藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

まだまだこれからマイスター。

*[ウェブ進化論]人と技術。
日経より。
工作機械が効率よく稼働するように工具を調整、交換する作業は熟練技術者の経験と勘に頼る。
町工場の強みである一方で、技術者が退職すると失われてしまう危うい長所でもある。
田口紀成氏はAIの活用で「熟練職人に頼っていた仕事がアルバイトでも代替できる」と話す。
(中略)
これで1日あたりの停止時間が60分減り、50%だった製造ラインの稼働率が90%弱に跳ね上がった。
(中略)
180社ある導入先の8割が中小企業で、導入前は「原価の把握すらできていなかった企業がほとんど」(木村社長)という。
まだまだ、日本の中小企業の強みはありそうだ。
「職人技+IT」の本領発揮はこれからではないだろうか。
そのうち宮大工とか、土木作業とか、大学の基礎研究なんかにもどんどん浸透していくのだろう。
そう考えると「IT/AIと人間」の相性はまだまだ良さそうだ。
 
どんどん「人の技」を超えていくのが「テクノロジーという道具」だと思う。
ITが"人のはるか先"を行く時代はそう遠くないのではないだろうか。
人がそれだけ「道具」を使いこなしていくのだ、とも思う。
 
町工場の危機をAIが救う 新興企業が強力サポート
2019年4月11日 21:30
製造品のコストを正確につかむ「原価計算」や生産設備を最適に動かす調整はメーカーのコスト競争力を左右する重要な工程だ。しかし中小企業では作業を人手や熟練者の勘に頼り、効率が悪い。そんな現場の生産性改革にスタートアップ企業が動き出した。IT(情報技術)を活用した「コストテック」が日本のものづくりの足腰を支える中小工場を救う。
見た目とIT活用の実態がまるで異なる町工場が東京都青梅市にある。自動車用パイプ加工の武州工業の本社工場だ。一見するとパイプを曲げるプレス機が立ち並ぶ普通の作業現場だが、目をこらせばプレス機の可動部分には直径10センチほどの白い箱が付いている。

1時間単位で原価を把握

箱の正体はスタートアップのKOSKA(コスカ、東京・港)の加速度センサー。計測した加工時間や生産数量などを近くに設置した親機で計算し、ネット経由でコスカのサーバーに送る。
検査工程には重量センサーを置き、カゴに入った部品の重量の変化で検査済み数量や作業時間を算出する。これで製品や工程の実績原価をリアルタイム計算し、要因も分析する。結果はタブレットスマートフォンスマホ)で見られる。
「実績原価を素早く把握し、細かく管理できるのに驚く」(武州工業の林英夫社長)。タブレットの画面には工程ごとに実績原価や1時間単位の中断損失金額などがグラフで表示される。予算より原価が上がっている工程を見つけると林社長が現場に急行し、改善を指示する。「正確な原価も分からなかった以前とは様変わりだ」という。
同社は年商が16億円ほどの町工場。1年前に同業メーカーのタイ工場を視察すると、人件費は10分の1だった。「このままでは海外工場に顧客を奪われる」と危機感を抱き、新たなコスト管理の手法を模索し始めた。
そこで出会ったのがコスカの曽根健一朗社長。18年11月から同社のソフトを導入し、原価管理の自動化実験を始めた。
判明したのは意外な事実だった。低コストと思い込んでいた検査工程に想定以上の費用がかさんでいたのだ。正確な検査コストを上乗せして再計算すると「予想外に採算の悪い製品があった」
そこで人工知能(AI)の開発企業と組み、検査をAIで自動化するシステムづくりに動き出した。「1年後には日次決算のシステムに移行し、生産性を20%上げる」。林社長の意識はコスカとの出会いで一変した。
コスカの曽根社長は独学でプログラミングを学びながら一橋大学の大学院で原価計算を研究し、18年10月に起業した。システムは月額4万~5万円で提供し、まず約10社が導入する予定。町工場の強い味方だ。
18年版の中小企業白書によれば日本の中小企業の数は企業全体の99.7%を占める。そして中小工場の多くは様々な大手企業に部品を納入し、サプライチェーンを構成する。中小の収益改善は、日本の製造業全体の競争力向上に欠かせない。
工作機械が効率よく稼働するように工具を調整、交換する作業は熟練技術者の経験と勘に頼る。町工場の強みである一方で、技術者が退職すると失われてしまう危うい長所でもある。コアコンセプト・テクノロジー(CCT、東京・渋谷)はAIで交換すべき時期を正確に割り出し、コスト抑制を手助けする。
温度や振動を検知する50個前後のセンサーを工作機械のモーター部分などに取り付け、リアルタイムにデータを得る。熱の変化などから工具の摩耗具合やずれを推定し、AIが0コンマ1ミリメートル単位で縦横それぞれの工具の補正距離や交換時期を正確に指示する。

工具関連コストを2割削減

中堅切削加工会社が導入すると、工具関連のコストを2割以上も削減できた。以前は不良品の発生を避けるために実際の寿命より早く頻繁に工具を交換し、コストが膨らんでいたからだ。
金属の切削で不良が発生しないギリギリのタイミングまで工具を使い切ることは、コスト低減に直結する重要な課題。一般的な部品は製造コストのうち工具調達費だけで数%を占めるという。
コアコンセプト最高技術責任者(CTO)の田口紀成氏はAIの活用で「熟練職人に頼っていた仕事がアルバイトでも代替できる」と話す。中堅企業から大手まで約30社で導入が進んでいる。
自社の製造現場で培ったコスト管理ノウハウを普及させるのはiスマートテクノロジーズ(愛知県碧南市)。電気街で買える安価なセンサーや通信部品を使い、中小企業の原価改善を助ける。
建築用ねじを手がけるトーネジ(茨城県つくば市)は18年3月、3台の機械にiスマートの装置を導入した。それまでは生産量しか数えていなかったが、加工の待ち時間や機械の停止時間も把握できるようになった。不具合を見つけるとビデオカメラで詳しい状況を撮影し、改善する。これで1日あたりの停止時間が60分減り、50%だった製造ラインの稼働率が90%弱に跳ね上がった。
iスマートは自動車部品製造の旭鉄工(愛知県碧南市)が16年に子会社として設立した。旭鉄工のラインに技術を取り入れると生産性が34%上昇し、年間1億円以上の労務費を減らせた。「これは売れる」と直感し、外部への販売を始めた。
設備に付けるセンサーとデータの送受信機、クラウドシステムをまとめて月間約4万円で提供する。トヨタ自動車出身の木村哲也社長らが現場で指導するのも特徴だ。
180社ある導入先の8割が中小企業で、導入前は「原価の把握すらできていなかった企業がほとんど」(木村社長)という。それでも導入後は生産性が平均で約1割改善した。この1割が、低コストの海外工場に対抗する大きな武器になる。
(企業報道部 鈴木健二朗、京塚環)
日経産業新聞 4月9日付]