AIの日本第一人者、松尾豊氏の記事より。
生き方とか仕事のスタイルとして。
「ある一つのことを突き詰める」というのがある。
徹底的に尖って。
もうできればその辺とか、東京とか、世界とかにも「ここまでやる奴は…」というような道。
何もAIの世界的権威とかばかりではない。
街中の料理人にもそうした「ひた向きな人」はいる。
案外ホワイトカラーには少ないようだ。
多分「職人気質」からは少し遠いからだろう。
「営業の職人」とか「人事の職人」なんてあまり聞かない。
けれど「製造ラインの職人」というのはいる。それもたくさん。
「ある程度書けるようになってくると今度は『研究だけでは社会にインパクトを与えられない』と思うようになりました。
やっぱり論文を書くよりもグーグルをつくった方が偉いわけで。
グーグルのような大きなビジネスができると、研究者をたくさん雇って、研究開発もできるし、それがまたお金につながって、グルグルと再投資が回るという。仕組みをつくったものが勝つという勝負に変わってきたのだなと思いました」
論文よりもgoogle。
稼いで研究する。
それがまた金を生む。
お金と職人の循環だ。
「産業と学術の再投資のループの仕組みをつくろうと…」
職人(実装)と、研究者と、商売人。
これがこれからのキーワードのようだ。
今の自分の世界にも案外当てはまるのではないだろうか。
気骨のAI第一人者が「スーツ」を勝負服に選んだワケ 東京大学大学院 特任准教授 松尾豊氏(上)
2018/11/17
着用のスーツは「AZABU TAILOR」。綾織りのカバートクロスを用いた3ピースは一見クラシックだが、実は軽量で、ナチュラルストレッチやはっ水機能も備えた「テック」な側面も併せ持つ。艶やかな光沢感も、世界で活躍する男に相応しい。同生地を用いた3ピーススーツは7万2000円〜〈オーダー価格〉/麻布テーラー(麻布テーラープレスルーム)。 着用の時計は「GRAND SEIKO」ヘリテージコレクション「SBGJ201」。67万円(セイコーウオッチお客様相談室) シャツ1万9500円〈オーダー価格〉、チーフ2500円/以上麻布テーラー、タイ1万5000円/ブルーステラ(以上麻布テーラープレスルーム)
「チャレンジを纏(まと)う=スーツ」をコンセプトに、「挑戦し続ける人」を表彰する賞として、日本経済新聞社の「NIKKEI STYLE Men's Fashion」と世界文化社の「MEN'S EX」が共同で今年新設した「スーツ・オブ・ザ・イヤー」。そのイノベーション部門の受賞者、東京大学大学院の特任准教授、松尾豊氏は人工知能(AI)研究の第一人者。松尾氏に「チャレンジ」と「装い」について聞いた。
――スーツをよく着用されているそうですね。
「もともと人工知能の研究分野というのは、シリコンバレーのカルチャーみたいな感じでジーンズ、Tシャツといったようなカウンターカルチャー(対抗文化)系なんです。なので人工知能学会というのは服装を気にしない、というよりスーツで来ると怒られるような学会なんです。『何おまえスーツで来てるんだよ』みたいな。それはそれでリベラルな感じでいいのですが、私としてはむしろ『スーツを着たら怒られること自体がおかしい』『制服が逆になっただけじゃん』と。『カウンター・カウンターカルチャー』として、スーツを着ていたんです」
「もちろん学生のころはTシャツ、ジーンズが多かったのですが、大学院に入り、就職してという中で、徐々にスーツが増えていきました。『何か松尾君はいつもスーツだね』といわれることは多かったですね」
■そもそも「服装にはこだわらない」
「そもそもそんなにこだわりはないというか、カウンター・カウンターカルチャーなので、そもそも『服装にこだわらない』という意思表明なんですが、一方でスーツはそもそも人が格好よく見えるようにできているので、着ないと損ですよね」
「Tシャツ、ジーンズでカウンター性を発揮しなければならないということは、格好よく見えることを減らして自己主張しているわけですよね。普通ならスーツを着ても自己主張にはなりにくいはずなのですが、人工知能のコミュニティーはカウンターカルチャーがデフォルトなので、『スーツを着ることで自己主張できるなんて両得だな』と思ってスーツを着ていました」
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――スーツを着る上で何か気をつけていることはありますか。
「TPO(時・場所・場合)でしょうか。例えば、学会ではそうは言ってもスーツだというだけで目立ってしまうので、ちょっとおとなしい感じにしようとか。テレビに出るときや、大勢の前でしゃべる重要なイベントのときちょっと明るめで、派手なやつにしようとかいうことはありますね」
――流行を気にしますか。
「買うときは聞きますね。最近はどうなんですかっていうのは、聞いたりします。(ファッション誌は)美容院などで見ます」
――ここぞという場面で着る「勝負スーツ」はありますか。
「ありますね。最近は紺のスーツが多いですね。それも時期によっても違います。新しい勝負スーツがワードローブに加わると、それまで勝負服だったスーツが、普通のスーツに成り下がっていくので(笑)。著名な経営者に会うとか、政府首脳と会うとか、そんな感じのときに着ています」――ネクタイはいかがですか。
「ネクタイは赤系が割と多いですね。あまり理由はないのですが、赤の方が好感度が上がるらしいので。アメリカの大統領選でも赤いネクタイをよく見かけますよね。『ああそうか、それじゃ赤でいいや』と。昔から服は赤がわりと好きでした。自分でなんとなく『赤が似合うな』と思っていて。赤いネクタイは何本も持っていますね」
■「国際的に通用したい」との強い思い
――これまで最も情熱を持って打ち込んだこと、最大のチャレンジだったことは。
「時期によって違っていて……。学生から大学院、その後、産業技術総合研究所(産総研)で研究員をしていましたが、そのあたりは本当に研究に没頭していて、朝から晩までずっと研究していました。その後、アメリカのスタンフォード大学に2年間行ったのですが、国際的に通用したいという強い思いから、そのときはとにかく論文を出そうと、論文をずっと書いていました」
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「ある程度書けるようになってくると今度は『研究だけでは社会にインパクトを与えられない』と思うようになりました。やっぱり論文を書くよりもグーグルをつくった方が偉いわけで。グーグルのような大きなビジネスができると、研究者をたくさん雇って、研究開発もできるし、それがまたお金につながって、グルグルと再投資が回るという。仕組みをつくったものが勝つという勝負に変わってきたのだなと思いました」
■産業と学術の再投資のループをつくる
「その後、日本で東大に戻ったわけですが、そのときからこの10年ほど、『産業と学術の再投資のループをつくる』ということをテーマにやってきました。特に最初のころは自分でスターアップをつくろうと一生懸命やっていましたし、その中で事業をつくることの難しさを非常に感じました。企業と連携した共同研究についてはだんだん上手にできるようになってきました」
「2012年ごろから特にここ3、4年、ディープラーニング(深層学習)の技術がすごく伸びてきています。これは日本全体にとっても非常に大きなチャンスだと思います。まさに産業と学術がうまく連携しながらやらないと世界を相手に勝つことはできません。今はそういう勝負どころだと思うので、産業と学術の再投資のループの仕組みをつくろうと、懸命にやっているところですね」
――インキュベーターとしての役割を担うことは学者にとってリスキーではありませんか。
「わたしがやっていることは基本的にグローバルスタンダード(世界標準)なんです。スタンフォード大の先生がやっていることはほとんど一緒で、研究して、教育して、企業と連携する。その中でベンチャーのインキュベーションをしていくというのは一連のバリューチェーン(価値の連鎖)なのです。グローバルスタンダードなのですが日本でやる人が少ないので、何か変わったことをやっているように見えるということだと思います。理解されにくいのかもしれませんが、わたしはこれが大学のあるべき姿だと思っています。こうした仕組みを日本でもつくりたいということですね」
1975年生まれ。東京大学工学部電子情報工学科卒。同大学院博士課程修了後、産業技術総合研究所研究員に。スタンフォード大学客員研究員を経て、2007年より東大に。
撮影/筒井義昭
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