藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

イノベーションの本質。

日経より。
*[ウェブ進化論]想像力こそ
何となく。
過去にはない「画期的な新技術」こそがイノベーションだ、となんとなく思っているが、そんな新技術にそうそう出会えるものではない。

 自らがよほど研究に没頭している人でないとそんな機会はないだろう。

一方。
ソニー創業者の盛田さんの言葉は今にして実に示唆的だ。
盛田氏は発売10年の節目に社内で撮影された動画で、ウォークマンを「新しい技術はないが、技術をどう具体化するか、知恵によって新しい産業ができることを実証した」と評した。

手元にある技術をまとめあげる工夫でイノベーションを起こしたのだ。

「想像をはたらかせることで、世の中に新しい便益、喜びを提供することができる」――。
そのメッセージは今なお重みを持つ。 
「手元にある技術をまとめ上げる工夫」
「想像をはたらかせることで、世の中に新しい便益、喜びを提供することができる」
これなら何か突出した技術のない自分たちでもできるのではないだろうか。(と思いません?)
 
音楽を。
それも「質のいい音」を日常携帯できればどれほど楽しいだろうか。
そんな想像は今の自分たちにもできそうだ。
 
街中で、観光地で、居酒屋で、あるいは仕事場で「こんなことがあればいい」はまだそこらじゅうに転がっている。
ビジネスチャンスは無限にありそうだ。
 
ウォークマンに学べ 40年目に響く盛田氏の「教え」
2019年7月1日 4:30
ソニーの携帯音楽プレーヤー「ウォークマン」が7月1日、1979年の発売から40年を迎える。2人の創業者の思いが形となり、音楽を部屋の外へ持ち運ぶ文化を築いた。2000年代以降は米アップルの「iPod」やスマートフォンiPhone」が台頭。市場が激変する中で、不惑を迎えたウォークマンは、何をもたらし、どこへ向かうのか。
【全編映像】「人々の音楽を楽しむ習慣、あり方を変えた」 盛田昭夫氏メッセージ
ウォークマンは人々の音楽を楽しむ習慣、あり方を変えた。我々は誇りに思って良い」。ソニー創業者のひとり、盛田昭夫氏(1921~99年)の言葉だ。
ウォークマンの登場以前、音楽は家の中や車の中で楽しむものだった。ラジカセを肩に背負う若者もいたが、そんな時代にウォークマンを世に問うたのが、盛田氏と共同創業者の井深大氏(1908~97年)。長年ウォークマン事業を率いた高篠静雄元副社長は「井深さんの夢と、盛田さんのトップダウンの力で作り上げた」と振り返る。
飛行機での出張が多かった井深氏は機内で音楽を楽しむために手軽に持ち運べるプレーヤーを提案。盛田氏も気に入り、一気に事業化へと舵(かじ)を切った。

トップダウン

「音楽は生活に欠かせないが、外に出たら音楽がない。その状況を変えるんだ」。盛田氏は高篠氏らエンジニアを会議室に集めて熱弁を振るった。常識だった録音機能を省き、ただ音楽を聴く機器として提供する。社内外から疑問の声が出たが、「盛田さんが企画担当のように振る舞い大号令をかけた」(高篠氏)
通常の開発期間は1年半ほど。しかし、盛田氏が設定した発売日まですでに半年を切っていた。肩掛け型録音機をベースに、中の機構も変えずに回路のみをステレオに変更。量産体制の構築に苦労したが、何とか発売までこぎ着けた。
都内の代々木公園でスタッフが音楽を聴きながらスケートボードに乗る、異例の発表会を経て発売。初月の販売台数は3000台にとどまった。エンジニアらは総出で、歩行者天国国鉄(現JR)山手線に製品を持ち込み、8~9月に入ると一気に火が付いた。
初号機の発表会。スケートボードで「音楽を持ち運ぶ」スタイルを訴えた(1979年)
軽薄短小と使いやすさにこだわった」。高篠氏が証言するように、発売後も打ち手は続いた。ほぼ2年おきに設計を見直し、カセットテープケースサイズの「WM-20」(83年)などの新製品を投入。累計出荷台数は84年に1000万台、89年には5000万台に伸びた。他社の無数の類似製品とともに携帯音楽プレーヤーは世界に拡大。ウォークマンソニーのDNAを体現する製品となった。
メディア(記録媒体)の進化もけん引した。カセットテープでは音質や頭出しの機能に限界があったが、80年代にはCDが登場。ソニーは世界初のポータブルCDプレーヤーを84年に投入し、後に「ディスクマン」(CDウォークマン)と称した。92年にはMDウォークマンも発売。CDよりも小型で、編集がしやすい使い勝手の良さで支持を集めた。
しかし2000年代に入ると潮目が変わる。主役の座を奪ったのは、アップル。01年に発売した携帯音楽プレーヤー「iPod」だ。
そのiPodでさえ、iPhoneをはじめとするスマホの普及により以前ほどの勢いはない。通信速度が向上し、ダウンロードではなく、スマホからネットに接続して再生する「ストリーミング」が定着したためだ。「スポティファイ」など定額で使い放題の配信サービスが主流となり、記録媒体さえ必要としない世界が現実になった。
スマホがあればそれでいい」。そんな風潮に、ウォークマンも新たな方向性を模索する。そのひとつがストリーミングでは実現できない音質の追求だ。ウォークマンの最上位モデルは高音質なハイレゾ音源に対応。税別29万円。銅を削り出した筐体(きょうたい)など細部にこだわった。
ウォークマンの思想を受け継ぐ高級オーディオが、18年12月発売のDMP-Z1。税別95万円の据え置き型で、ヘッドホンで聴くスタイルで音楽ファンの話題を集めた。設計担当の松崎恵与氏は「ウォークマンと同じ基板レイアウトを使った」と明かす。また防水・防じん機能を持つワイヤレスヘッドホン「WF-SP900」は泳ぎながら音楽が聴ける。企画担当の井上千聖氏は水の中という厳しい条件を「技術の蓄積で実現した」。
イヤホン型プレーヤーで水の中でも音楽が楽しめる(ソニーのWF-SP900)
松崎氏や井上氏は20~30代。80年代の最盛期は知らないが、「ウォークマンへの憧れがある」という。40年にわたる栄光と挫折の歴史を経て、チャレンジが続く。
盛田氏は発売10年の節目に社内で撮影された動画で、ウォークマンを「新しい技術はないが、技術をどう具体化するか、知恵によって新しい産業ができることを実証した」と評した。手元にある技術をまとめあげる工夫でイノベーションを起こしたのだ。「想像をはたらかせることで、世の中に新しい便益、喜びを提供することができる」――。そのメッセージは今なお重みを持つ。
(企業報道部 岩戸寿)
日経産業新聞 2019年7月1日付]