藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

認知症とともに

*[次の世代に]成熟社会の始まり。
イオンやヨーカ堂認知症サポータを養成し始めているという。
ヨーカ堂はすでに7万5000人になるという。
実際の店舗での出来事がきっかけには違いないが先進的だ。
 
子供が多い場所では、ぶつからないように歩くのに苦労するが、認知症が1200万人時代に突入するとどこの街中も「不意に立ち止まったり、急に違う方向に進む老人」で苦労することにななると思う。
でそうしたお年寄りはみんなでカバーするしかない。
 
一歩外を出れば「五人に一人」が認知機能に何らかの不自由を抱えている人になる。
いちいち認知機能検査をするわけにもいかず、近いうちに高齢者は「認知機能度票(もっとソフトな名前になると思うが)」を携帯することになるだろう。
買い物とか契約とか選挙の投票とか「認知症と触れ合う社会」の始まりである。
 
 
認知症対策は競争力 要員育成するイオン、ヨーカ堂
 
2019年9月24日 2:00

 
イトーヨーカ堂は店舗で来店客も参加できる認知症サポーター講座を開いている

日経ビジネス電子版

多くの企業にとって、高齢者の認知機能が下がることへの対応は喫緊の課題になりつつある。中でも早くから危機感を強めていたのが、毎日多くの高齢者を迎えるGMS(総合スーパー)だ。
 
都内のあるイトーヨーカドーの店舗で3年ほど前、毎日来ては会計をせずに商品を持って帰ってしまう高齢女性がいた。当初は万引きを疑い、警察に相談したという。その場は収まったが、後日にまた来店して、会計をせずに帰ってしまう行動が続いた。
 
「もしかしたら認知症かもしれない」。従業員が気づき、地域の包括支援センターに連絡。女性は独り暮らしで、認知機能の低下が疑われるにもかかわらず、介護保険の申請ができていないことが判明した。包括センターが介在したことにより、その後は介護保険を使ってヘルパーと一緒に来店するようになった。
 
対応したのは認知症の基礎知識や特有の行動を学ぶ「認知症サポーター」と呼ばれる民間資格を持った従業員だ。小田急電鉄で沿線の駅員のうち870人が取得するなど公共交通機関でも広がっているが、GMSの取り組みは先行しており、規模が大きい。イトーヨーカ堂は2015年から資格取得のため社内研修を実施している。資格を持つ従業員は19年9月時点で8500人を超えている。
 
サポーターを増やすと同時に、店舗は地域の自治体と関係を強めてきた。高齢者の支援拠点である地域包括支援センターとのつながりができたことで、家に帰る道が分からなくなってしまった高齢者への対応など、「以前なら警察に通報していたケース」(強矢健太郎イトーヨーカ堂経営企画室マネジャー)で協力し、円滑に家族に引き渡すような対応につなげている。
 
イトーヨーカ堂にとってサポーター養成は、「人材つなぎ留めのツールにもなっている」(強矢氏)という。パート従業員は40代以上が多く、介護が身近な問題だ。家族に認知症の人がいない場合でも、研修を通じて近い将来どんなことが自分の周囲に起こり得るのかが分かり、すでに介護している同僚への理解が深まる。「親の介護にも役立つ話だった」という感想が寄せられる養成講座は「研修としては珍しく人気がある」(強矢氏)という。
 

「安全な店」が競争力に

認知症サポーターの養成で先行しているのがライバルのイオンだ。07年から店舗で認知症対策に乗り出し、国内企業最大の7万5000人以上のサポーターを養成済み。サポーター養成講座の講師資格を持つ社員も900人いる。
 
「これから認知症のお客様と接する場面が増えるのは間違いない」。07年当時、イオンの顧客対応の部署に所属していた塚田公香氏は各地の店舗から「認知症のようなお客様がいる」という相談を受けていた。自身が顧客の問い合わせの電話に直接応対した際も、何度もかけてきて同じ内容を繰り返し話す人がいる。認知症の顧客が増えていると実感していた。

 
イオンは国内企業で最大の7万5000人以上の認知症サポーターを育成している
塚田氏は当時できたばかりの認知症サポーターの講座を自身が受けてみた。認知症と診断されても普段から外出する人が多かったり、見た目だけでは判断できなかったりと、「認知症について全く分かっていなかった」(塚田氏)ことに気づいたという。
 
家に帰れなくなってしまったり、その場で商品を開けて食べてしまったり、ずっと同じ場所に立ち続けていたり。不特定多数の顧客に対応する小売業には特有のトラブルがある。それを踏まえたサポーター養成講座では、困った行動に対する個々の正しい対応を暗記するのではなく、ある状況で認知症の人はどう感じているかという原則を学ぶ。
 
認知症の人は「起きたことは忘れるが、その時の感情は覚えている」という傾向がある。売り場で商品を食べてしまった高齢者に対して、店員が怒鳴ったり引っ張ったりしたら、食べたことは忘れてしまい、「嫌な思いをした」という感情だけが残る。それを知ったうえで、それぞれ行動が異なる目の前の顧客にどう対応するのが望ましいのかを考える。
 
講座を受けた従業員からは「今まで正しい知識がないまま変な対応をしていたことが悔やまれる」「普段の接客を見直すきっかけになった」といった感想が挙がる。塚田氏は「もしかしたら認知症だからこんな行動をしているのかもしれないという可能性を頭に入れ、想像力を働かせることが、いい接客につながる」と話す。
 
イオンは高齢者が買い物をできるだけ長く続けられるようにし、家族も安心するような安全な空間を提供したいという。認知症を知り、サポートできる従業員をその要と位置付けている。CSR(企業の社会的責任)の観点からの取り組みだが、地域の課題で頼られる存在になれば、ビジネスにもプラスに働くはずだ。
 
日経ビジネス 庄司容子)