなか名案が思い付かない。

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