藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

欲望の先に。

「放題」の時代に突入している。
飲み食べ放題、は昔からあるが「見放題、聞き放題、調べ放題、話放題」と大安売りだ。
そして「所有」という概念は確かに古いものになってしまった。すでに。

いつでも触れ、使うことができる。
昔はそれが「所有」ということだったのだ。
所有と利用、は同義ではなくなった。

いざ満たされて、そんな環境になってしまうと「所有」に固執していた飢餓感を滑稽にすら思う。
この感覚がもっと進めば、あらゆる欲望がなくなってしまうだろうか。
そして、その先にあるもののことを考えてみたいと思う。

広がるサブスクリプションモデル(1)「所有から利用へ」が背景 兵庫県立大学教授 川上昌直
近年、ネットフリックスのように毎月定額で映画・ドラマが見放題になる動画配信や、スポティファイなど聴き放題の音楽配信を利用する人が増えています。CDやDVDをあえて購入するファンは少数です。同様に自動車も所有せず、カーシェアで済ませるトレンドが広がっています。特に最近の若者は所有への興味が乏しく、「所有から利用へ」の傾向が強まっているといわれています。

一見新しい考え方のように思えますが、経営学の領域では以前から度々指摘されていました。「ドリルを買う人が欲しいのは穴である」。マーケティング関係者には周知のこの言葉をT・レビットが広めて半世紀になります。イノベーション研究で著名なC・クリステンセン教授の「人はジョブ(用事)を片付けるために商品を雇用する」という指摘も同様の意味です。

人は必ずしもモノそのものが欲しいわけではありません。自身の用事が片付くことを望んでおり、より良い解決方法があればそれを選択します。その方法として「所有よりも利用」を選ぶ傾向が過去10年で顕著になってきました。この要因として3つ挙げられます。

第1は、スマートフォンの普及です。2007年にアップルがiPhoneを発売して以降、急速に普及し、今では誰でもどこでもインターネットを利用できるようになりました。第2は、08年のリーマン・ショックを契機とする世界経済危機です。多くの人々が消費を控え、無駄をなくそうとするようになりました。第3は、2000年以降に成人となったミレニアル世代が消費の中心になってきたことです。デジタルネイティブの彼らは買い物などあらゆることをネット上で片付けることに抵抗がなく、むしろその方が自然になっています。

「所有よりも利用」という消費形態の変化に対応し、企業も「売り切り」から「つながり」重視に移行しています。その結果、企業と消費者を「利用」で結びつけるサブスクリプション(継続購入)モデルが急拡大しているのです。

かわかみ・まさなお 兵庫県立大博士。専門はビジネスモデル、マネタイズ

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