藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

先端技術の裏側。

*[ウェブ進化論]下積みがあるということ。
日経より。
最新のハイテク製品には、実は「隠れた重労働の下積み」があるという。
電子機器も大量のエネルギーと、採掘が困難なレアアースが必要で、さらに機械学習にはコンテンツのタグ付けや画像の読み取りが必要で、おびただしい数の低賃金労働者がそれをこなしているからだ。
なるほどぉ。
でもいや待てよ。
そもそも電子機器の発展ってそういうものじゃなかったか。
かくいう私もれっきとしたパンチャー(入力作業者)だったし、24時間動くコンピュータの運用担当者だった。
毎日はまさにルーティンワークそのもので、でもそれで巨大なシステムが動いているのだ、と納得していたものだ。
ある意味単純作業の「搾取された労働」はずっとIT業界にはつきまとってきたものだという気がする。
 
amazonのAlexaを手にするときに、どれほどの負い目を感じるべきなのか。
ではAlexaに倍の値段を支払えばいいのか。
多分そうではない。
そうした研究者や製造担当の「無数の苦労」を感じながら、最新の機器に触れて「またその先を考える」ということでいいのではないかと思います。
技術って「そういう風にして」でないと進んでいかないものでしょう。
最先端の研究者の仕事も相当ブラックです。
でも彼らはそうとは感じていないだけです。
 
で、行き過ぎた製造のコスト削減には気をつけておきましょう。
 
 
 
AI製品 利便性の裏側に
2019年6月2日 17:00
ニューヨーク大学人工知能(AI)を研究するケイト・クロフォード教授は昨年、米アマゾン・ドット・コムAIスピーカー「エコー」の調査に乗り出した。
アマゾンのAIスピーカー「エコー」の製造には膨大なエネルギーやレアアース、低賃金労働者の作業などが必要だが、我々はほとんどそれに気付いていない=ロイター
アルゴリズムやコンピューターシステムを分析したのではない。セルビア人研究者ブラダン・ヨーラー氏と、音声認識AI「アレクサ」を搭載したエコーの製品化に必要な部品供給網や原材料、データ、作業を図式化したのだ。
「あるAIシステムの解剖図」と題した概念図は背筋が寒くなるし、挑発的でもある。IT(情報技術)の利便性を手に入れるために払うコストの大きさに我々が気付いていないことがよくわかる。
日常使う電子機器はすばらしい技術進歩の結晶と考えがちだ。しかしクロフォード氏らは、電子機器もAIも大量のエネルギーと、採掘が困難で採掘時には環境負荷もかかる鉱石がなければ動かないと指摘する。膨大な人的コストも伴う。機械学習にはコンテンツのタグ付けや画像の読み取りが必要で、おびただしい数の低賃金労働者がそれをこなしているからだ。
人類学者のメアリー・グレー氏と米マイクロソフトのコンピューター科学者シッダース・スリ氏も同社やアマゾン、米フェイスブック、米グーグルなどのIT企業で投稿内容の監視や質問への回答、サイトの保守点検など、重要だが日の当たらない業務に携わる「ゴーストワーカー」の実態を調べた。先ごろ出版された「ゴーストワーク シリコンバレーによる新たな底辺層の形成を阻止するには(仮訳)」は、裏方労働者の劣悪な労働条件をつぶさに描いていて衝撃的だ。だがそれより、我々がこれまで彼らのことをほとんど気に留めてこなかったことに驚く。
それはなぜか。一つは地理的要因だ。レアアース(希土類)は欧米諸国から遠く離れた中国江西省ボリビアのウユニ塩湖などで採掘されるため、環境コストや労働条件が見逃されやすい。同様にグレー氏らが調べたゴーストワーカーの多くも発展途上国にいる。
部品供給網が複雑になり、IT大手さえもなかなか全体像を把握しきれていない。米インテルが供給網を調べ上げ、自社のマイクロプロセッサーにはコンゴ民主共和国で採掘されたタンタルレアアースの一種)が使われていないことを確認するのに4年以上かかったという(編集注、同国は紛争費を採掘による利益で賄っている)。
加えて筆者は文化的要因もあると考える。ある意味、我々が今日のIT企業の「搾取的行為」に気付かなくても不思議ではない。我々は衣料品や食品などの形のある製品でも、部品供給網の末端にまでは目を向けてこなかった。物として手に取ることができないITの場合、視野は一段と狭くなる。AIは人間や地球を超越するものだと思い込まされてきたからだ。
そこでささやかな提案を2つしたい。一つは電子機器のヘビーユーザーはアレクサの解剖図を一瞬でも眺めてほしい。手のひらほどの端末の背後に広がっている複雑な世界に驚くだけでも構わない。もう一つはアレクサ(や他の音声認識AI)が部品供給網に関する質問に返答できるようにしてほしい。アマゾンは嫌がりそうだが「本当のところ、君が機能できるのは誰のおかげなの?」という問いにアレクサが答えられるようになれば、小さな一歩だ。誠実な回答ならなお良い。
By Gillian Tett
(2019年5月30日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/
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