藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

いつの間にか未来の世界。

いつの時代もテクノロジーの次世代を正確に予測するのはSFだ。
いよいよ「キーボード経由」ではない「脳vsコンピュータ」の時代の幕開けかもしれない。

というか、現場の技術陣のご苦労を恐れずに言えば。

コンピュータはここ50年で凄まじい発展をしてきたけれど、「インターフェイス」についてはマウス以降の劇的な変化はなかったと思う。

人がマウスやキーボードで「入力する」という、最も中断的な作業がなくなれば、また一つ劇的にコンピューター利用が進むだろうと思う。
さらに反対に、コンピューターからの出力もVR/ARなどで「直接自分たちの視界に飛び込んでくる」ようになれば、これまた自分たちにとってのサイバー世界は現実に近くなってくるに違いない。

数十年前は「しばらくはあり得ないな」ということが、ヒタヒタと現実化している。
技術の革新は、自分たちが「ムリムリ」と思っていたことを現実化させる存在なのかもしれない。
あと50年では何が起こるだろうか。

「脳で入力」夢の1分100語 フェイスブック挑む 一瞬の変化を光学画像に

 米フェイスブックは4月、頭に思い浮かべるだけで相手に意思を伝えるコンピューター技術の開発を進めていることを明らかにした。もしも技術が実現したら、私たちのコミュニケーションのあり方が根本的に変わるかもしれない。夢のような技術を本当に利用できる日がくるのだろうか。

脳でコンピューターを操作する技術について説明するフェイスブック幹部(4月19日、カリフォルニア州サンノゼ

 「もしも脳から直接文字をタイピングできたらどうでしょうか」。4月19日、フェイスブック社で研究開発の責任者を務めるレジーナ・デューガンさんは米カリフォルニア州サンノゼで開発者向けに開かれたイベントでこう問いかけた。手ぶりや映像を交えながら流ちょうな語り口で未来の技術を語った。

■機械と脳つなぎ伝達

 何かを見つめる。からだを動かす。どんな行動をする時も人間は脳を活動させている。フェイスブックが開発しようとしているのは、ことばを思い浮かべた時に生じる脳活動の変化をコンピューターで読み取り、他人に発信する技術だ。

 さらに開発に取り組む技術は、脳を読み取るといっても頭で考えていることが勝手に盗み取られる恐れはないという。「写真をたくさん撮っても人と共有するのは一部だけ。それと同じように自分が伝えようと決めたことだけを発信できる」とデューガンさんは付け加えた。

 一見すると夢のように思えるが、脳の活動を読み取って意思を伝える技術自体はすでに開発が進んでいる。こうした技術は「機械と脳を接続する」ことを意味する英語で「BMI(ブレーン・マシン・インターフェース)」と呼び、主に医療分野を中心として研究されてきた。

 BMIは大きく2タイプに分かれる。一つが手術を通じて脳に直接電極を刺したり貼ったりして脳の動きを読み取る方式で「侵襲型」と呼ぶ。もう一つがフェイスブックが目指す方式でもある「非侵襲型」で、頭皮の周りに直接帽子のような装置を取り付けて脳波や血流などの活動を検知する。比較的データを得る精度が高い侵襲型の場合、すでに脳の動きから文字をコンピューターに直接入力する技術も開発されている。

 ただ、フェイスブックが掲げる目標は極めて高い。なかでも多くの専門家が「驚いた」と口をそろえるのは脳の活動を読み取るスピードだ。当面の目標は「数年以内に脳から1分間に100単語の入力を可能にすること」だとデューガンさんは力を込める。通常、スマートフォンスマホ)で入力できる文字は英語だと1分で20単語ほど。フェイスブックの目標はスマホの文字入力の5倍で、実に会話をしのぐペースだ。

 BMIを使った入力は侵襲型で実現しているとはいえ、スピードは1分間で8語ほどだ。フェイスブックが取り組む非侵襲型は、侵襲型より得られるデータが質、量ともに劣る。「頭蓋骨や頭皮に遮られて信号にたくさんの雑音が混ざってしまう」と大阪大学教授の平田雅之さんは指摘する。そうした非侵襲型でさらに「1分間で100語」という高い目標の実現は困難と考える研究者も少なくない。

 実現につながる技術はないのか。平田さんや情報通信研究機構脳情報通信融合研究センターの鈴木隆文さんが着目するのはフェイスブックBMIに「光学画像」という技術を使うとしている点だ。

 脳波や血流は読み取ったり解読したりするのに時間がかかる。だがもしも脳が動く時に起きるほんの一瞬の変化を高速でスキャンして光学画像を作ることができれば、今とは比べものにならない速さで脳の動きを把握できる可能性があるという。

 フェイスブックは今のところ、開発に使う詳細な技術や達成までの道のりなどを明らかにしていない。脳活動の一瞬の変化を読み取って光学画像を作る技術も「現状では本当に利用できるのかもはっきりとしない」と鈴木さんや平田さんは話す。

■マスク氏も開発競う

 一方で期待の声も上がる。慶応義塾大学准教授の牛場潤一さんは「少し前まではスマホがここまで普及し、音声や画像の認識技術が向上するとは誰も想像していなかった。今後の人工知能(AI)の技術革新などによって実現する可能性は十分にあるのでは」と話す。

 フェイスブックはすでに半年前から技術開発に着手、医療機関や大学などの研究者が参加して60人体制で研究を進めているという。さらに米テスラの創業者でもあるイーロン・マスクさんも侵襲型のBMI装置を手掛ける新会社を設立するなど米国での開発熱は高まっている。

 今はまだ夢のような話に聞こえるが、いつか脳で考えるだけで意思を伝える技術を当たり前に利用できる日が訪れるかもしれない。(松添亮甫)