藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

行政の生まれ変わり

*[ウェブ進化論]お役所からの脱却。
煩雑な行政手続きは日本企業の競争力の足かせだ。
まったく。
日本はいろんな制度が緻密に整備されているから、あらゆる秩序や品質が保たれている代わりに「柔軟性」は相当低い。
もはや住民票とか戸籍とかの役割とか、各種申請とか届出とか、規制とか許認可とかが錯綜して混乱している。 
自分は行政の手続きは全てシステム化できる、と思っているが、「行政の世界にいる人たち」にはそれはご法度のようだ。
毎年変わる法律と制度を「人がハンドリングすること」こそ行政の役割のような風潮があるが、それは大きな誤解だし、実にもったいない。
人は「(情緒的な)判断を要する難しいこと」をするべきで「手続きの流れ」を担当するべきではない。
しかもよく間違うし。
日本は世界のビジネス環境調査で39位に甘んじているそうだが、それこそ一周回って「大改造」する時期に来ているのではないだろうか。
 
今はまだ役所の窓口で「住民票とか助成金などについて言い合う風景」は無くならないが、ほとんどは自動化されるべきだ。
人はつい「分かりやすくて簡単な仕事」を受け入れてしまう。
ともすればそれを機械に任せることに抵抗したりもする。
 
そうした観点ではなく。
行政に"いかに創造性を持たせるか"、というのはこれからのテーマではないだろうか。
「単なる事務方」ではない行政のあり方を期待したい。
結局は政治家の問題なのかもしれないが。
 
 
行政手続きデジタル化、新興勢「ガブテック」が後押し
2019年7月2日 4:30
あらゆる行政手続きを原則として電子申請に統一する「デジタルファースト法」が成立し、行政機関がようやくデジタル化へ本格的に取り組み始めた。これまで行政手続きなどの「役所仕事」は紙を使った手作業が大半を占め、産業界と比べて効率化が大きく遅れてきた。行政機関(ガバメント)の取り組みを後押しするのがスタートアップ企業の「ガブテック」だ。

書類の8~9割に不備

神奈川県鎌倉市の市役所では春の引っ越しシーズンになっても、転出入の届け出窓口に長い行列ができることは少ない。その秘密は本庁舎1階の入り口近くに置かれたタブレット端末にある。来庁者はスマートフォンタブレットにかざし、プリンターから出てきた書類を手に窓口へ向かう。
転入者はあらかじめ自宅でスマホに住所や氏名など必要な情報を入力しておく。その方法も「世帯に養育中の子どもがいるか」「市内の保育施設に入所を希望するか」など、最大で29の質問に答えれば完了する。
この仕組みは行政手続き支援スタートアップ、グラファー(東京・渋谷)が提供するサービスだ。一般的に住民が役所の窓口へ提出する書類の8~9割は記入の不備があり、再提出や職員による修正が必要とされる。これが窓口前の行列を長くする一因だ。市民がスマホとの「対話方式」で事前に作っておくことで、手続きが円滑に進む。
鎌倉市は専用サイトで手続きに必要な書類や提出窓口を公開していたが、分かりにくかった。グラファーのシステムでは5分程度で書類が完成し、どの窓口に出せばいいかも表示される。5月に市内で転居した男性デザイナー(48)は「手続きが仕事の合間にすぐ済み、助かった」と喜ぶ。
鎌倉市役所が窓口で受け付ける申請や届け出などは1カ月に1000件を超える。行政経営課の橋本怜子担当課長は「書類の処理を効率化すれば、業務時間を軽減できる効果は大きい」と話す。職員の残業が減れば経費削減にもつながる。
グラファーのサイトは引っ越し以外に結婚や出生、氏名変更など8つの届け出の準備に対応し、4月だけで1500人以上のアクセスがあった。3月から実証実験として転出入に必要な一部書類の自動作成を始めており、今後は対応分野を増やしていく方針だ。
自治体がシステムを運用する負担は軽く、表計算ソフトに入力してアップロードするだけで書類を作る際の「対話」を更新できる。「地方自治体が自前で電子化を進めるのでは時間もコストも膨らんでしまう。我々のようなスタートアップならば素早く対応できる」。グラファーの石井大地社長は、こう強調する。

遅れるデジタル対応

日本の自治体のデジタル対応は遅れている。ICT(情報通信技術)や、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の実装について総務省が尋ねた18年度の調査では、回答を得た1618団体のうち「すでに取り組んでいる」は17%にとどまった。「関心はあるが、特に行っていない」が55%で過半数を占めた。
事業を進める際の課題や障害(複数回答)を聞くと、80%が「財政が厳しい」と回答。「担当する人員が足りない」も68%あった。低コストで誰でも運用できる仕組みが強く求められている。

欲しい情報を欲しい人だけに

「16年1月生まれのお子さまは3歳児健診の時期です」「集団健診は内科・歯科健診、育児の相談を行います」。千葉県市川市は3月から、対話アプリ「LINE」の公式アカウントで情報を発信している。この取り組みを裏で支えるのがチャットボット(自動応答システム)開発スタートアップ、モビルス(東京・品川)のシステムだ。
子育てや防災など4種類があり、市民は望む情報だけを受け取れる。子どもが生まれた年月を登録すれば自動計算で健康診断の通知も届く。モビルス石井智宏社長によれば「チャットボットを使いこなせない事業者は多い。ITに不慣れな担当者でも運用できるように設計した」という。
行政から中小企業への支援体制もスタートアップが変えようとしている。福井県美浜町の「海のホテルひろせ」が福井県補助金を申請した際に頼ったのは、クラウドシエン(広島市)の人工知能(AI)だった。
中小企業が支援を受けようと考えても補助金助成金、公的融資など幅広く、申請条件や提出書類などもバラバラだ。
クラウドシエンのオンラインサービスでは企業の従業員数や業績などを分析して8000件を超える公的支援から最適なものを選び出し、税理士ら手続きのプロも紹介する。「分析は最短5分で終わる。手続きにかかる時間を9割はカットできる」(神原翔吾社長)。海のホテルひろせの広瀬誠専務は「補助金助成金の詳細を知ることで、新事業に挑戦する意欲がわいた」と振り返る。

国は法改正の努力を

煩雑な行政手続きは日本企業の競争力の足かせだ。世界銀行による各国のビジネス環境調査で、上位にはシンガポールデンマークなど行政のデジタル化に積極的な国々が並んだ。日本は39位で、法人設立や納税の手続きが難しいことが順位を下げる要因になった。スタートアップの助力で効率化できれば日本の競争力向上にもつながる。
それでもエストニアなどの「デジタル先進国」は日本をはるかに超える速度で電子化を進めている。海外から企業や優秀な人材を呼び込むには国が法改正に取り組むことも必要だ。
(企業報道部 駿河翼)
日経産業新聞 2019年6月25日]