藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

住まいの価値観。


不動産ディベロッパーに勤める友人に聞いたら、もう今の「マンション」は機能的に限界に近づいてきているという。
目新しい材料がなくなっているそうだ。
流行りのタワーマンションは眺望や贅沢な共有施設が売りだが、それももうそれ以上のものではなく、王道の「駅近・都心・耐震構造」くらいしか差別化できないのだという。

都心の超高級マンションでは、ついにハードウェアでなはなくポーターとかメイドとかの「人」がサービスの決め手に回帰しているらしい。
一方、近い将来には一戸建ても三割が空き家になり、これまでみたいに「戸建て持ち」になるのはそう難しいことでもなくなるという。

コンクリート・マンションの気楽さや安全性も若い頃にはいいかもしれないが、間取りとかデザインとか「生涯自分が過ごす「住空間」」を意識して「自分好みの家で過ごす」という文化がこれから重視されるのではないだろうか。

住宅のトレンドって、戦後かなり性質が移り変わってきているから「今の流行り」だけではなくちょっと離れて「自分の住まい」のことを考えてみるのはとても大事なことのはず。

自分などは「そこそこ大きな音の出せる十帖くらいの書斎」があればいいのだが、なかなか実現していない。
案外古家を改造して、自分好みに出来る時代がすぐそこに来ているのかもしれない。

個性光る家、入手するなら
設計や物件、多くの視点で吟味
2015/9/9 15:30日本経済新聞 夕刊
 一生に何度もない住宅購入で、自分の好みや理想を貫きたいという人が増えつつある。建築家による注文住宅や、個性的な中古物件の購入などへの関心は高い。インターネットを活用すれば選択肢を広げることもできるが、手間がかかることがあり、注意点も少なくない。

 東京都府中市の住宅街の一角。2013年に鋼板と漆喰(しっくい)を外壁に使った個性的な戸建て住宅が完成した。この住宅を建築家に注文した男性会社員(33)は「『建売住宅でいい』と主張した妻(33)も、今は喜んでいる」と満足げだ。

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 寒冷地でも耐えられる断熱性、太陽光発電のための屋根の広さや角度などこだわりは多い。屋根裏に書斎を設け、リビングの壁にはコーティングをして子どもがペンで落書きができるようにもした。汚れにくい漆喰や鋼板を外壁に使ってメンテナンスを手軽にした一方、「外観の美しさを優先してひさしを省いたため、雨が室内に入りやすい」と男性は苦笑する。

 天井には単価の安い繊維板を使用し、ゲタ箱内部などは塗装も省略。間仕切りのない子ども部屋は、子ども2人の成長に応じてリフォームすることにした。結果、本棚やテレビ台などの備え付けの家具、寒冷地対応や広範囲な床暖房なども含め、建て売り検討時の予算に比べ費用は約600万円の上昇に抑えた。

 住宅ローンの比較や手続きのほか、土地の購入や不動産登記にかかる費用などの交渉は男性自身がした。出張先でも建築家と深夜まで電話で打ち合わせすることがあったといい、苦労も多かった。それだけに愛着はひとしおで「住んでいると生活に前向きになれる」と話す。

 この男性は、建築事務所「SUPER PIXEL」(東京・渋谷)を運営する知人の松尾宗則氏に設計を依頼したが、ネットを活用する方法もある。住宅の実例や条件などから建築家や工務店を探せるウェブサイトが増加。リノベーションという選択肢もあり、部屋単位といった小規模な発注も可能だ。

 ただ、松尾氏は「作品が気に入っても、年齢や相性で住宅の考え方にずれが生まれる可能性がある」と指摘。「何度か話を聞いて、対話できるか、人柄も含めて任せたいかを見定めるべき」と注意を促す。

 個性的な住宅に的を絞った不動産業者も存在感が高まっている。シティーデザイン(東京・大田)は、運営する「赤龍馬ハウジング」という店舗とサイトで独自の物件などを掲載。JR鎌倉駅から徒歩20分の著名建築家が設計した住宅や音楽スタジオ付きのマンション、世田谷区内の縦長狭小住宅などを取り扱う。

 億円単位の高級物件から、東京23区内で3000万円台、郊外で数百万円の住宅まで価格も多様だ。好みに合った建売住宅が見つかれば、一から建てるより安く入手できるかもしれない。

 購入するのが中古物件の場合は、事前に住宅診断士(ホームインスペクター)に劣化状況を診断してもらうと、リフォームや手直しの目安もわかる。ただ、立地や構造が特徴的な物件もあり、通常よりリフォーム費用が高額になる可能性もある。

 個性的であるがゆえに「その家特有のトラブルが起きることもある」と指摘するのは、シティーデザインの鳥居賞也代表取締役だ。過去に仲介したリゾート物件では、敷地内を人が頻繁に通ることに購入者が悩まされたケースがあったという。こうした問題に対処してくれるかは「不動産屋次第」だそうだ。

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 不動産情報サイト「SUUMO」の池本洋一編集長は「買う場合でも造る場合でも、メンテナンスやトラブル対応も考えて判断した方がいい」と、物件に入れ込み過ぎないよう助言する。提案内容や説明について他の業者からも意見を聞けば、より客観的に判断しやすくなる。

 特に建築の相見積もりでは「割引にどれだけ根拠があるかを見定めるべき」と指摘。「施工内容や完成後のメンテナンス、提案力などを総合的に判断するように」と説く。限りある予算でこだわりを実現するには、手間暇や一定のデメリットを覚悟する必要がありそうだ。

(金沢支局 中谷庄吾)