藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

音と生活。


戦後の荒れ地で美空ひばりの音楽に心を癒された、とか励まされて頑張れた、という話はよく聞く。
日本人はまた、「カラオケ」の発祥地の民であり、またそれが各国に認知されてもいる。
音楽や歌は、なぜ「心」に影響するのか。
それはまた「言葉」ともどう違うのか。
言語を使う人類だからこそ、またそんな疑問もとても奥深いものがある。


どうも我われの聞く音楽は、脳の奥深く「扁桃体」という場所に行きつくらしい。
そしてその扁桃体は、「ホルモン」を作り出しているところだというのである。
つまり「悦びとか、恐れ」に反応する部分と同じらしいのである。
しかも「その効果」は絵や文字を「目から見て」の反応に比べてもより強いらしいのである。


音楽は、より感情の起伏に近い存在のようである。
文学や絵画、そして音楽を自分たちが「なぜか自然に求める欲求」というのは、どうも自分たちが現代を生きるにおいて必須に求める要素のようなもの、であるのかもしれない。


自分も最近、一人の時間をラジオ、CDその他の音楽で「埋めるような」生活をしている。
たまに「無音」の世界にいると、何か実に殺伐としていて無味乾燥な感じがするのである。


科学的な論理の解明はまた後進に託すとして、我われはもう少し日常生活に近い部分で「音楽と過ごす」ということを考えなおすべきなのかもしれない。
一度、意識的に音楽に浸ってみてはいかがだろうか。

(ナゾ謎かがく)音楽はなぜ心に響くの? 感情操る部分に信号届く
 空気の振動で伝わる何気ない音は、ひとたび旋律を作り和音を重ねると人の感情に訴えかける音楽に様変わりする。コンサートを聴いて感動し、一緒に歌って元気を出す。どうしてそんなことが起きるのか、最先端の科学技術が謎を解き始めている。



音楽を認知症予防などに活用する動きが広まっている(ぎふ音楽療法協会提供)
音楽が感情に及ぼす影響を調べる研究は、1980年代後半から活発になった。いまでは「聴覚野」と呼ぶ脳の横側の表層部分で音を感じ取り、脳の奥深いところにある「扁桃(へんとう)体」という場所にまで信号が行き届くことがほぼ突き止められた。


 扁桃体は、様々な生化学物質(ホルモン)を作り出し、喜怒哀楽の感情を調整する中枢部分と考えられている。音楽の生理作用に詳しい福井一・奈良教育大学教授は「音楽に反応する回路が、恐れや喜びに反応する回路と同じであることは重要な発見だ」と解説する。


人間にとって音楽を聴くことは、食べたり眠ったり子孫を残したりする本能的な行動に近いことを示すという。絵画や文学など他の芸術によっても感動し元気づけられることはあるが、その力は音楽の方がより強いと考えられる要因だ。


それを証明する実験も増えている。福井教授らは、音楽を聴いた人たちのホルモンの変化量を調べてきた。残酷な映像を見た後、気持ちを和らげる曲を聴いてストレス時に多く出るホルモン「コルチゾール」を測る実験では、コルチゾールの低下が確認できた。


ポピュラーやクラシックなど様々な音楽を聴いた男女の間で、男性ホルモン「テストステロン」に変化があるかどうかを調べた別の実験では、男性は音楽を聴くとテストステロンの値が下がり、女性の場合は上がる傾向が判明した。どのように解釈すればよいのか、まだ確定していないが「音楽を聴いた影響に男女差がある結果だ」(福井教授)。


音楽が脳にどのような変化をもたらしているのか数多くの証拠を積み重ねていけば、なぜそれが起きるのかを解明できるのだろうか。多くの研究者は仮説と実験を繰り返しながら脳の仕組みを調べていくしかないと考えている。


一方で、岐阜県などの自治体や介護サービス業者などが音楽の効果を福祉や介護などに生かす動きが広がってきた。研究と応用の現場が協力を深めることも大切になっている。

編集委員 永田好生)