藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

眠りとの付き合い方。

眠りの話。日経の記事をヒントに。
この年にして、最近になって「お酒を飲まないと翌朝が快適である」ということを改めて発見しているくらいで、(誰に言っても大した関心を持ってもらえないが)未だに週に半分は朝型になってみたり、週末は極端な夜型になってみたりして「睡眠怪獣」との格闘は続いている。

というかそこまで意識して「眠り」のことをどうこうしようと考えてこなかったのは我ながら不思議である。
皆さんはどうだろうか。

で人体実験を思いついた。
自分の体で、例えば夜10時に寝て朝3時ごろに起きるとか、
同じ5時間の睡眠を明け方に寝て試してみるとか、あるいは
徹夜してみるとか、好きなだけ寝てみるとか色々やり始めた。

人の体のリズムと暦日は一時間ほどはずれているというが、「必ずベストのコンディション」へと導く術は未だ見つかっていない。
(酒を飲まなければ楽、という定理しかないとは(嘆))

日経の記事には「眠いのに眠気を律して仕事をしていると健康を損ねる・・・」と書かれているけれど、それはともかく。

まずはそう意識せず、毎日の起床時間と就寝時間を記録してみる。
大事なのは「寝付きと寝起き」そして「日中の気分」も記録することだった。

そうしてみると、
10月31日(金)午前3:00就寝・・・寝付き30分要す。
11月1日(土)10:00起床・・・自然覚醒。起床時眠気なし。日中のコンディションA+。
とか
11月1日(土)午前2時就寝・・・寝付き悪く一時間要す。途中で温めた牛乳を飲む。
11月2日(日)午前8時起床・・・目覚ましあり。外出予定のため。日中のコンディションB-。
とかまあ日記みたいになってくる。

これを約ひと月ほど記録していると、何やらある種のパターンが導けることに気付いたのである。
(つづく)

睡眠不足に強い人は負け組 眠気に打ち勝つ力(1)
2014/11/4 6:30
日本経済新聞 電子版

ナショナルジオグラフィック日本版
今回のテーマは睡眠時間の個人差をもたらす第3の要因「眠気(睡眠不足)に打ち勝つ力」である。なんとも響きのよいタイトルだが、褒めそやしているのではない。なまじ睡眠不足に耐える力があると、むしろ健康的には社会生活上の問題が生じやすいため注意が必要なのだ。これから何回かに分けて日本人の睡眠不足の現状とそれがもたらすリスクについて紹介する。

■睡眠時間の個人差に影響を与える「眠くても寝ない」人の存在
これまで何度か説明したように、適正な睡眠時間は遺伝(体質)や環境(ライフスタイル)のバランスの中でおのずと決まってくる。しかし交通標識と同じで、それを守るかどうかは別問題だ。横断歩道ではきっちり信号を守るのに、睡眠についてはつい赤信号を見落としてしまう、時には「えいやっ!」とみんなで渡ってしまう、それが日本人である。

睡眠時間の疫学調査を行うと、3時間台から10時間台まで7時間以上の大きな開きが見られる。一方、健康生活を送るために体が最低限必要としている睡眠時間の個人差は2時間程度である(「健康のため譲れない眠り 『必要睡眠量』はどう測る」参照)。これに発達、加齢、性差、季節、ライフスタイル(活動量や食事など)の影響を合わせても到底7時間には及ばない。

では個人差の「残りの部分」はどうやって生まれるのか。答えは単純である。「眠くても寝ない」人が多数いるためである。怒らず読み進めていただきたい。「身長の個人差の一部はつま先立ちです」と言ってるようなもので、ムッとされるのも当然です。しかし実生活でみられる睡眠時間の個人差のかなりの部分は、この「眠気に打ち勝つ力」の個人差で生じているのである。理論的には「眠くないのに寝る」人もいて不思議はないが、実数は少ない(と思われる)。時折やる“ふて寝”はこれには該当しない。

■平日と休日の睡眠時間のギャップはどのぐらいか
それにしても人間とはなんと自虐的な生き物であろうか。体が必要とする睡眠時間を削ってまで活動するのは他の動物には見られない人間特有の”異常”行動である。この睡眠時間のフレキシビリティーが24時間社会を支えているとは言え、“持続可能性”という視点で見ると決して褒められた行動ではない。それは週末の寝だめ、いや借金返済の実態を見れば一目瞭然だ。

上の図はNHK生活時間調査(2011年)のデータから算出した日本人の平日と休日の睡眠時間の違いを示している。じーっと眺めると実に味わい深い。私などはこの図を肴(さかな)にして日本酒3合は楽しむ自信がある。データを片手にチビチビやっていると、我ながらつくづく変わり者だと思う次第である。

まず、国民全体が土日に思いっきり寝だめしているのが目に飛び込んでくる。日曜より土曜に寝だめが短いのは週休1日の人が引き下げているからで、そのような人は日曜だけで借金を返済するしかなく大変そうである。そもそも週休2日であろうが1週間分の借金を本当にチャラにできるか実に疑わしい。私たちが行った研究によれば確かに2日も寝だめすれば眠気は感じなくなるが、ストレスホルモンの増加やインスリンの低分泌など体がため込んだ睡眠不足の悪影響を解消するには不十分であった。そして週明けからまた借金を始める。まるで日本の国債のような状況である。

次に主婦の睡眠を見てみよう。旦那(有職者)に比べると週末の寝だめが少ないがナゼだろう…。休みでも炊事や洗濯で寝てられないのかな、と同情しかけたが、よく見ると平日は逆に主婦の方が長い。「あなた朝ご飯できたわよ」「お帰りなさい、お風呂にする、それともお食事?」では無理な話である。さすが家庭の大蔵大臣。借金が嫌で「まだ寝てる、帰ってみればもう寝てる」を実践しているのか…。共働きの主婦のデータが気になるが残念ながら見つからなかった。この種の話しは深掘りすると危険なので、次へ。

無職の人はさすがに睡眠不足がないようだ。ものの見事に平日と週末で差がない。しかし、借金のない生活が無職でないと達成できないとはなんたる皮肉であろうか。一方、同じ無職ながら学生さんの寝だめの大きさは圧倒的である。平日もそれなりに寝ているが全く足りないようだ。若くて運動量も基礎代謝も睡眠のニーズも大きいためである。やっぱり「燃費が悪いなぁ」(「ゾウとネズミ、よく寝るのは…睡眠時間は『燃費』次第」参照)。

■寝不足社会で「眠気に打ち勝つ力」がある人は勝ち組か
それにしても、老若男女かなりの国民が睡眠不足の帳尻を合わせようと悪戦苦闘しなければならない社会は異様である。誰が決めたのか知らないが、現代の社会スケジュールは朝型でかつ睡眠時間がやや短めの人向けである。でもそんなラッキーな人は少数派である。大部分の人は週末の寝だめで何とかやり繰りしているのが現状だ。そんな生活を例えてみれば、倒産するのが明らかなのに会社を整理できず借金を重ねる自転車操業と同じで、先は見えている。

ここで今回のお題に戻ろう。このような寝不足社会で「眠気に打ち勝つ力」がある人は勝ち組だろうか。明け方に眠気をこらえて原稿を書いている身としては思わず「イエス!」と答えたくなるが、正解は「ノー」である。それはナゼか…。なまじ眠気に打ち勝つ力があると、体とココロの赤信号が点灯しているのに気付かず、睡眠不足に対するリスクヘッジを怠ってしまうのだ。痛いかゆいがない病気は発見が遅く手遅れになりがちなのと同じである。


さらには変に自信を持ってしまうと、赤信号に気付いていながら「渡りきれる!」と過信して横断歩道に踏み出してしまう。信号無視をしても交通事故に遭わなければ良いのだが(編集部注:良くありません!!)、残念ながら睡眠不足によって健康被害に遭遇する確率は交通事故より圧倒的に高い。もっと詳しい説明は別の回に譲るとして、今回は交通事故に絡めて一例を挙げるに止める。

■パフォーマンス急降下! 酒気帯びよりひどい寝不足の害
朝目覚めてから仕事をこなして16時間以上経過すると(8時起床なら深夜0時以降)、それまで踏ん張っていた注意力やパフォーマンスが一気に低下することが知られている。その低下度たるや酒気帯び運転で検挙されるレベル(血漿中アルコール濃度0.03%)を大幅に超え、その後もどんどん低下してゆく。実際の交通事故もまさにその午前0時から明け方にかけて急増する。


普通なら危険を感じパーキングエリアで仮眠をとるシチュエーションである。しかし睡眠不足に打ち勝つ力がある(と思っている)人は運転を続けてしまうのだ。ポイントは眠気を感じていなくても注意力やパフォーマンスは着実に低下してゆく点である。その夜は事故に遭わずに逃げおおせても、長年続けていると心身機能にさまざまな問題を抱えることになる。例えば心筋梗塞脳出血の罹患(りかん)率は睡眠不足で急増する。こちらもまさに死亡事故である。


次回は引き続き「眠気に打ち勝つ力」についてお届けする。ごく最近、子供たちの睡眠不足に対処するため米国小児科学会からユニークな提言が出されたので取り上げたい。またその趣旨に沿って行われた教育現場での取り組みも合わせてご紹介する。そろそろお尻に火がつき始めた受験生や進学率を高めたい校長先生は必見です!


三島和夫(みしま・かずお)
1963年、秋田県生まれ。医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。同大精神科学講座講師、同助教授、2002年米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員准教授を経て、2006年6月より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事、日本生物学的精神医学会評議員JAXAの宇宙医学研究シナリオワーキンググループ委員なども務めている。これまで睡眠薬臨床試験ガイドライン、同適正使用と休薬ガイドライン睡眠障害の病態研究などに関する厚生労働省研究班の主任研究者を歴任。『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(川端裕人氏と共著、日経BP社)、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(編著、じほう)などの著書がある。

[Webナショジオ 2014年9月18日付の記事を基に再構成]