結局先進国と言われる人たちは、どこへ行こうとしているのだろうか。
そんな「右か左か」では片付かない問題だが、それでも「大きな方向性」はどちらに傾こうとしているのか。
米大統領選での波乱が示すように、そうした「方向性」をまず先進国がようやく「悩んでいる」というのが今なのかもしれない。
「EUは壮大な試み」と言われ、イギリスの離脱が起きた。
トランプはTPPを意に介さぬという。
遠い将来には、「地球一国」に収斂して行かざるを得ないと思うが、「そこ」へ至るプロセスを、あらゆる国のリーダーが見据えていることが必要だと思う。
「市場を取り合う企業」の問題とは違う、やはり「本当の政治課題」について国レベル、地球レベルの議論がいよいよ始まる予感がする。
「切り崩し工作」とかちょっと古く感じないだろうか。
TPPに手詰まり感 中国、切り崩し工作
2016/11/21 1:30
【リマ=河浪武史、八十島綾平】環太平洋経済連携協定(TPP)の存続に向け、米国は加盟11カ国による「外圧」でトランプ次期大統領がTPP撤退を翻意する展開に望みをかけるほかない。日本政府内では「発効も、消滅もしない状態が続けば御の字」との手詰まり感も漂う。中国はアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現を掲げ、新たな貿易秩序作りの主導権獲得に動き始めた。「TPPに米国は不可欠だ」。オバマ大統領が11カ国首脳を招待して首脳会合を開催したのは、米国議会に承認を強く促すよう求めるためだ。
当のトランプ氏も、選挙後はTPPへの言及を避けている。商務長官候補にはTPP推進派の実業家ウィルバー・ロス氏も浮上しており、「現実路線に転じる可能性がある」(日本の通商交渉筋)との声もある。だが、選挙戦の旗印の一つだったTPP撤退をすぐに転換できるとも思えず、長期戦に期待をつなぐ向きもある。
「しばらくは騒ぎ立てないのが賢明。発効が2年後か3年後か分からないが、現状維持できれば今はそれでいい」。日本政府のTPP政府対策本部幹部はこう話す。
トランプ氏が公約通り、就任初日に「撤退」を宣言すればTPPはつぶれる。「いま国内手続きをやめればTPPは完全に死んでしまう」と各国に呼びかけた安倍晋三首相。次善の策は、11カ国による必死の外交努力を通じて「TPPが発効せず、死にもしない状態」を醸成することだ。
米では2007年に妥結した米韓自由貿易協定(FTA)に反対を主張していたオバマ大統領が就任後、一転して同協定の成立に動いた。当時は一部の分野の再交渉を経て、4年越しで批准にこぎつけており、トランプ氏が完全否定しないうちはかすかな望みも残る。
反TPP派の急先鋒(せんぽう)である米自動車業界を除けば、米産業界にもTPP推進への期待は根強く、今後、賛否両方の勢力が激しくロビイング活動を展開していくのは間違いない。
協定が発効しない間も「TPPが生きてさえいれば、高度な貿易の規範としての力は発揮できる」(経済産業省幹部)との声もある。
TPPは電子商取引の促進や知的財産の保護などのルールを明確に決めた初の多国間FTA。モノではなく、データやサービスなど「形のない資産」のルールを整備したことに大きな価値があった。
TPP以外にもアジアでは複数の多国間協定が交渉過程にある。TPPが「ひな型」として、たとえ発効はしていなくても一定の役割を果たしていることになる。
もっとも数年単位の棚ざらしとなると、日米を除くTPP参加国が「トランプ氏の翻意を待ち続けられるとは限らない」(米通商当局者)。アジア太平洋圏では米国が参加しない東アジア地域包括的経済連携(RCEP)も交渉中で、その主役は中国だ。米政治の「空白」を逃すはずがない。
中国はTPPのような高度な自由化よりも、アジアの途上国も巻き込みやすいより低いレベルの協定を志向している。アジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席するため18日にリマ入りした習近平国家主席は、ベトナムやフィリピンなどTPP参加国・参加希望国の首脳と立て続けに会談。アジア太平洋各国が参加するFTAAP構想を「断固推進する」と語った。閉幕後には、ペルーのクチンスキ大統領とも会談する。
RCEP、TPPのいずれの陣営も、異なる経路ながら最終的にはFTAAPを目指している。中国は自ら主導するRCEPが中核となって将来、FTAAPに発展させていくシナリオを描く。
クチンスキ氏は11日、「米国を外し、新たな環太平洋での協定を構築すべきだ」と早々に口にし、現在のTPPの枠組みにこだわらない考えものぞかせた。米政治の移行期をにらみ、中国によるTPP参加国の切り崩し工作は強まっており、日本政府が見込む数年にわたる“塩漬け作戦”が功を奏する保証はまだない。