藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

仮説と検証。


日本電産、永守氏のインタビュより。
幾つかの会社経営のエッセンスが凝縮されていると思う。

まずは労働時間と効率の矛盾について。
ひたすら労働を時間で計る、という今の法制度についての見解である。

 「創業当初は優秀な人材を採れず、大手に対抗するには長時間働くしかなかった。」
「今はできるだけ生産性の高い人に仕事を回し、昇進や賞与で報いるようにしている。同じ仕事をするのに能率が良く早く仕事を切り上げる人より、効率が悪く長時間働いている人に残業代が付き収入が多くなるのはおかしい。」

次に日本と国際化について。

年俸制で世界で転勤があるグローバル幹部と、国を越えた転勤はなく地域ごとの雇用慣行や文化を適用させるローカル社員とに分ける」

続いて人材の中途採用について。

 「昨年、電機大手から部長級だけで約100人採用した。中途採用は続けるが、生え抜き社員も重要だと気づいた。社風になじむのには時間がかかるからだ」

そして経営幹部の育成について。

「これまで高学歴者なら経営ができると錯覚していた。経営には知能指数(IQ)と、仕事への取り組み姿勢や執念といった心の知能指数(EQ)を併せ持った人材が必要だ。これは自社で育成する」」

経営は試行錯誤の繰り返し、だと思う。
労働と報酬についてのこと。
人材の中途・新卒採用のこと。
人材の国際化のこと。
経営の後継者育成のこと。
どれについても多事争論で、背反する見解がある。
それをどのような経営思想・哲学で採択してゆくのか。

「周囲をうかがいながらなんとなく」ではなく、その成否はともかく自分の責任でトライしてゆく。
理論先行ではなく実勢並行型だ。

経営者の傲慢や独善ではなく、軸を定めてどんどん歩を進める。リーダーシップ。
永守さんを見ているとそんな感じがする。
一年中変わらぬ緑のネクタイを見てもその貫徹力を感じてしまう。
いつ聞いても小気味の良い永守節なのである。

永守重信 日本電産会長兼社長 「モーレツ」変わる?
2015/1/27 2:00日本経済新聞 電子版
元日の午前中を除き、年365日働く。日本電産永守重信会長兼社長はそんなモーレツ経営で、同社を売上高1兆円近い企業に育てた。ただ相次ぐM&A(合併・買収)で、外国人などグループ従業員数は今や10万人を超す。グローバル企業に変身するなか、「モーレツ」な働き方は変わるのか。永守氏に聞いた。

 ――日本電産はハードワークで有名です。
ながもり・しげのぶ 1967年(昭42年)職業訓練大電気科卒。73年日本電産を創業し、社長に就任。2014年から現職。社員が帰りやすくするため、最近は帰宅時間を早めているという。70歳。
「創業当初は優秀な人材を採れず、大手に対抗するには長時間働くしかなかった。上場後はある程度人を確保でき、アタマも使う『知的ハードワーキング』を掲げた。最近はグローバル化が進んだため、昨年から時間にかかわらず『できるまでやる』方針に変えた。やるべきことができれば早く帰っていい。ただ、できないのに早く帰れば競争に負けてしまう。そこは頑張ってもらうという考え方だ」

――社員の間で帰宅時間に差が出ませんか。
「今はできるだけ生産性の高い人に仕事を回し、昇進や賞与で報いるようにしている。同じ仕事をするのに能率が良く早く仕事を切り上げる人より、効率が悪く長時間働いている人に残業代が付き収入が多くなるのはおかしい。(ホワイトカラー・エグゼンプションのような)ある程度の年収になったら時間でなく成果で評価するのは正しい」
「女性管理職を増やすのにゲタを履かせるのは反対だが、働きやすい環境づくりへの投資は進める。育児や介護で時間に制約がある人も、法務や税務など専門性の高い仕事であれば可能だと思う。」

――グローバル化にはどう対応しますか。
「経営幹部に対しては、2017年にも世界同一の報酬体系を導入する。年俸制で世界で転勤があるグローバル幹部と、国を越えた転勤はなく地域ごとの雇用慣行や文化を適用させるローカル社員とに分ける」
 「雇用は守る。リーマン・ショック時も誰も切らずに平均5%の賃金カットをし、その後利子を付けて返した。いいときも悪いときも分かち合うのが日本の強みだ。うちは今や電機大手のリストラの受け皿。一生懸命働いて税金も納めているのに『ブラック企業』のようにいわれるのはおかしい。リストラする方がよほどブラックではないか」

――女性が働きやすい職場をどう作りますか。
「昨年、3人の女性を部長に初登用した。女性管理職を増やすのにゲタを履かせるのは反対だが、働きやすい環境づくりへの投資は進める。育児や介護で時間に制約がある人も、法務や税務など専門性の高い仕事であれば可能だと思う。在宅勤務のほか、朝だけ、午後だけといった働き方は今後増えてくると思う」

――外部の人材採用に積極的です。
「昨年、電機大手から部長級だけで約100人採用した。中途採用は続けるが、生え抜き社員も重要だと気づいた。社風になじむのには時間がかかるからだ」
「このため今年から経営幹部養成の経営塾、16年には国内外のグループ幹部向けの企業内大学校を開く。これまで高学歴者なら経営ができると錯覚していた。経営には知能指数(IQ)と、仕事への取り組み姿勢や執念といった心の知能指数(EQ)を併せ持った人材が必要だ。これは自社で育成する」(聞き手は太田順尚)