藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自分の舵取り。

現在、様々なメディアで活躍されている堀潤さんの記事。
メディアの一員(それもNHK)という立場ながら、「自らの将来をどう考えるか」ということを実践されているところが、若い人には聞いて欲しいところだ。

キャリアから見ても、高レベルで過去の成功パターンに近いほど「外」を見る目は乏しい。
大企業や高級官僚が「よそ」に目が向かないのは、それだけ自分たちの世界が強固だからだ。
「閉じた世界」で定年(やその後のポストまで)を迎えるつもりの人はそれでいいが、
昨今は「そういうのはつまらない」と素直に声をあげる人も多い。

日本企業は、その強みでもあるけれど「転職前提」では働いていないから、自ら勤める大企業を出てしまうと戸惑うことも多い。
日本的雇用は、将来的には再び見直される、と自分は思うけれど、ともかく「会社が一番には考えてくれない、自分のキャリア」については常々考えておいたほうがいいと思う。

いざ、「転職の時」にはその転機を逃さないような準備は日頃から必要ではないだろうか。

「辞める1年前にNPOを立ち上げていたから今がある」元NHKアナウンサー堀潤氏の退局秘話

5/23(水) 10:01配信

堀潤

 働き方改革の文脈の中、副業解禁の流れが出てきている一方、若者の中には“お金離れ“や、仕事に対してやりがいを見失っているのではないか、という見方もある。NHKという組織を飛び出し、フリーランスとして活躍する堀潤氏は、昨今の議論をどう見ているのか。

■上司に首根っこ掴まれて…NHK退局に至るまで

 堀:ウェブサービス「ココナラ」代表の南章行さんが立ち上げたNPOの名前でもある「二枚目の名刺」という考え方がヒントになると思います。

組織にいて一番もどかしいのは、「これがやりたい、絶対やったら良い」と思っても、自分に裁量が無いために実現できなかったという、充実感や裁量権の悩みがあるのではないでしょうか。そういうところから、そもそも自分はなぜ働いているのか疑問を持ってしまう。そこで、スピード感を持って自己実現できる場を一つ持っておくと良いのではないかと思います。もちろん副業ができる会社だったら副業としてやるのもいいし、そうでなくてもSNSで繋がった誰かとプロジェクトを立ち上げるのもいい。本業の他に、自分らしさが表現できることが大切だと思います。

もちろん、サラリーマンかフリーランスか、という対立軸もありますが、あっちでも稼いで、こっちでも稼いで、というだけでは単なるダブルワーク、トリプルワークですよね。僕自身も、NHKを急に辞めたように思われているんですが、実はその1年前にNPOを立ち上げてるんです。

ーーそんなことができるんですか?

できた(笑)。ダメかなと思ったんですけど、「ニュースサイトを作りたい、その受け皿になるNPOを作って運営したい」と上司に相談しました。副業規定で収入を得るのは禁止されているけれど、個人の範囲内での表現活動は制限されるものではないので。

ただ、その前段階として“Twitter騒動“があったんです(笑)。その話もしましょう。

もともとNHKの内規で、個人でTwitterをやってはいけなかったんです。でも2010年、これからは双方向の時代だよなあと思って、名前も肩書も晒し、「@nhk_HORIJUN」として勝手に始めてしまいました。でも、フォロワーが5000人超えた頃に見つかって、直属の上司に首根っこ掴まれて「来い!」って(笑)。そこで「これからはNHKも皆さんとやりとりする必要があるんではないですか」と言ったら、デジタル部門のトップの方が「そういう狙いなら認めましょう」と、特例で認めくれたんです。

翌年には東日本大震災福島第一原発があって、秋口くらいに「やっぱりやめてくれ」と。「闘いましょうよ」と言いましたが、当時の上司の説明では、政治家からクレームがあったそうです。それでもニュースセンターの先輩たちが「それはおかしい」と動いてくれました。NHKの顧問弁護士にかけあった結果、「表現の自由は内規に勝ります。憲法で保障されているからです」と。ただ、「@nhk_HORIJUN」は一旦クローズして、直ちに個人アカウントを立ち上げようという話になりました。

ーー代わりに「所属団体と関係ない」みたいな断り書きを入れるとか?

堀:業務時間内にはつぶやかないというルールです(笑)。だから「休憩取りまーす!」って言ってから投稿してました(笑)。だから“意外にできた“というより“勝ち取ってきた“という感じなんですね。その後、局内にネット報道部が立ち上がりましたし、当時、相棒として一緒に番組をやっていた飯田圭織デスク(現:ロサンゼルス支局長)もブログを始めたり。

そういう一連の流れから、局内にも“堀はそういうやつだ“という雰囲気が広がっていたので、NPOの活動が始めやすかったのかもしれません。あとは局と覚書を交わして、NPOの登記も提出して。だから『週刊文春』に「副業してるんじゃないのか?」ってつつかれましたけど、違いますよって!(笑)。

そういう“乗り換え時間“があったのは良かったと思います。足場を1年掛けて準備して、そこから少しずつ積み上げていけばいいなと思っていたので。

だからこの春に入局した、お笑いタレントのたかまつななさんが業務外でどういう活動をしていくのかも楽しみです。社長さんがご病気になられたので、NHKを辞めるかどうかの選択を迫られ、サポートしてくれる仲間を集めています。NHKにも暖かく支えてほしいですし、そういう経験は取材者としても貴重なものになると思います。両立には心も体も時間も必要ですし、強靭さも求められる中、アクションし続けていて偉いなと思います。たくましいですよ。

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堀潤

■副業や「二枚目の名刺」で身につけたスキルが付加価値になってくる

ーーアメリカではリーマンショック以降、それまで投資銀行に行っていたような人たちの間でも社会貢献への関心が高まり、NGOが人気の就職先になってきているという話もあります。しかも、ちゃんとお給料ももらえるようになってきている。

人材サービスのパーソルと、僕のNPOが加盟している新公益連盟では、NPONGOに関心のある人を対象にした就職説明会を開いています。実は毎回、予想を上回る申込みがあって満席になっているそうで。やっぱり日本でもそういう業界への関心が高まっていると感じます。

受け入れる側も、いわゆる“NPO村“というか、“そんなに給料も高くないですけど…“みたいな意識を変えていこう、信用・信頼を高めていこうという雰囲気になってきています。そうした業界内改革の一つの取り組みとして、「コレクティブインパクト」というのがあります。これはNPOと行政と民間企業による枠組みで、社会問題を解決し、しかも持続可能なビジネスを作ろうというものです。

代表的なプロジェクトに「子ども宅食」があります。これはNPOと文京区と物流・飲食の企業が連携しました。しかも、ふるさと納税クラウドファンデイングを通して、目標額の400%くらいを集めることにも成功しました。渋谷区でも、NPOと渋谷区と学習塾などの企業が連携し、経済的に厳しい子どもたちが塾に通えるクーポンを渡すプロジェクトをスタートさせています。

今まで、なんとなく「最前線で孤軍奮闘している社会起業家たち」というイメージもあり、「そこで働くのはしんどそうだな」と思われていたかもしれませんが。持続可能なビジネスとして、ソーシャルセクターが成熟しつつあります。これから副業が解禁されていく流れの中で、自分が持っているノウハウをあの団体で活かせれば、やりがいになるなと思える、そういう繋がりが生まれつつあるのが希望だと思います。

だからメディアの中で働いている人が「この素材はお蔵入りになるんだ」と思った時に、外で活かせる環境も整っていくと良いですよね。当時それができてたら、僕は辞めてたなかったかも知れない(笑)。

ーー今、そのノウハウを持って戻ってこいと言われたら?

僕は戻らないけど(笑)。でも、そういう意味で、最初にお話した「二枚目の名刺」という考え方はとても効力のある話だと思います。「プロボノ」といって、自分の持っている知識やスキルを活かして社会貢献するという動きも増えていますから、副業禁止の会社であっても、なんとなくプロジェクトに関わってみると良いのではないでしょうか。

そこでは人脈が生まれます。業界が違えば仕事のノウハウも、稼ぎ方も違うので、そこで見聞きしたことがいつか自分の本業に返ってきます。これからはどの業界でも、様々なサービスや製品を組み合わせていかなければならない時代になっていると思います。そうなると、副業や「二枚目の名刺」で身につけたスキルが付加価値になってくると思いますよ。

■プロフィール
1977年生まれ。ジャーナリスト・キャスター。NPO法人「8bitNews」代表。立教大学卒業後の2001年、アナウンサーとしてNHK入局。岡山放送局、東京アナウンス室を経て2013 年4月、フリーに。現在、AbemaTV『AbemaPrime』(水曜日)などにレギュラー出演中。