藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自分の価値をシビアに考える。

AIの進化による人間代替論。
営業マンや経理や課長や部長や社長さんも、みんな「自分だけの価値」を見つめ直すのは実にいい機会になっている。

実は自分は常々「自分の仕事の代替性(希少性)」について考えていた。
こと「AIらしきもの」を想定してみると「自分の仕事でAIが代替できないものはない」というふうに思う。

ちょっと変わった組み合わせの顧客サービスを考えてみる、とか
他業種とのコラボを考えてみる、とかいうくらいのことは、「そういう異業種ミックス」をAIに教えておけば、自分なんかよりももっと広くいろんな可能性を探せるだろう。

もっと大胆な投資とか、M&Aとかだって十分想定できるだろう。
あるいは会社の理念とか経営方針とかだって、市場の様子を見ながら結構な導きを示せるのではないか。

今自分たちが人間に対して認めている「人格」が、いつかAIにも認められ始めたら、十分経営者の代わりもあり得るだろうと思う。

いつだってカリスマ的な経営者の考えることは、ブラックボックス(説明しにくい)ことを自分たちはよく知っている。

AIが進化すると営業も「すき間労働化」する 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生
 私たちは、仕事に人生の多くをささげ、そして、そこから成長や達成などというお金以外の対価を得てきた。そうした構図が大きく狂う時代となる。

苦役信奉を捨て、すき間労働を受け入れる?

 正直にいえば、その時代でも、高度で上級な営業は残るだろう。売り上げの大きい一部顧客に対しては、ライバル企業が多々営業にやってくる。彼らも彼らでAIを駆使しているので、ハイレベルな戦いとなる。その状況下では、とてもご託宣にしたがっているだけでは売り上げなど立たない。そこで、AIのできないこと、AIの裏をかくことを考え、その実現のためにAIを使うという、難易度の高い営業が必要となる。ビジネス誌的な啓発記事であれば、「AIに使われない、AIを使いこなす営業となれ」となるのだろう。がしかし、私はそうした方向を首肯しない。

 今でも日本人は、やたらと苦役を美徳と考えがちだ。結果、「このままではだめだ」と何かしら苦役の方向へと踏み出すことを良しとする。ただ、この連載ではそうした行為こそ無駄になるのだ、という視点を基底においてきた。

 現在、格上の仕事と思われがちな士業=難関資格保有者が、案外AIの進化に弱い。匠といわれるすし職人や農作業従事者の技が無用なものとなる。スペシャリティーやそれを獲得するための苦役が無為無益に変わるという大きな時代の転換点に立っている。

 翻って欧米、とりわけ欧州人の生活を考えてみたい。日本で取り上げらえる欧州人の生活は、上位1%のスーパーエリートのそればかりだ。中位労働者がどのような生活をしているかはあまり語られない。彼らは、自分の保有する労働資格に縛られて、そこで許可される仕事しかできない。その結果、20代から50代まで年収はほぼ変わらず、職位も上がらない。要は昇給も昇進もないのだ。

 その分、残業などほとんどせず、有給休暇は協定で定まった上限の年40日をフルに取得する。その資格で許容された仕事が技術革新で消失すると、職業訓練休暇をもらい、その間、失業給付で食いつなぎ、他資格を取得して、ほぼ同給与の別仕事にスライドする。そんなのんきでやる気のない生活をしている。

 フランスで見れば、エリートと呼ばれるカードル(年金種別が異なる)が労働人口の約15%。ここに書いた資格労働者が約50%。それ以下の無資格労働者が15%。そして、エリートではないホワイトカラー=中間的職務従事者が20%というグラデーションでできている。少なく見積もって65%(資格労働者+無資格労働者)、多く見積もれば85%(中間的職務労働者を加える)が、のんきで上を目指さない横滑り生活をしているのだ。

 誰にも管理職となれるチャンスがある日本は、その分、誰もが管理職を目指して四苦八苦の人生を送る。そんなことをしなくてもそこそこの給料がもらえ、たとえ首になっても、ちょっとだけ訓練を受ければ、他の会社・他の分野でまたそこそこ働ける社会へと移行していくのもよくはないか。何しろ、AI社会になれば、熟練やコツ、難易度の高いルールなどはAIに任せればいい。来日したばかりの外国人が銀座の名店なみのすしを供し、入社したての新卒者がMVP並みの営業をする。そんなストレスなく働き、ストレスなく新たな職に就ける社会をAIが作ってくれるのだと、前向きに受け入れるべきではないだろうか。

 そうして仕事でカタルシスを得るという現在日本人の常識的風習をあとはどうするか。これから30年間の間に起こる社会変化を楽しみながら、考えていくのはいかがだろう。

 変化は連続的に今からもう始まっているのだ。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
1964年、東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計等に携わる。 その後、リクルートワークス研究所にて雑誌Works編集長。2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。雇用・キャリア・人事関連の書籍を30冊以上上梓し、「雇用のカリスマ」と呼ばれている。近著は『「AIで仕事がなくなる論」のウソ』(イースト・プレス)。